006話 たまには毒者を叩いてみよう(その②エタった作者さんについて)
エタル。
いい~響きだ。
何て事はない。
「小説家になろ◯」には現在、軽く29万作以上の作品が投稿されている。
だが、悲しい事に完結する事なく放置されてしまった作品がある。
それがエタった作品だ。
エター作品とか、作家さんの事はエター作家とも呼ばれたりする。
エタの語源は「永遠の(エターナル)」から来たらしい。
正確な数は不明だが、「小説家になろ◯」にはエタった作品はかなりあるだろう。
読者の皆さんもそうした作品を見掛けた事があるのではないだろうか。
もしかしたらブックマークをしているのではないだろうか。
私もそうだ。
中には1年以上更新が止まってしまった作品もある。
活動報告にも新たな書き込みは無く、いったいどうなっているのやら気を揉んでしまう。
これが、
『受験で忙しい。とか、
部活で忙しい。とか、
卒論で忙しい。とか、
就活で忙しい。とか、
仕事で忙しい。とか、
コミケに当選しました。サークル参加します。とか、
「ヒトカラ」(一人カラオケの略語)で忙しい。とか、
子供の世話で忙しい。とか、
「ママ友虐め」にあって孤立しています。夫はこの辛さを理解してくれません。とか、
会社でのパワハラに悩んでいます。とか、
会社が倒産しました。とか、
株、FX(外国為替証拠金取引)で失敗し破産しました。とか、
◯◯◯◯◯の経営破綻で投資していた資金が全て消えました。もう立ち直れない。とか、
腐女子の彼女ができました。彼女の同人誌作りのお手伝いと同人誌即売会巡りで忙しいです。とか、
アニオタ(アニメオタク)の彼氏が出来ました。コスプレさせられたり聖地巡礼で忙しいです。とか、
嫁さんに「下手糞な小説を書く暇があったら私の肩を揉めー!」と言われてる。とか、
旦那さんに「小説を書く暇があったら◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯」と言われてる。とか、
ホストクラブにはまりました。とか、
キャバ嬢に本気になっちゃいました。とか、
夫が浮気してるようなので尾行で忙しい。とか、
夫に不倫がばれてもめてます。とか、
妻が子供を残して失踪しました。とか、
夫が若い愛人と逃げました。とか、
妻の浪費癖が祟って自己破産しました。とか、
夫のギャンブル好きが祟って恐い取り立て屋さんが来るので夜逃げしました。とか、
妻に離婚を言い出されて財産分与でもめてます。とか、
夫の浮気で離婚するけど慰謝料の支払いでもめてます。とか、
昔ちょっとだけ付き合った元カノが見知らぬ子供を連れて突然現れ「あなたの子よ」なんて言い出してもう大変。とか、
昔ちょっとだけ付き合った元カレが突然現れてヨリを戻してくれなきゃ死んでやると騒いで大変なんです。とか、
息子が他所のお嬢さんを妊娠させたのに、結婚に尻込みして逃亡したので捜索中です。とか、
娘が◯◯◯◯◯◯◯をしていると◯◯から連絡を受けてショックです。どうしたらいいでしょう。とか、
息子が◯◯◯◯◯にはまり、今は◯◯◯にいて家族で見守っています。とか、
娘がA◯◯4◯に入るんだと言って家出した。とか、
息子が◯◯◯◯◯の◯◯になるんだと言って家を飛び出した。とか、
息子が久しぶりに帰省したら娘になっていた。どうしよう。とか、
娘が久しぶりに帰省したら息子になっていた。頭抱えてます。とか、
小学生の娘に加齢臭が臭いと言われてショックです。とか、
息子を抱きしめたらママは男の臭いがすると言われ焦った。とか、
同窓会の案内が自分だけに来ないのを最近知ってショックでした。とか、
会社のお金を横領したのがばれたので逃亡中だ。とか、
上司の奥さんと◯◯したのがばれて僻地に飛ばされました。とか、
上司と◯◯のが相手の奥さんにばれて呼び出されました。どうしたらいいですか。とか、
奥さんと別れて結婚してくれるって言った課長がなかなか離婚してくれないから◯◯ちゃった。とか、
親友の彼氏をNTRしちゃって三角関係でもめてます。とか、
友人の彼女をNTRしちゃって結婚します。他人の不幸は蜜の味って本当ですね。二重の喜びです。とか、
友人Aの彼女と友人Bの彼氏と関係し五角関係でもめてます。反省はしていません。とか、
貢いでいた彼氏に捨てられました。もう男はこりごりです。世の中信じられるのはお金だけよ!とか、
2次元のあの子と結婚しました。とか、
30歳でついに魔法使いになりました。今は魔法の修行で忙しいです。とか、
僕はもう魔法使いから妖精にクラスチェンジしました。とか、
失恋しました。僕はもう黒魔術師になります。とか、
僕なんかもう黒魔術師から妖怪にクラスチェンジしました。とか。
彼氏に「や◯い穴」がありませんでした。あるって信じてたのに。ショックです。とか、
作品が書籍化されて忙しい』
と、いうようにたとえ何かしらの問題を抱え込んでいたとしても、作者さん達がご無事ならば安心できるのだが、何も情報が無い。
だから心配になる。
凄く心配になる。
好きな作品の作者さんなら尚更だ。
心優しき読者さんの中には感想欄に
「生存報告だけでもお願いします」
「ご無事でしょうか」
と書き込む人もいる。
長く更新を停止している人気作品だと「生存報告だけでも」という感想が幾つも書き込まれている。
そういうのを見た方もおいでだろう。
ところがだ。
ところがだ。
こういう心配をしている読者さんの感想の書き込みをよそに
「エタルなんてだらしねぇ」とか
「感想で叩かれ、書くのやめちゃったの。メンタル弱すぎ」とか
「広げた風呂敷を畳めなくなったんだろう」とか
心無い感想を書き込む輩がいるわけだ。
こういうのを見ると思わず溜め息が出てしまう。
作者さんがそれらしき事を作品の後書きや活動報告で書いているのならともかく、そうでないから心配しているというのに。
何故、心優しき読者さんが「生存報告だけでも」と言っているのか……
考えたくは無いが、もしかしたらという懸念が心配があるからだ。
若い人は知らないかもしれないが、かつて
『山門敬◯』さんというライトノベル作家さんがいた。
富士見ファンタジ◯文庫より「風の聖◯」という人気作を出されており、この作品はアニメ化もされた。
だが、この方は37歳という若さで病没された。
「風の聖◯」は未完のままとなってしまった。
この作品の影響を受けた作者さんは「小説家◯なろう」にもいるし、それだけ人気があったのに…
惜しい人を亡くした……
『ヤマグチノボ◯』さんというライトノベル作家さんがいた。
◯F文庫より「ゼロの使い◯」という人気作を出されており、この作品はアニメ化もされ4期まで制作された。
だが、この方は41歳という若さで病没された。
「ゼロの使い◯」は未完のままとなってしまった。
「ゼロの使い◯」は「なろう」が設立された2004年に刊行が開始されたわけだけど、「異世界召喚」「魔法」「メイド」「ハーレム」「貴族」「元の世界の兵器がちょっと活躍」なんて、現在の「小説家◯なろう」でもよく見られる設定が生かされている。
惜しい人を亡くした……
『吉田◯』さんというライトノベル作家さんがいた。
スニー◯ー文庫より「トリニティ・ブラッ◯」という人気作を出されており、この作品はアニメ化もされた。
だが、この方は34歳という若さで病没された。
「トリニティ・ブラッ◯」は未完のままとなってしまった。
惜しい人を亡くした……
『松野秋◯』さんというライトノベル作家さんがいた。
◯F文庫より「えむえむ◯!」という人気作を出されており、この作品はアニメ化もされた。
だが、この方は32歳という若さで病没された。
「えむえむ◯!」は未完のままとなってしまった。
惜しい人を亡くした……
今回、お名前を挙げさせていただいたのは、ライトノベル作家で比較的若くして亡くなった方々だ。
シリーズ物を書いていて未完のまま亡くなったプロの作家さんは悲しい事に古今東西幾らでもいる。
だからエタっている作者さんが心配になる。
病気してないだろうか。事故に遭遇し怪我してないだろうか。
人生というものは、世の中というものは、何が起こるかわからないのだ。
時には不条理な事に遭遇したり苛まれる事もある。
もしかして……
万が一……
と、思い、エタった作品の感想欄に「生存報告だけでも」と書き込み、作者さんが無事である事を確認したいのだ。
無事ならば、いつかは続きを書いてくれるかもしれないという楽しみも生まれる。
何せプロの作家さんにさえ遅筆作家と呼ばれる人は少なからずいるのだ。
沢山いるから一人だけ代表としてあげるならば「田◯芳樹」さん。
この方の作品「タイタニ◯」なんて1991年に第3巻が出てから22年間もの歳月が流れ、2013年にようやく第4巻が出たのだ。22年ですよ。22年! 1991年に生まれた赤ちゃんはとっくに成人してますよ。
正直、私は「タイタニ◯」は未完で終わると諦めてましたよ。
その「タイタニ◯」は来月、最終巻の第5巻が発売されるそうだ。いゃあ良かった。
プロの作家さんにさえそういう人がいる。
だから私は「小説家◯なろう」のアマチュアの作家さんに
「エタルな」とか
「毎日更新しろ」とか
「毎週更新しろ」とか
少なくとも私は「高望み」はしないようにしている。
ただ、できればエタった作品の作者さんで、活動報告を書く事ができるのならば、せめて一言でいいからコメントが欲しいと思う。無事ならばそれで安心できる。
そして読者さんには相手の状況も分からないのに感想欄に心無い言葉を決めつけで書かないで欲しいと思う。人の情というものを、思いやりというものを持ってほしいと願わずにはいられない。
最後に、
エタった作家さんへ……いつの日か帰って来てほしい。私達はあなたの帰りを待っているから。
明日25日に007話を投稿します。
内容は「ポイントの不正問題について」です。