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天啓的異世界転生譚  作者: ウスバー
第十四部 真面目にファンタジー編
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第七十九章 堅固なる塔



「うわぁ! さすがにすごいね」

 ララナとリリーアはレドリック王と共に『清めの塔』にやってきていた。

 王女を守る塔の警備を確認するためだ。


「この数日がこの国、ひいてはこの世界の運命を変えると言うのだからな。

 私だって、それなりの備えはする」

 レドリック王の言葉通り、『清めの塔』には普通では考えられないほどの防備が敷かれていた。


 まず、常駐の兵が五百人。

 それも、その五百人全てが単なる一般兵ではない精兵で、しかも常駐している人数が五百人というワケではなく、交代制になっているため、常に動ける兵が五百人だという。

 特にこの世界、レベルや能力値によって個人の能力に明確な差が出るため、優秀な兵一人は未熟な新兵十人に勝る。

 それを踏まえた上で精鋭五百人という戦力がいかに破格かはララナには痛いほどに理解できた。


 しかし、

(ま、それでもあのでっかい蛇に勝てなかったんだけどね……)

 と考えてしまうのはララナだけに許された特権だった。

「ほ、本当にすごいですね」

 対して、こんな軍人の大集団を見たことがないリリーアが引き気味に言うと、これはモンスターの大襲撃があった時と同じ程度の動員数だと王は笑った。


「それで、これだけじゃないよね?」

 そんなレドリック王にララナはあいかわらずの無遠慮さで聞く。

 公式の場だと気を遣うんじゃなかったのだろうかとリリーアは思ったが、王はやはり気にせず、

「もちろん。我が軍が誇る四将軍の全てをこちらに集めた。来てくれ」

 ララナたちをひきつれて軍勢の只中を歩いて行った。

「別名ラターニア四天王だよ。厨二くさいよねー」

 と言いながらララナは平然とあとに続き、

「なんかわたし、すごい場違いな気がするんだけど……」

 リリーアも仕方なくその背中を追う。




 彼らを紹介された時、リリーアは内心で思わず、うわぁ、と感嘆の声と嘆息が半分ほどに混ざり合ったような声を漏らした。

 それほどに個性的な人たちだった。


 まず右側、筋骨隆々大男。

「俺は剛腕のバーンガッシュ!

 どんな奴らもこの斧の一振りでバーン、ガシュってね!!

 がはははは!!」

 そんな彼に引きつった愛想笑いを浮かべるリリーアに、ララナがそっと耳打ちする。


(豪腕とか言ってるけど、彼が本当にすごいのは防御力なんだ。

 物理防御、魔法防御共に高レベルで、陰では鉄壁のバーンガッシュなんて呼ばれてる。

 ただ、状態異常にだけは弱いから、非魔法系の状態異常攻撃があれば、何とかなるかも。

 ま、ボクだったらそんなの使わなくても楽勝だけどね)

 そんなララナの言葉に、リリーアの愛想笑いはさらに引きつった。


 次は着物を着てずっと目をつぶっている侍風の男。

「拙者は盲目のキリサキと申す者。

 以後お見知りおきのほどを」

 キリサキが礼をすると、やはりララナが耳打ちをする。

(居合の達人。間合いに入ったら即斬られる。

 目は見えないみたいだけど、それ以外の気配、特に音を察知して獲物を探してるみたいだよ。

 ま、ボクなら間合いの外から一発KOできるけどね)


 その次は、まるで幽霊みたいに存在感のない男。

「私は隠身のレイス。よろ…しく」

(彼は姿を消すのがすごくうまくてね。

 音や気配も消えるし、透明人間対策みたいに体にペンキとかをつけてもついたペンキまで見えなくしちゃうからなかなか厄介なんだよ。

 ま、ボクなら勝てなくもないと思うけど、場所が分かる道具があるとかじゃなければあんまり戦いたくはないかな)


 そして最後は、ゆったりとしたローブを着た、小さな男の子だった。

「僕はライ! 大奇術師さ!!」

 やっと癒し系が来たかとリリーアは目を輝かせるが、

(この子は見た目はあどけない感じなんだけど、千の武器を使い分けるって言われるほどの兵器マニアのトリガーハッピーでね。

 アイテムボックスから色々な武器をとっかえひっかえ使っては替え、使っては替えを繰り返すトリッキーな相手だよ。

 ま、ボクを倒せるような武器なんてないとは思うけどね)

 その説明を聞いて引きつった笑みをさらに凍りつかせたのだった。


 そんな風に顔合わせを済ませ、ララナとリリーアはあいさつもそこそこに次の場所へ向かう。

 四人の将軍の紹介だけで、すでにお腹いっぱい感のあるリリーアだったが、そこにはさらにリリーアの度肝を抜くモノが控えていた。



「見れくれ。これが我が軍に最近になって配備された、魔道ゴーレム砲だ!」



 そんなレドリック王の力強い言葉と共に目の前に現れたのは、ドクドクとまるで生きているかのように脈動する、力強くも不吉な巨大な砲台だった。




「これ、前に来た時はなかったよね? いったいどうしたの?」

 その威容を前にして、何事にも動じないはずのララナも若干眉をひそめた。

 それに気付いた様子もなく、レドリックは自慢げに語る。


「最近王宮に出入りし始めたある商人から、お近づきの印にと格安で譲ってもらったのだ。 これは生きている砲台という、奇妙とも思える着想から生まれた……」

「その商人っていうのは?」

 しかしララナは、得意げなレドリックの話を容赦なく打ち切って聞く。

「うん? そういえば、これを渡されてからは見なくなったな。

 おかしなものだな。あの価格でこれを譲れば赤字だっただろうに、なぜ……」

「ふぅん。ならいいや。

 それよりこの砲台のことを教えてよ」


 またもララナに話の腰を折られ、さすがに少しムッとした様子の国王だったが、やはり砲台の自慢をしたいという欲が勝ったのか、話し始める。

「この砲台は異国のゴーレムの技術を使って作られたという『生きている砲台』だ。

 これの一番素晴らしい点は、普通の砲台と違い、自らの判断でもっとも危険度の高い敵を優先的に狙い撃ってくれるところだ。

 この機能により、砲撃主がやられたために使用不能になったり、敵に奪われて逆にこちらが砲撃されるなどと言ったリスクがほぼゼロになる」


「ふーん。ちなみに敵味方の判断はどうやってやるの?」

 何の気なしに放たれたようなララナの言葉だったが、レドリックはちらりとララナを見て、

「すまんな。そればかりは軍事機密だ。

 いくら英雄殿とはいえ、そこまで明かす訳にはいかん」

 申し訳なさそうに首を振った。


「べつにいいよ。それでこれ、強いの?」

 言葉の通り、全く気にしていない様子のララナの問いに、レドリック王は柔和な顔立ちに似合わない、不敵な笑みで応える。

「強い。それもとても、だ。

 無属性の魔力の砲弾を、回避不可能な高速で射出する。

 砲弾自体はそう大きくもなく、着弾しても爆発はしないので大軍相手に向く武器ではないが、単体の敵に対しては無類の強さを発揮する。

 対空性能に優れ、幻術や隠蔽能力も無効化するため、少数の敵を相手取るならこれほど適した兵器もない。

 そうだな。ララナ殿が倒したかつてこの国を襲った厄災も、これを使えば三撃と持たないだろう」


「へぇ…?」

 ララナが低い声でつぶやく。

 全く気のない返事のようにも聞こえたが、そこにはクロニャを相手にした時と同じ凄みが込められているとリリーアは感じた。


「チャージ時間は?」

「それだけがこの兵器の欠点だ。

 連射は出来ず、一射毎に150秒のチャージ時間がかかる」

「じゃあ、敵としてはその間にこれを壊そうと向かってくるワケだね」

「そうだろうな。しかし、この砲台の防御力は並ではない。

 しかも、仮に強力な攻撃を受けても即座に自己修復する。

 まともな方法ではこれを破壊すること不可能だ」

「まともな方法では、ね」

 それを聞いたララナはなぜか邪悪に笑った。


「私が手配した防備についてはこんなところだな。

 何か他に見たい所や聞きたいことはあるか?」

 その笑みを見て国王は怪訝に思ったようだが、いつものことかと思って特に気にも留めなかったようだ。

 こちらもいつものトーンで締めに入る。


 その機会を、ララナは逃さなかった。

 すかさず質問をする。

「じゃあ、『清めの塔』について教えてほしいかな。

 あれって正確にはどういう時に開くの?」

「ラターニア王家の女性が扉に触れた時に開く。

 その際、手袋越しなどではなく、直接肌で触れなければいけないらしいな」

 『清めの塔』の仕掛けについては王女を守る上で重要だと考えたのだろう。

 レドリックは快く答えてくれた。


「扉が開いた隙に、他の人が入ったりとかは?」

 ララナの鋭い指摘に、レドリックは即答する。

「それは不可能だ。扉は開いていても、塔の結界が機能していない訳ではない。

 もちろん王女が身に着けている物は通すので無生物は例外だろうが、少なくとも生きている者は王族の女性でなくては中には入れない」


「そっか。色々ありがとう、レドリックおじさん!」

 その説明を聞いて、ララナはようやく満足したようだった。

 満面の笑みを浮かべ、元気よく頭を下げた。

 意外だったのはそれだけではなく、そんなララナを見て、

「い、いや……」

 すわロリコンか、とリリーアが不安になるほどレドリックは狼狽した。


 しかしそれをごまかすようにレドリックはあわてて口を開く。

「そ、それで、どうだったかな、ララナ殿?

 我が国の防備が、ララナ殿のお眼鏡にかなったのならよいが」

 レドリックの言葉は質問だったが質問ではなかった。

 彼は自分の国の警備体制に絶対の自信を持っているとその声音だけで読み取れる。


 果たして、

「そうだね、いいと思うよ。

 いくらボクでもここまで守りを固められたら、単騎じゃ扉の前にもたどりつけないと思う。

 個人の力じゃ、この守りを突破するのは不可能だね」

 さしものララナも、この守りを評価するような言葉を放った。


 そこで、ララナはもう一度、塔を守る軍隊を振り返る。

 まず、ラターニアの精鋭五百人。

 さらにはそれを束ねる四人の特殊な力を持つ将軍たち。

 強力無比な魔道ゴーレム砲台。

 そして、仮にそれら全てを見事かいくぐったとしても、その奥には最後にして最大の障害がある。

 神との誓約に基づき、塔を守護する最強の守り手、異世界勇者クロニャ。


 レドリックに話した通り、この塔の守りはいくらララナでも崩せない。

 鋼にだって、不可能だろうと思う。

 たしかに鋼は今まで、色々な事件や難局を、彼の持つ不可思議な能力と機転で切り抜けてきた。

 だがそれは、解決しなくてはいけない課題が一つ、あるいは一種類だけだったからだ。


 しかし、この軍勢は違う。

 それぞれの性質も弱点も異なるこの集合は、単一の人間が機転を利かせてどうにかできるような物ではない。

 いくら鋼が規格外だと言っても、人は同時にたくさんのことを処理できないし、全ての相手の弱点を突くことなどできない。

 一人の人間にできることには限りがあるのだ。


 ……そう、一人の人間に、ならば。



 鋼の、自分の特殊能力を最大限に活用する機転。

 今まで自分の力にしか応用していなかったそれを、自分だけではなく、仲間たちにも活用したらどうなるのか。

 その時には、誰もが成しえなかったことを、誰もができると思わないようなこと――例えばたった数人で一国の軍勢を打ち破ること――だって、成し遂げてしまうのではないか。


 ララナがそんな考えに浸ってゾクゾクと体を震わせていると、

「様子がおかしいようだが、大丈夫か、ララナ殿。

 私はもう王宮に戻らねばならないが、どうする?」

 そんなララナに、少し心配そうにレドリックが問いかける。


「あっ! だったら、わたしたちも……」

 ララナより先にリリーアが口を開きかける。

 リリーアとしてはこんな場違いで殺気立った場所からは一刻も早く抜け出したい。

 だから王の提案には一も二もなく賛成したいところだったのだが、

「ううん。ボクたちはまだここにいるよ。

 一番大事な人に、まだ会ってないしね」

 ララナの言葉で、リリーアの望みはあえなく崩れ去った。


「そうか。では、とりあえずここでお別れだな」

 ララナに過保護なレドリックも、そこでついてくるとは言わなかった。

 不思議に思ってリリーアが聞いてみると、

「いや、どうもあの勇者殿は苦手でな。

 この前も、あの全くの無表情で『お願い』をされて、ついつい断り切れなかった」

 と苦笑いした。

 どうやらクロニャに苦手意識があるらしかった。


 リリーアはほほえましいエピソードとして聞いていたが、ララナが食いついた。

「『お願い』ってどんな? どんなことを約束したの?」

「うん? ああいや、塔に誰かが攻め寄せてきたら、どんな事情があっても勇者殿の指揮下で全軍が全力で戦うと約束してくれ、と言われたのでな。

 まさか指揮権を渡す訳にもいかないし、私としては断りたかったのだが、結局は迫力に負けてうなずいてしまったよ」

 あくまでほがらかに笑うレドリック。

 それに対してララナは表情こそ変えなかったが、

「勇者に対して簡単に誓約を……なんて迂闊な」

 と小声でつぶやいたのを、リリーアの耳はかろうじて拾っていた。


「やっぱりどうしても、もう一度勇者に会わなきゃダメみたいだ。

 リリーア、行くよ!」

 なぜか苛立った様子で、ララナはリリーアの手を取ると、あっけに取られた王を残してスタスタと勝手に先に進んでしまった。




 たまらないのは手を引かれているリリーアだ。

 どんどんと前に進むララナに、抗議の声を上げる。

「ちょ、ちょっとララナ! どうしたの?」

 ララナは振り返りもせずに答えた。

「誓約だよ! 神や勇者との約束は、人間への強制力を持ったりするんだ。

 完全にやられた。これで本人が望む望まないにかかわらず、あの軍隊は全部、クロニャの手駒だよ!」

 その言葉に、リリーアは息を飲む。


 しかし、疑問に思うこともあった。

 現状、味方であるクロニャに軍隊がつくことが、そんなにマイナスになるのだろうか。

 それを聞こうとしてリリーアは口を開いて……すぐにつぐんでしまった。


 質問を思いとどまったワケではない。

 そうではなくて、それは全く違う要因。

 目の前に現れた圧倒的な存在感に、口を開くことすら忘れてしまったのだ。


 眼前にそびえるは、『清めの塔』。

 清廉さのみを追求して作られたと言われても信じられそうなその真っ白な建物は、全く華美でも豪奢でもない。

 それでも清澄な存在感を持っているのはさすがと言えなくもないが、リリーアから言葉を奪ったのは、当然そんな物ではない。


 その白い扉の前。

 まるで扉の白さに反逆するかのように、黒尽くめの服を着た少女がそこには立っていた。


 ――塔の最後にして最強の守り手、異世界の勇者、クロニャの登場だった。



 しかし、リリーアがすくませた勇者に対して、ララナはまったく物怖じしない態度で近付いていく。

「やぁ! さっそくだけど、一つだけ聞きたいことがあるんだ。

 それが済んだらどっか行くから、教えてくれないかな」

「…………」

 クロニャは答えない。

 それどころか、ララナの存在に気付いた様子すらなく、ただ虚空の一点を見たまま凍りついたように動かなかった。


 ララナは構わず続ける。

「クロニャが神様と結んだっている誓約について、詳しく聞きたいんだ。

 ね、頼むよ」

「…………」

 ララナが軽い調子でそう頼み込んでもクロニャは眉一つ動かさなかった。


 傍で見ているリリーアが、こりゃダメだろう、とあきらめかけたその時、小さな音の連なりがクロニャの口から洩れた。

「ひと、つ。12月31日午前10時、まで、『清めの塔』の入、り口、を、守護し、侵入、および破壊、を試み、るモノを、全力をもって、排除、すること」

「っ!? へぇ! 31日の朝の10時までしか警備はしないんだ!

 なんでだろ? クロニャは聞いてる?」

 意外にもしっかりとしたクロニャの返答に、ララナが興奮してまくしたてるが、クロニャに聞いている様子はなかった。


 しかし、淡々と言葉だけは続ける。

「ふたつ。た、だし、一の期間中、に、おいても、ラターニア王族の女性、つまり塔の資格者、のみ、接近を許可し、資格者が中に入った後は、塔へと侵入を試みる者は、資格の、あるなしを問わ、ず、排除すること」

「ふぅん。塔に入れるのは、先着一名様ってワケだね。けど、どうしてだろ。

 そもそも資格者っていうのは一人しかいないはずなのに、何でその後の話が詳しく決められてるんだろうね?」

 ララナがさらに問いかけても、クロニャは応じない。

 戯言に付き合ってなどいられるかという態度で、最初の質問にだけ答える。


「みっつ。一の期間、終了後、の24時間は、資格者へ、の、一切の干渉、を禁じ、る」

「これって、もしかして封印の儀式を見越した上での取り決めかな?

 神様は事が起こる前から、王女が儀式を行うって知ってたの?」

 もはや完全に独り言と化したララナの言葉を完全に無視し、最後に、


「よっ、つ。これらの誓約、を、意図的に破った場合、わた、し、は、死ぬ」


 あくまで当たり前のことを言うみたいに四つ目の条件を話し、クロニャはその小さな唇をつぐんだ。





 それから、ララナがなだめてもすかしても額に肉を書こうとしても、クロニャは何も話そうとしなかった。

 まあ、額に肉と書こうとした時だけクロニャの『絶対的隔意』が働き、ララナが数メートル吹っ飛ばされたが。


 とにかくこれ以上は無駄だと悟ったララナたちは、そそくさと『清めの塔』を後にした。

「ね、ねぇ……」

 ようやく完全に二人きりになって、リリーアはララナに、今までずっと気になっていたことを尋ねる。

「ずっと思ってたんだけど、これ、防備を強化するための調査って言うより、いつかこの防備を破る時のために調べてるみたいに思えるんだけど……」

「え? そりゃそうだよ?」

 その質問に、ララナはあっさりと肯定の返事を返した。


 それを聞いて、一気にリリーアの顔が青くなる。

「もしかして、もしかしてだけど、この軍隊と戦いになるなんて考えてるの?」

 辺りに散らばる屈強な兵士たちを見回し、おそるおそる尋ねたリリーアに、ララナは首を振った。

「ううん。『戦い』には、ならないよ」

「そ、そうよね!」

「うん、そうだよ」

 そして、ああよかったと胸を撫で下ろすリリーアに、ララナはにこやかに言った。



「こんなのと争うことになるなら、それはもう『戦い』なんて呼ばれない。

 ……ボクらがやるのは『戦争』だよ」



 それを聞いた瞬間、リリーアは自分の顔から血の気が引いていく音を、たしかに聞いた気がしたのだった。



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