第五話 グロック
キーツの処理を内々で打診された。
上が出した結果は『試用期間で契約解除』だった。
まぁ無理もない。
この施設の作業をこなせない以上、他の全てが完璧でも不採用だ。
高畑は他はサイアクだったが作業は及第点だった。
だから先日までは生きていられた。
ま、元から死にたがって居たわけだ。
あの夜の続きをするだけなら、お互いに問題は無いだろう。
——次の作業が最後だ。
「ボクには無理ですよ」
「そうか」
相変わらずヘタレな事を言う。
その結末を今日の終わりに見ることも知らずに——
お気楽なものだ。
今日の作業は98番の男だ。
先日の有給スパナ野郎。
どうやら00番のミルのことを漏らしたらしい。
ダチか、女か、ネットか、酒場か——
あんな奴にミルを使わせた上も上だが......
今日連れて来る仲間ごと——だそうだ。
作業は00番でするのが効率がいい。
それを言うと上は00番での作業許可をくれた。
ついでにキーツもそのまま解雇出来る。
モニターに二人の男が映った。
一人は有給スパナ野郎。
もう一人は例の仲間。
それぞれゴルフバッグを背負っているが——中身は"一人分"だろう。
「今日は二人もですか!?」
「しっかりやらねぇと、こっちが狩られるぞ」
そう言ってグロック19を手渡した。
「こんなの使えるわけないじゃな」
バチン!!
喚く口を止めるのに、平手打ちは実に効果的だ。
殴られた痛みと、それ以上に大きな音にショックを受ける。
「コイツは初心者向けの銃だ。引き金を引くだけで使える」
これを見た時は、上も意外と優しいと思った。
昨日のガバメントじゃさすがに難しいかっただろう。
私への支給もグロックだったから、弾も共通だ。
「いいか、銃は両手で持て」
「肩幅に足を開いたら、持ったまま真っ直ぐに下ろせ。そうだ」
キーツが明日の太陽を拝めるかは知らん。
だがコイツが使い物になれば、私が明日の太陽を拝める確率は上がる。
「そのまま上、肩の高さまで真っ直ぐに上げろ」
「こ、こうですか?」
「ああ、サマになってる」
私は笑いかけると「撃つ時に息は吸うな。吐くか止めろ」そう言って「そして警告は要らん。向けたら躊躇するな」と教えた。
そして監視室の扉を開けた。
廊下に出ると、背中で扉の閉まる金属音が聞こえた。
再びこの扉を開けるか否かは——神のみぞ知る。
もっともそんなものは居やしないが。
つまりは誰にも分かりやしない。
コンクリートの廊下に、ふたつの足音が響いた。




