第三話 新人
高畑は自己都合で他界した。
背中に三発浴びせたあとは00番のミルに入れた。
処理場からの依頼だった。
おかげでバラバラにする手間を掛けずに、ミル直送だった。
放り込む人手も出してくれた。
これで弾代別途で、三万円の大盤振る舞いだった。
ただこれで気を緩めて勤務査定に響けば、私も自己都合で他界することになる。
褒美の生は飲んでも深酒は厳禁だ。
そして今日から高畑の代わりの新人さんが来る。
一週間くらい教えたら独り立ちだ。
会社は三日で仕上げろと言っていたが「無理だ」と断った。
三日の間にあらゆるトラブルが出れば良いが、ノントラブルで過ぎればそいつの経験値はゼロだ。
結果、私にしわ寄せが来るだけになる。
どんなのが来るかな。
ま、おかしなのが来たら処理すればいい。
次は個人的な仕事になるが。
監視室のドアがノックされた。
ああ、開けなくても分かる。
コイツはヘタレだ。
面接担当も自己都合にしてやればいいのに。
90か00で瞬殺で退職だろう。
「開いてるよ」
「し、失礼します」
ずいぶん若いのが来た。
「今日からお世話になります山本喜一です」
そう言って下げた頭をあげたソイツは、いつかの海に落としたキモ野郎だった。
「あーーーーー」
「うるさい」
前蹴りを溝落にキメたら静かになった。
咳き込みながら涙目で私を見上げていた。
もう一度、噛んで含ませるように言った。
「う・る・さ・い」
その言葉に山本は何度も頷いた。
「せっかく落としてやったのに、なんで助かってんだ?死ぬ死ぬ詐欺か?」
「即死じゃないから苦しくて無理だったんですよ」
生意気な屁理屈だ。
「人生からも死ぬことからも逃げて、今ココってか」
「そういうアナタだって今ココじゃないですか」
「じゃぁココが何か分かって来てるんだな」
私がそう言うと予想外だったのか言葉を詰まらせた。
「産廃処理場じゃ......ないんですか」
「このドアをノックした以上は、もう逃げ場はねぇぞ」
私は明確には答えずにそう言った。
「いや待ってくださいよ。逃げ場ってなんですか」
「ハロワの求人見て来たんですよ」
「運営だって都の第三セクターじゃないですか」
矢継ぎ早にうるさい奴だ。
とりあえず殴ろう。
——正解。
裏拳を頬に叩き込むと黙った。
大抵の人間は顔を殴られると黙るものだ。
「ゴチャゴチャうるせぇ。お前の前任者は私が三発ぶち込んで此処で処理した。お前も初日に処理すんぞ!」
以前額に当てた銃を引き抜いて見せた。
「この街はみんな狂ってんだよ。自分だけマトモだなんて思うなよ。もうお前だって狂っちまってんだ」
板子一枚下は地獄——
この街に仕切りなんてどこにも無い。
あるとすれば板よりも薄い紙幣がそれなんだろうな。
これを何枚重ねられるか——
命の価値も身の安全も、それだけが保証してくれる。




