第十五話 敵と銃火器
「それ、映画とかでよく見ますね」
キーツがイングラムを指差して言った。
「悪役がさ、やられた時に引き金を引いたままバラバラ撃って倒れるやつな」
「ああ、分かります」
キーツが肩を揺らして笑った。
コイツも随分と染まって来たなと思った。
この場面で笑えるヤツは強いか、イカれてるヤツだ。
「キーツ、イカれてんな」
笑ってみせた。
「リヤには負けるさ。ボクは海に蹴り落とされた」
そう言ってケタケタ笑った。
「悪かったな、コレやるよ」
私はイングラムをキーツの肩に掛けてやった。
そしてごく自然に顔を近付けると「いいか、その角度のままトリガーを引け。反動で上を向くから気をつけろ」と耳打ちした。
カタカタとミシンのような音が短く響いた。
最後は天井の照明が割れる音と、ガラスの破片が降り注ぐ音で終わった。
「気をつけろ言ったじゃん」
「あんな一瞬で持っていかれるなんて思わないって」
「ったく、アイツの得物は私が貰うからな」
そう言ってイングラムの銃撃で倒れた男の死体を漁ったが、めぼしいものは無かった。
「銃はいいの?」
「マグナムだぜ、扱えないって。多分、コイツにも」
私は死体を指で差しながら、これは僥倖だと思った。
敵は一部のプロと素人集団だ。
暴力に慣れていない素人は躊躇する。
その点でキーツは躊躇わない。
一線を超えた種類の人間だ。
「ねぇ、リヤ」
「ん?」
「そもそもどうして、代議士は奪われたんだろう?」
「救出か別利用だな」
私がそう言うと、キーツは少し考えてから口を開いた。
「救出だとしたら、今頃この一件は公表されているんじゃないかな」
「そうされると、私たちはもう手が出せないな」
「うん。だとすると別利用だよね。それにこの銃火器は多分だけど自衛隊とか警察で使うようなものではない......よね?」
最後は自信なさげな語尾だった。
「そうだな。自衛隊はこのイングラムをモデルにしたマシンピストルみたいなのだから違うな」
「じゃぁ、敵の正体って何だろう」
「国の機関とは違う——極左系か」
「それか極左系に見せかけたJ-CIA」
「国家安全保障局にしては素人すぎる」
私がそう言うと、キーツは安心したように頬を緩めた。
「なら、勝ち目はあるね」
「でも油断はするなよ。夕べのバイク野郎みたいなのも居るからな」
私はあの訓練された無駄のない動きを思い浮かべて、背筋に冷たい空気が流れ込んだように肌が粟立った。
「ねぇリヤ、もうひとつ」
キーツは最後に面白い提案をした。
「代議士が救出対象じゃないなら、人質だよね」
「そうなるな」
「監禁場所を探さない?見張りがいる場所がきっとそうだと思う」
「乗った」
ミッションは奪還だ。
殲滅ではない。
このタイムアタックに新たな希望が加わった。




