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呪縛  作者:
1/1

タイトル未定2025/09/30 00:15

「病死のない世界を」

 食事中、会話が少ないということを誤魔化すように流れるテレビの音をぼんやり聞いていた。不意に耳についた言葉に画面を見ると、もう別のcmが始まっていた。


 夕飯を食べ終え部屋に戻ると、自分で書いた「〇〇大学合格!」の文字が目についた。この言葉は両親に見せるためのパフォーマンスか本気の目標か、そんなの自分が一番わからない。わからないまま、ペンを握った。


 1時間勉強し、一旦休憩に入る。頭に情報を詰め込んでいないとき、生まれた空白に入り込んでくる言葉は忘れたいものばかりで煩わしい。

「人生100年時代」

「病死のない世界を」

 まるで長生きが幸せかのように語る言葉たち。

 私が勉強しているのは目標に入るためではない。目標の大学なんて、憧れのキャンパスライフなんて存在しない。

 それでも存在すると自分に言い聞かして視野を強引に狭めて勉強しているのは、ただ人生が長いからだ。私の人生が100年だとして大学を卒業したあと私は自分自身を78年養わねばならない。命の価値は平等でも社会的価値はどうしようもなく不平等で、そのなかで必要とされるには当然武器が求められた。大学名がどれだけ就活に影響されるか具体的にわかっているわけではない。それでも、軽くてもよくある形をしていてもある程度誇れる学歴があるだけでなにかが変わる気がした。

 ぴぴぴと甲高いタイマーの音が鳴り、もう一度勉強に戻る。

 勉強が好きでなくとも、大きく苦となる性格でなくて良かったと思う。未来にある大きくて漠然とした不安、それを一瞬でも振り払うにはなにかにかりそめでも没頭することが一番で、その手段に勉強を選べて良かった。

 頭の中でやまびこのように響くcmの言葉が少しずつ遠ざかっていく。まるで命を縛るような言葉だなと思った。

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