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タナカカナタのカタナ  作者: キクメン


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第97話

 偵察を終えた私達は夕方前には十分余裕を持って村に到着し、鍛冶屋に寄ってみると剣のメンテナンスが終了していたのでそれを引き取り、軽く素振りをするシャルを見て鍛冶屋の主人はかなり驚き、店の奥からこの店一番の剣だと言うのを持ってきた。


ヒュンヒュンヒュン!


「重いが良い剣だ、焼きも実に丁寧でちょっとやそっとじゃ刃こぼれしないだろう」


「驚いた!とても信じられん!アンタ、そんな細くて小さな体でよくそんな風にその剣を振るうことが出来るな!それにその見識眼!アンタは一体何物なんだ!?」


「あ・・・あ~・・・それは、まぁ・・・良い師匠の下で修業しているからかのう」


「ホウ!一体どんな師匠かね!?」


「ウム、ここにいるのがアタイの師匠だ」


「えっ!?この少年のような細っこい人が!?」


「ウム、こう見えてかなたは探検家と戦士のライセンス3級の持ち主で、かなた以外誰にも扱えない魔の剣を振るう達人だぞ」


「なんと!!」


「アタイ達はゾルゾル団を討伐し、今はボロゾーキンの首を刎ねるためにやってきたのだ」


 いや、ボロ雑巾じゃなくてボロジキンだよ。と、心の中で突っ込んでおいた。


「それは本当か!!ああ!何という事だ!ウォオオオ!」


 突然店主は号泣し始めた。


 私は店主の背中をさすってなだめると、店主は少しずつ平常に戻って有難うと言った。


 店主の話によると、将来結婚を誓い合った弟の恋人が犯された上に殺され、死にたい程に絶望した弟は敵わないと知った上でボロジキンの所に行き、無残な姿で殺された挙句バラバラにされた死体が村の入り口に捨てられていたとのことだった。


「ムムム・・・アヤツは絶対生かしておかん、必ず明日には首を持って帰るぞ」


 シャルが闘志を燃やした美しい瞳に力を入れてそう言うと、店主は嗚咽を漏らしながらどうかこの剣をもらってくれと言った。


「必ずやこの剣で無念を晴らして見せる」


 店主はその場で泣き崩れ、またしても私は店主が落ち着くまで店主の背中をさすった。


 燃える闘志はそのまま夕食の場に引き継ぎ、私達はモリモリガツガツ夕食をたらく食べた。


 翌朝、小さな朝市が開かれている場所に行って、香りの良い果物か木の実を探していると、かなり効果がありそうな果物があったので、それを買おうとしたところタダで良いと言われた。


 どうやら私達がボロジキンを倒しに行くという事が知れ渡っているようで、他にも必要な物があれば遠慮なく言ってくれと言われた。


 さらに朝市の近くで営業していた食事処でもタダで朝食が振る舞われ、結構ゴージャスで量も多い食事を朝からたっぷり味わう事が出来た。


 食後多くの村人達からの声援を受けて出発し、ところどころの家の窓の奥からは顔を隠した女性達がこちらに手を振ってくれていた。


「職業戦士というのも良いもんだなぁ、人助けとかまさに正義って感じがして良い気分だ」


 と、まだ討伐もしていないというのに、既に依頼完了したような口ぶりでシャルは言った。


「そうだね、そのためにもしっかり依頼を達成しないとね」


「おう!」


 そうして2時間程で昨日と同じ場所に到着し、シャルは早速朝市でもらった香りの良い果物を取り出して、林の中で鳴子トラップが仕掛けられている場所の幾つかの地面に果物を置いた。その際さらに香りを強めるために一口かじって置いた。


 廃村から遠くもなく近くもない絶妙な位置に果物を設置し終えて昨日と同じ大きな木に登って、鳴子が鳴るのを待った。


 程なくしてコロンコロンと鳴子が鳴ったのだが、まだ寝ているのか野盗達は廃屋の家から出てこず、私は少しだけ不安になったが、別の鳴子が割と大きな音で鳴ったところで野盗達が出てきた。


 3人とも最初から武器を持っており、遅れてまだ状態の良い廃屋からボロジキンが出てきた。


 ボロジキンが鳴子が鳴った方を指さすと、3人の野盗は頷いてそちらに向かって行った。


 私とシャルは3人が林の奥に消えていくまで待ち、完全に姿が見えなくなったところで、私がシャルをお姫様抱っこして10メートル以上はある大きな木の枝の上を先端に向かって走れるだけ走ってから大ジャンプした。


 ボロジキンのいる場所までは20メートル程あったがみるみる近づいていき、かなり近づくまでボロジキンは気付かなかったが、目前にまで迫ったところでぼんやりした感じで空を見上げたボロジキンはすぐにギョッとした表情になって右側に側転した。


 私は下半身の関節全てを柔らかくサスペンションのようにして衝突を吸収し、全く音を立てずに着地し、すかさず飛び降りたシャルはモルサール流歩方術の戦闘用移動を用いて一気に距離を詰めた。


 ここでもしもボロジキンが抜刀していたら、すぐにシャルの一刀で首が刎ねられていたが、ボロジキンは跳ぶようにしてさらに横方向に避けて回転し、そのままの勢いで立ち上がってこちらを振り返りもせずに全力で逃げ出した。


「ありゃ!凄い逃げ足だ!それに見事な判断!」


「シャル!剣を!」


「よしっ!受け取れっ!」


 シャルは私の未来予測位置に向かって鍛冶師からもらった最高の剣を投げ、私は全力で走りながら速度を落とすことなくそれを難なくキャッチし、ボロジキンを追いかけた。我ながらキャッチした後で、よくぞこんなにもスムーズに剣を掴むことが出来たもんだと感心した。


 そこから私はもう一段自分のギアを上げてボロジキンを追いかけたが、自分の想定していた以上の速度で走ったものだから、ボロジキンの背中に激しく激突してしまった。


「グエェッ!!」


 あまりの衝撃でボロジキンは5メートル以上も吹き飛んで地面に強く叩きつけられ、ピクリとも動かなくなってしまったが、慌てて近寄って脈や息を確認したところどうやら気を失っているようだったのでホッとした。


 とりあえず近くに生えているツタを剣ではなく刀の方でスパスパ切り取って手首足首を固く縛って、軽々と肩に担いでシャルの方に向かったが、シャルは既にすぐ近くまで駆け付けていた。


「そんな風に倒すとは思わなかった、もうかなたはこの世界で一番強いんじゃないか?」


「いや、それが僕もこうなると思わなった、逃がしちゃいけないと思って無我夢中で全力で走ったら、勢い余り過ぎてまさか後ろから跳ね飛ばす事になっちゃうとは・・・」


「アハハハハ!ホント、かなたは面白いなぁ」


 その後二人で廃村に戻ると、今度は三人の野盗が獲物をしとめてホクホク顔で戻ってきたが、私達の姿を見た途端ギョッとした顔になり、私はボロジキンを肩に担いだまま猛ダッシュして一気に距離を詰め、事態が飲み込めていない盗賊をまるで居合のように片手で一瞬のうちに抜刀してあっという間に三人とも気絶させた。確実に全員真っ二つになっているはずだがやはり今回も全員無傷で気絶した。


「不思議だ!後ろから見てても確実にかなたのカタナはコヤツらを真っ二つにしたように見えたのに、全くなんともない!やはりかなたのカタナは凄い剣だ!まさに不思議な魔の剣だ!」


 その後廃屋の中から車輪が壊れた荷車を見つけ、車輪は刀で斬り落としてボロジキンと野盗達と、ついでに野盗達が仕留めた昨日よりも大きな猪を乗せてそりのようにして私が引っ張っていったが、シャルも体力アップのためということで、後ろから押して手伝ってくれた。


 さすがに行きの時のような速度で進むことは出来なかったが、それでもお昼少し過ぎには無事村に到着し、少しずつ事態を認識した村人達は村中爆発したかのような大歓声をあげた。


「いや~正義の人助けは実に良いモンじゃのう~」


 シャルもとびきりの笑顔でご機嫌だった。

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