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タナカカナタのカタナ  作者: キクメン


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第95話

 私は恐る恐る足元で倒れている盗賊に近づいて、手を頸動脈にあててみたところ、しっかりと脈がある手応えを感じて驚き、続いて口と鼻の近くに手を当ててみたところ、ちゃんと呼吸をしていることが分かった。


「これはどうなってるんだ?コヤツら全員生きてるぞ!みねうちでもこうはいかんぞ!?一体何をしたんだ?かなた」


「僕にも分からない、確実に胴体を真っ二つにしたと思ったんだけど、手応えがまるでなかった」


「きっとこれも魔の剣の不思議な能力だ、かなたの殺したくないという心を感じ取ったカタナがかなたの気持ちに応じてくれたんだ・・・」


「この刀にそんな能力が・・・」


 私は右手に持った刀をしっかりと眺め、心の中で有難うと感謝した。


「そっちの方は全員殺したの?」


「ウム、一番強いのは首を刎ねた、それ以外の者はまだかろうじて虫の息で生きている、心臓を刺してラクにしてやろう」


「ちょっと待ってくれるかい?」


「・・・間に合うか?」


「やってみる」


「無理するな、いや、無理しないでくれかなた、今のアタイにはオヌシが一番大事なんだ」


「うん」


 シャルには私が瀕死の状態の盗賊達に手当てを試みたいと思っている事が分かっていた。口に出さずとも私の思いを理解してくれるシャルは本当に有難かった。私にとってもシャルはとても大事なかけがえのない存在だった。


「あそこの者が一番先に死ぬ」


「分かった」


 シャルの的確なトリアージのもと、最も重症な者に近づくと胴体がほぼちぎれていて内臓が大量にはみ出していて、確実に助からない状況だった。


 とても直視できない酷すぎる光景に加え、生臭い血の匂いと裂けた内臓から出た消化物の臭いで、普通の人間なら吐くか失神してしまうところだが、何故か不思議な事にこの時のは私はとても冷静で、ちぎれかけている腹の上に私の両手をかざして、呼吸を開始した。


 目を細めて単に鼻から空気を吸うのではなく、元気の素を沢山吸い込むんだというイメージで呼吸をして、深く吸い込んだ元気の素をへその下あたりで大量に濃縮するイメージをして、下腹部がグルグル鳴って熱く感じたところでポンプのように両手に送って指先から一気に大量に放出した。


 するとまるで逆再生映像のように飛び出た内臓が自ら腹の中に戻っていき、ちぎれかけていた腹の裂け目が繋がっていった。


 15秒程で完全に胴体は繋がり、目を開けたまま意識不明だった状態から目をつぶって呼吸をし始めたので、シャルに次に死にそうな人物を教えてもらってすぐにそちらに向かった。


 次の人物は右肩から先を切断されており、まだ浅い呼吸をしていたが痛みを感じていない程に意識混濁していた。しかし最初の盗賊よりもまだマシな状態だったので10秒もかからず治療は完了した。


 他に手足を斬り落とされていた盗賊達も次々と手当てで治療していき、なんとか全員無事治療する事が出来たのだが、私は強烈な空腹と倦怠感に襲われて歩くのが困難な状況になってしまった。


 シャルは道を塞いでいたバリケードを剣で解体して板とロープを使って簡単なそりを作り、その上に私を座らせてロープを手に取りそりを引っ張って次の村に向けて急いで進んだ。


 有難いことに30分程進んだところで村とまではいかない集落があり、そこには街道沿いの茶屋があって軽食も提供していたので、片っ端から料理を注文して運ばれてきた物をすぐにどんどん食べた。


「ひゃあー凄い食べっぷりだなあんちゃん!」


 店員だけでなく旅の途中の客からも私の猛烈な食べっぷりを驚きの目と共に称賛された。


 シャルは一切何も口にせず心配そうな眼差しで私の顔を見続けていたが、それまで蒼白だったらしい私の顔の血色が良くなっていくのを見て安堵し、お皿にのっていた甘じょっぱいタレのついた団子を私と一緒に食べた。


「おっ!この団子ウマイぞ!」


「うん!凄く美味しいね!後でおやつにするのに沢山買っていこう」


 こうして軽く10人前近い量の軽い食事をたいらげた私を見て店の人も気を良くしたようで、おやつに買った団子を4個もおまけしてくれて、私達も大喜びで店を後にした。


 それからは一切トラブルなく移動し続け、一週間程過ぎたところでそこそこの大きさの村に到着し、結構綺麗でちゃんと水洗トイレのある宿にチェックインした後、特にすることもないので何となく探検家組合に寄ってどんな依頼があるのか確認していたところ、どうにも職員から何度もチラチラ見られているのが気になっていたのだが、とうとう別の職員が近付いて来て声を掛けられてしまった。


「すいません、あなた方は探検家のタナカさんとシャルさんですか?」


「えっ!?あっ、はい、私はタナカです」


「そうだ、アタイはシャルだ」


「あの、南西にいる盗賊のゾルゾル団を討伐したのはタナカさんとシャルさんだという証言が出ているのですが、こちら本当の事でしょうか?」


「ゾルゾル団は知らんが、アタイとかなたで盗賊を倒したのは確かだ」


「そうですね、私達が討伐しました」


「そうでしたか!えっと、今少々お時間ありますでしょうか!?お二方に報奨金と感謝状が届いております!」


 こうしてたまたま立ち寄った探検家組合にて予想外の展開となり、応接室でここの組合長から報奨金と近隣の集落や村に加えて商工組合からの感謝状を受け取り、シャルのランクも一つあがり6級ライセンスとなった。


「そういえば、シャルは探検家のライセンスはとったけど戦士組合に所属していないのって、やっぱり少しでも身元がバレるのを防ぐためかい?」


 探検家組合を出て私達の周りには人がいないのを確認してからシャルに疑問を投げかけてみた。


「うん、それもある、あといきなり現れた美少女が凄腕の剣士だとかなり目立ってしまうから、避けていたのだ」


「手加減してもダメ?」


「何のツテもなく戦士組合に入る場合、一応面接試験があるのだが、それなりに目利きの試験官だと構えとか剣の振りだけでバレてしまうと思ったんだ、こういう基本的な事は手加減とか関係なく体に染みついているからごまかしが効かないんだ」


「なるほど・・・なら戦士組合の方も徒弟制度を利用して僕が保証すればいいんじゃない?」


「なるほど、でも複数の組合に所属して何か良い事ってあるのか?」


 私は以前探検家組合で同じことを聞いた時に教えてもらった兼業に関するメリットを説明した。


「それはいいのう!ならば早速戦士組合に行って登録しよう!」


 そうして私達は元来た道を戻り、探検家組合のすぐ近くにある戦士組合に行って、ここでも探検家組合の時と同様に徒弟制度を利用して私の保証の元、シャルの戦士組合登録を行った。先程の盗賊討伐の件は当然ここにも知られているので、いきなり6級ライセンスからの登録となった。また肖像画については既に南の村で描かれているので、すぐに登録は完了して認可証をもらうことが出来た。


「おおーやったぞ!これで二つのライセンス持ちになった!これまでは爺ちゃんのライセンスとしてもらったライセンスだったけど、今回は自分でとったライセンスだから嬉しいぞ!」


「せっかくだから何か依頼でも受けてみる?」


「やっ!それはいいな!やろうやろう!」


 そうして私達は依頼が貼られている掲示板へと向かって行った。

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