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タナカカナタのカタナ  作者: キクメン


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第92話

 各自分かれて古代の遺跡と思われる建物の跡を調査し始めた時、これまで静かにこちらを見ていた何かがとうとう私に話しかけてきた。しかしまだその姿は現さなかった。


「・・・分かります・・・もしかして、あなたは地球から来た人ですか?」


 私も小声で声のする方に向けて語りかけた。


『やった!ようやく言葉が通じる方に会えた!えっと、あなたも地球から来た人ですか?』


「そうです、私は日本人の田中かなたと言います」


『わぁ!日本人ですか!素敵!私日本のマンガやアニメやゲームが大好きです!』


「あなたの出身はどちらですか?」


『私はブラジル出身のシルビア・マトス・バルバローザと言います、タナカさんポルトガル語お上手ですね』


「いえ、私は自分では日本語を話しているつもりですし、シルビアさんの言葉は私には日本語に聞こえています」


『まぁ!それってやっぱりここが異世界だからでしょうか?』


「そう思います、私にはここにいる人達が日本語を話しているように聞こえます」


『えっ!?でも私にはここの人達の言葉は全く分かりませんでした、ここは凄いジャングルだから滅多に人が来ないので、話す機会がほとんどないのですがそのせいでしょうか?』


「いえ、私は最初からここの人達の言葉が分かりました、それと別の地球人にも会いましたが、その人も言葉は分からなかったそうです」


『ということはタナカさんだけの特殊能力なのでしょうか?』


「そうだと思います、でも別の方は練習してかなりの早さで上達して、いまでは会話が出来るようになったみたいです」


『そうなんですね!・・・でも・・・私は出来そうにありません・・・』


「えっと・・・その理由は?」


『はい・・・私は・・・私はとてもおぞましい姿をしているからです・・・』


「ゴクリ・・・それは・・・どういう姿なのでしょうか?」


『大きな・・・大きなクモの姿です・・・』


「えっ!?・・・もしかしてシルビアさんは・・・いや、それはないか、千年前にはアニメやゲームはないんだから・・・」


『どうかしましたか?』


「その・・・お姿を見せてもらえませんか?」


『・・・分かりました・・・とても気分を害されるかもしれませんが、お許しください・・・』


 そうしてソレは全く音を立てずに出現した。


「ッ!!!」


『すいません・・・気持ち悪いですよね・・・』


 目の前には真っ白いフサフサの毛で覆われた巨大なクモがいた。


 胴体は大きなバランスボール程もあり、頭の真ん中には大きな二つの目があり、さらに左右上下に合わせて8っつの目があって、どれもとても綺麗に光を反射していて正面の大きな2つの目は今は赤い色に見えて、他の目は見る角度によって緑や青い色に変化して見えた。


「いや・・・思ってたよりは・・・うん、全然平気です、私は全然問題ないです、いやこれはむしろアリです、カワイイ系で全然アリだと思います」


『えっ!?この姿がですか?もしかしてタナカさんはそういった趣味の方なんですか?』


「いっ、いやいや、自分は全然虫はダメです、生理的に受け付けないんですが、でもシルビアさんの姿はなんというかアニメに出てくるようなデフォルメされたキャラクターみたいで、本物のクモをそのまま大きくしたリアルな見た目じゃないから、全く気持ち悪くありません、ぬいぐるみのようなカワイイ系モンスターっぽいです」


『そうですか!いや、でもそれは田中さんが日本人だからで、ここにいる人達にとってはやはりおぞましい姿に見えると思います』


「いやぁ・・・それが、中には変わった人もいるんです、ムカデとかヤスデとかが可愛いっていう変人がいるんですよ」


『えぇっ!?そんな人いるんですか?』


「ええ、一緒に来ています」


『あっ!』


ササッ!


「おーいかなたー!何か見つかったのかー?」


「今行くよー!」


「大丈夫、今一緒にいる人達は皆大丈夫だから」


『・・・ハイ』


 いったん私はその場を離れて階段を登ってシャル達と合流した。


「何か見つけたか?」


「アタシは特になかった」


「アタイもだ」


「えーと・・・僕はその・・・」


「「・・・?」」


「クモガミ様に会ったよ」


「「・・・?」」


「・・・」


「何ィーーーッ!?」

「何だってぇーーーッ!?」


「シィーッ!静かに!静かに!クモガミ様が驚くから!」


「ちょっ、一体どういう事?」


「ずっと感じていた視線はクモガミ様だったんだ、クモガミ様は自分の姿を見たら僕等が怖がると思って静かに様子を見守っていたんだよ」


「えーっ!見たい見たい!お姿見たい!」


「うっ・・・クモガミ様は毛むくじゃらなのか?」


「うん、でもシャルの苦手な毛虫みたいな毛むくじゃらじゃなくて、犬とか猫みたいにフサフサのモフモフ系で色も綺麗な真っ白い毛だよ」


「ううむ・・・見てみない事には分からん」


「分かった、クモガミ様を呼んでくるから、皆はクモガミ様を驚かせないようにしてね」


「わぁー!やった!凄い!」


「ウ・・・ウム・・・努力する・・・」


 そうして私は先程の場所に戻った。


「シルビアさん、皆に話してきました、シルビアさんはクモガミ様っていう事にしています」


『クモガミ様・・・ですか?』


「はい、千年程前の王朝時代の遺跡に大きなクモと人間が一緒にいる姿が彫刻で描かれていました、実際にそんな大きなクモがいたかどうかは分かりませんが、益虫としてクモを大事にしていた歴史があるようで、ここにいる人達はクモガミ様伝説として語り継いでいるようです」


『そういえばそんな壁画を見ました!』


「わっ!それはどこですか?」


「おーいかなたぁー!まだかぁー!」


「おっと皆が呼んでる、シルビアさん一緒に来てもらえますか?」


『・・・分かりました、えっと出来れば手を繋いでいってもらえますか?皆さんに私が友好的だということを知らせたいのです』


「ハイ、喜んで!」


 そうして私は純白の巨大グモと手を繋いで、シャルとムルギンの元へと向かった。


「きゃぁーーー!凄い!凄い!凄いィィィーーー!可愛いぃぃぃーーー!!」


「うわっ!凄いのが出たな!ウム、これならアタイも全然大丈夫だ!」


『えっ!えっと、右にいる方は凄く興奮しているみたいですが大丈夫でしょうか?』


「うん、シルビアさんの事が凄く可愛いって言って大喜びしています」


『えっ!?この私がですか?』


「そうです、先ほども言いましたが、彼女は毒虫すら可愛いって言う程の変わり者ですから」


「何だって!ちょっとかなた!失礼だぞ!まぁホントの事だけどさ・・・」


「あっと、ごめん!クモガミ様を安心させようとしただけで、その、悪気はないんだ」


『クスクス・・・』


「やっ!クモガミ様、今笑ったのか?言葉が分かるのか?」


「シャルちょっとゆっくり自己紹介してみて」


「分かった、クモガミ様こんにちは、アタイはシャル・トゥルム・ウォーデルリンヌと言います」


「コンニチハ、シャル、アタイ、シルビア、ト、イイマス」


「スゲェーーーッ!クモガミ様スゲェーーーッ!えっと!えっと!スゥーハァー・・・こんにちは、私はムルギン・リッテ・モーンと言います!」


「コンニチハ、ムルギン、ワタシハ、シルビア、トイイマス」


「わぁーーーっ!凄い!凄すぎる!めっちゃ感動したぁーーー!」


 こうして私達はブラジル出身で巨大なクモの姿のシルビアととても良い形で出会うことが出来たのであった。

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