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タナカカナタのカタナ  作者: キクメン


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第90話

 翌朝、全員で互いの身体をしっかり確認し、特に髪の毛は念入りに確認して、ダニやノミやヒルやその他の吸血昆虫などが付着していない事を確認し合った。


 ムルギンはシャルの髪もショートヘアなのはとても都合が良かったと言い、ロングヘアーだとそれだけ小さな虫がくっついていても気が付きにくいし髪の中にも入っていくからと説明すると、シャルは髪が短いうちに来て良かったと真顔で言った。


 それからナンのようなパンを焼いてサラミソーセージとキノコを薄くスライスして軽く炒めてナンに載せてくるくる丸めて、甘いハチミツ入りのお茶を飲みながらしっかりと朝食をとった。


 その後ムルギンは真剣な表情でトイレに行きたくなった時は必ず教えてくれと言った。用を足す時にズボンを脱いでしゃがんでる時はかなり危険だと言い、虫よけの香を焚いて先に穴を掘ってしっかり周りを確認してなるべく迅速に用を足す事と言い、私とシャルも緊張した面持ちでしっかり頷いた。


 案の定それから程なくして各自トイレに行きたくなり、私が周辺を伐採してスペースを確保して少しでも虫などが寄ってこないようにし、穴を掘って皿の上に香を焚いて足元に置き用を足した。


 その間仲間は猛獣などの危険に備えて、近くで見張っていなければならず、音や匂いが届く範囲内なので、用を足す方はなかなかに辛いものがあったのだが、そんな心配をしていたのは私だけで、ムルギンもシャルも余裕で用を足していた。


「いや~仲間がいるとトイレも安心して出来るから凄く快適だね、それも普通の仲間じゃない超人的な二人だからこれ程楽ちんで心強くて楽しい探検は初めてだよ、爺ちゃんとスナギンと一緒に探検した時だってここまで快適じゃなかった」


「アタイも段々慣れてきて楽しくなってきたぞ!」


「そうだね、ムルギンのおかげでまだ見たくない毒虫とかも見てないし」


「あれ?気付かなかった?結構かなたの近くにでかいゾルゾル(ムカデ)とかゲルゲル(ヤスデ)はいたんだぞ」


「イヤアァーーーッ!」


 私は脊髄反射で飛び上った。


「アッハッハッハッハ!ヒィーッ!ヒィーッ!笑い死ぬ!」


「アハハハハハ!その顔!アハハハハハ!」


 ともかく今日も朝から元気に危険な大樹海の未知の領域の探検を続けたのであった。


「むっ!なんか聞こえるぞ」


「・・・これ、もしかしたら滝の音かも」


「ホントだ!川が流れているねこれは、でもそんなに大きな川じゃないと思う」


「二人とも凄いね、普通の人なら気付かないよ、でも水があるのは助かる」


「だがその分猛獣が水を飲みにくるかもしれんぞ」


「その通り、でも今は二人がいるからアタシは安心だよ、かなたはグマンの王もやっつけたんだろ?」


「そうだ、アタイとかなたがいれば猛獣ぐらい何でもないぞ」


「えーと・・・出来れば殺したくはないかも」


「でも美味い肉が食えるかもしれないぞ」


「あっそうか、うーん・・・悩ましいな」


「まぁ襲ってくるなら戦うしかないんだ、そしたら苦しませずに殺して、せめて美味しく食べることにしよう」


「そうだね、了解」


「いや~頼もしい二人だな~爺ちゃんとスナギンと一緒の探検の時とは大違いだ」


 しかし水辺があると喜んで急いでそこに向かうことはせず、ムルギンはしっかりと方位磁石で現在位置を確認して地図とメモにしっかり周辺の状況を書き込んでから慎重に進んだ。私達などより遥かに優れた探検のプロだった。


 それでも私とシャルがバッサバッサと道を切り開いていったので普通に進むよりは遥かに早く辿り着き、綺麗な小川とその10メートル程上流に小さな滝を発見した。


 ムルギンは私とシャルに周辺警戒を依頼して、小川に近づき水面から中をしっかり覗いた後で瓶を取り出して川の水を中に入れ、さらに何かの粉を数種類入れて瓶の中の水を確認した。


「毒はないね、といっても自分の知る限りの毒だけどね、一応そのまま飲んでも大丈夫だけど、念のため煮沸消毒してから飲んだ方がより安心かな」


「すげぇな、アタイだったらそのままゴクゴク飲んでたかも」


「僕も・・・」


 実際最初に目覚めた小屋の近くにあった泉の水をそのままゴクゴク飲んでたし・・・


「せっかくだから顔と首を洗っておこう、大樹海では風呂どころか身体を拭くこと事態そうそう出来ないからね」


「「了解~」」


 そうして私達は顔を洗って、濡れたタオルで首を拭いた。ちなみに私達は極力肌の露出を抑えた恰好をしており、首にも布を巻いていた。そして布には虫が嫌う液体を塗布しており、着ている服やリュックにも防虫剤を塗布していた。とりわけ足元は入念に塗布していて朝昼晩に必ず塗り直していた。


「猛獣に遭遇する危険は高まるけど、このまま小川の上流に進もう、その方が位置を把握しやすいし、飲料水の確保にもなるし、もしかしたら大昔の人の住居跡とかが見つかるかもしれない」


「「了解!」」


 洗顔と軽い小休止の後、私達は小川に沿って上流に向かって移動を再開し、数時間程進んだところで割と開けた場所が見つかり、そこで昼食休憩をとることにした。


「えっと、多分・・・なんだけど、途中何度か何かに見られてる感じがした、でも何というか・・・危険とか怖いっていう感じはしなかった」


「何だって!?アタイは気付かなかったぞ!気配探知には自信があったのにショックだ!」


「アタシもだ!動物の気配は結構鋭い方なのに、気付かないなんてショック!」


「うーん、じゃあ気のせいかな?虫が苦手だから過敏になってるのかも」


「いや、前にも言ったが動物的直感は大事だ」


「そうだね、それくらい慎重な方が良いと思う、しかも過敏になっているっていうのは、それだけ集中しているって事でもあるから当たってる可能性もあるよ、例え気のせいだったとしてもそれで何か問題があるわけじゃないから慎重な方が良い」


「今はどうだ?」


「今は・・・ないね・・・うん、ない」


「よし、じゃあとりあえず昼食の準備をしようか、何か起きるかもしれないから簡単なものにするけど我慢してね」


「「了解」」


 そういってムルギンは小さな焚火を作って火をおこし、イモモチを取り出して棒に突き刺して焼きイモモチを作った。そして朝食べたサラミソーセージを薄くスライスして焼きイモモチの上に置いた。


「いや、これ全然美味しいんだけど!」


「ウンマイ!ウンマイ!」


 シャルは頷くと同時にウマイと言葉を短縮して言っていた。


「あっそう?それは良かった、実際アタシこれ結構好きなんだよね、樹海の中で食事支度が面倒臭い時はいつもこれを食べてるんだ」


 即席で作った割にはかなり美味しいサラミソーセージ載せ焼きイモモチを食べていると、ごくわずかに視線を感じたが、殺意や害意は全く感じなく、恐らくかなり離れた所から見られていると感じた。


 シャルもムルギンも全く感じていないようで、私の直感ではその視線は脅威対象ではないと告げていたので、今はまだ二人を不安がらせる必要はないだろうと思って黙っていた。


 ところが私はシャルのモルサール八式を甘く見ていた。


「かなたよ、オヌシ、視線を感じてるな」


「うっ!」


「でもアタイらに教えないというのは、かなたが危険はないと判断してアタイらを不安にさせないためとみた」


「えぇー!?凄いねシャル!そこまで見抜いちゃうんだ!徒弟関係ってそこまで分かり合える程のものなのか!凄いなぁ・・・」


「アタイは人間相手なら結構鋭いぞ、その点かなたは実に分かりやすい、すぐに顔や態度に出るんだ」


「うっ・・・その通りだよ、でもかなり遠いところから見られてるし、敵意は全く感じない」


 さすが天才剣士、極論すれば相手を殺すために様々な技術を身につけているのだ、最近は一緒に楽しい毎日を送っていたので、すっかりその点を失念していた・・・

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