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タナカカナタのカタナ  作者: キクメン


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第89話

 翌日もムルギンの家に行って、現地で様々なサバイバル技術を学んだ。


「一つ提案があるんだけど、君等が利用している宿の宿泊期限が過ぎたら、一緒に大樹海に入って遺跡か洞窟を発見にしに行かないかい?」


「「行く!」」


「アハハ、相変わらず息ピッタリで、即答だね」


 これは願ってもない嬉しい提案で、むしろこちらがお金を払ってでもお願いしたい事だった。


 最初に5泊分の宿代を支払っていたので、その間は毎日ムルギンの家に通って近くの比較的安全な密林で色々と学び、その後で大樹海へと入って行くということになった。


 そうして学習と訓練の日々はあっという間に過ぎて、いよいよムルギンと一緒に大樹海に入って遺跡か洞窟の発見の探検に行く日となった。


「やぁおはよう!今日から楽しい探検の始まりだね!」


「おはようムルギン!楽しみで昨日はなかなか眠れなかったぞ!」


 確かにシャルは寝る前までとてもワクワクしていて色々とおしゃべりをしていたが、ベッドに横になった途端いつも通りすぐにスヤスヤ寝た。


「おはよう、僕も凄く楽しみだ、今日からよろしく頼むね」


「うん!任せておいて!それに二人なら大丈夫!こっちの方こそ二人がいてくれて頼もしいよ!」


 既に昨日のうちに大樹海に入るために必要な装備はしっかり揃えて荷造りしており、大樹海でまだ未知の場所で遺跡か洞窟がありそうな場所についてもムルギンのこれまでの経験によって幾つか候補を洗い出していたので私達はすぐに出発した。


 密林の中を進むという事で、未知の領域までは3日はかかるようで、最初のうちはまだ獣道のような細い踏みしめられた道があるが、それもすぐになくなり進むのが困難な場所も多くなるそうだった。


 ところが・・・


バサッ!バサッ!


「かなた!あれ斬ってくれ!」


「了解ッ!」


バツンッ!


「たーおれーるぞー!」


ギギギギ・・・ドスンッ!ギャーギャー!


「・・・君達・・・凄いね・・・」


 私とシャルは剣と刀を振り回して、行く手を阻む草やツタを薙ぎ払い、どうしてもやむを得ない場合は木も切り倒して進んだ。木に止まっていた鳥にはちょっと迷惑な事をした。


 ムルギンは方位磁石を取り出して、地図を確認して順調順調と頷いて満足している様子だった。


 方位磁石は現代のコンパスに近い見た目で、そこまでこの世界の文明は発展しているのかと感心し、さらに地図についてもこれまで長年ムルギンが歩いて調査した記録が記されたとても価値のある貴重な地図でかなり詳細で正確なものだった。


 さらに数時間後・・・


「それじゃしっかり掴まって、いいかい?」


「いいよ!」


ピョン!ピョン!ピョン!


「わぁ!凄い!崖をあっという間に登りきっちゃったよ!」


 私はムルギンを背負ったまま20メートル程の崖を飛び跳ねて駆けあがり、その後ロープを落としてシャルはそれを掴んで途中まではジャンプして登ってきて、足場まで届かない所からはロープを使ってまるで垂直に歩いているかのように登ってきた。


「いやもう君達には驚かされるばかりだ、今の難所を迂回して越えるだけでも半日はかかると思っていたのにここまで10分もかかってないよ、これは大幅に予定時間を変更しなくちゃ」


 そうして途中お昼休みを挟んで、ひたすら密林の中を進んで行き、当初3日はかかるだろうと考えていた未知の領域の手前まで到着した。


「まだ夕方まで大分余裕があるね、先に進むかここでもう野営準備しようか・・・」


「まだ大丈夫じゃないか?南の地は日が沈むまで大分時間があるし」


「そうなんだけど、日の光があまり入ってこない程に深い密林の場所に行き当ったら結構大変なんだよね、ランプを付けたら途端に虫が集まってくるから面倒なんだ」


「うっ・・・それは困るな」


「うん、それは困る」


「あっ、待てよ、深い密林だったらかなたに木を切ってもらって場所を確保すればいいのか」


「そうだね!いくらでも切るよ!」


「よし!それなら先に進もう!」


 私達はいよいよ未知の領域へと足を踏み入れ、ムルギンもここから先は自分も知らないので少し慎重に進むと言って進んだ。


 ムルギンは10分程進んでは立ち止まり、方位磁石でしっかり確認して地図やメモに色々と書き込んでいき、そんなムルギンを見てシャルも私もさすがだと感心して見守っていた。


 1時間程進んだところで少し開けた場所を見つけたので、今日はここで野営することにした。


 私の腕を見込んで簡易的な土台を作ろうという事になり、私は張り切ってそこらの木を切りあっという間に丸太を作り、沢山生えてるツタで縛ってロの字の形にした丸太を3段程重ね、その上に丸太を並べて床を作ってから太目の枝で骨組みを作り、大きくて丈夫な布を取り出して骨組みを覆って簡易テントハウスが完成した。また、内部には細かい網目の蚊帳を吊り下げて寝る時はその中に入るようだった。


 その後虫よけの香を焚きながら食事の支度をし、山菜とキノコと干し肉と米を入れて雑炊を作り、最後に卵を入れて溶き卵にして薬味をふりかけて完成した。


「「「いただきまぁす!」」」


ハフハフ・・・モグモグ・・・ゴクン


「ハァ~・・・味が染みてて身体にも染みるねぇ」


「うまいこと言うなかなた、でも確かに身体が癒される優しい味だ・・・」


「うん、生薬の効果がある体に良い山菜を入れているからね、肉体疲労にも良く効くと思うよ」


「さすがムルギン、ムルギンと一緒にいたら長生きしそうだ」


「いや~それが、その逆なんだよね」


「えっ!?どういう事?」


「ウチの両親はアタシが小さい頃に大樹海で行方不明になったし、爺ちゃんもうっかり毒ヘビに噛まれて死んじゃったんだ、確かに事故さえなければ長生きしてたかも知れないけど、大樹海はうっかりミスで簡単に死んじゃう危険な場所なんだよ」


「それはまたなんとも・・・」


「ムルギンは何でそんなヤバイ所にいるんだ?」


「そうだなぁ・・・アタイは小さい頃から大樹海で育っていたから、ここのヤバさが逆に楽しいんだよね、毎日色んな発見があるし危険で気持ち悪い所も却って面白くなってくるんだよね、ある意味樹海中毒みたいなもんだ、恐らく両親も爺ちゃんもウチの家計は皆樹海に憑りつかれている一族なのかも知れないね、スナギンとか普通の若者はこんな田舎じゃなくて都会に憧れて村を出ていくからね」


「なんか、アタイ少しだけ分かるような気がする」


「探検家の中にもそうしてここの魅力に憑りつかれた人達がいるのかな?」


「ほとんどが一攫千金を求めての事だと思うけど、中には樹海に魅せられた人もいるだろうね」


「う~ん・・・僕はやっぱり毛虫や毒虫がいるから魅了されないだろうなぁ・・・」


「ハハハ、慣れの問題だけど、生理的に受け付けない場合はなかなか慣れないだろうねぇ」


 その後全員蚊帳の中に入って眠る事にしたが、靴は履いたままで寝た。その理由は靴の中にサソリやムカデが入ってくるかもしれないからだと聞いて、やっぱり私はとてもじゃないけど樹海に慣れて魅了される事は決してないだろうと思った。


 そんな話を聞かされた後なので、虫が気になってソワソワしてなかなか寝付けないだろうと思っていたのだが、いつも通り刀を抱いて横になった途端すぐに意識は遠のいていった。

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