第86話
翌朝、早速朝市で何か美味しい食材を調達しに行こうということで通りを歩いていると、既に魚や野菜などの戦利品をゲットした人と、カゴを持ってこれから朝市に向かうらしい人が目につき、その人達と一緒に行けば良いことが分かった。
ヌルムワカ村は大きな町ではないので5分程度で朝市に到着し、昨夜はあまりみかけなかった村人達で賑わっていた。
ここのところ魚続きだったので肉を食べたいと思っていたらシャルも同じことを考えていたようで、肉を売っているところに近づくと、薄いピンク色の綺麗な何かの足と思われる肉が売られており、早速それを二つと何かの卵を一緒に買ってみた。
他には小麦粉のような何かの粉とトマトやキュウリに似た野菜と、塩とコショウとスパイスを数種類と、何かの草や果物などが浸けられたエキスを炭酸水で割った飲み物を小さな樽ごと買って戻った。
コテージに戻ると、わりと利用客がいることが分かり、他のコテージからは料理をしていると思われる音や煙や匂いが出ていた。
いったん食材を部屋に置いてから、宿の窓口に行ってフライパンや鍋や調理用ナイフにお皿などのレンタル料を払って一通り調理器具と食器を調達し、早速シャルと一緒に朝ご飯の支度を開始した。
何かの粉を同じく何かの卵で溶いて生地を作ってフライパンで焼き、何かの足の肉は塩コショウとスパイスをまぶして鉄の串に刺して直に焼いた。
「シャル凄いね、凄く手際が良いよ」
「これまではたまにマリーと一緒に作ってたけど、婆ちゃんの所に来てからは毎日教えてもらっていたんだ、他にやることもなくてヒマだったし、自分で作るのは楽しいし美味しいんだ、かなたもなかなか上手だな」
「いや~僕は料理は多分全然出来ないと思うけど、前に焼き魚を作って食べた事があって、焼くだけなら何とか出来てるってところだね」
そうしてシャルと一緒に初めて料理を作った。なんというかそれだけでも凄く楽しくて嬉しい気持ちになったが、その後二人で作った料理を一緒に食べるともっと楽しくて嬉しい気持ちになった。
「うわ!このパン美味しいね!」
実際にはパンというよりもナンに近い見た目と食感と味だが、敢えてパンと言う事にした。
「自分で作って言うのもなんだがこれはウマイ!普通の小麦じゃないな、何の粉だろう?とうもろこしっぽい味も混ざってる気がする」
「この足の肉も美味しい!パリパリの皮が最高!何の鳥なんだろう」
「やっ!良い事思いついたぞ!この肉をほぐして、パンに入れて巻いて・・・モグモグ・・・ウメェーッ!」
「おおー!・・・あっそうだ!さらに肉と一緒に野菜を薄くスライスして挟んで食べれば・・・モグモグ・・・ウメェーーーッ!!」
「「アハハハハハ!」」
こうして朝からご機嫌な気分になって、探検家組合へと向かった。小さな村なので通りを歩いてすぐの広場に公共施設が集まっているので、探し歩くこともなくすぐにお目当ての施設を見つけた。
探検家組合支部は小さな村のわりには結構大きな建物で、郵便局などの施設よりも大きく、村役場とほぼ同等の大きさだった。
早速中に入ってみると、同業者風の人達が結構いることに驚き、掲示板の数も多くて探検家達は内容をよく吟味している様子で、さらに窓口も3つあってどの列も4~5人程並んでおり、小さな村とは思えない程忙しそうだった。
私達も並んで待ち、私達の順番になったので私はライセンス証を見せると職員の人はおお!と驚き、続いてスナギンからの紹介状を見せたところ、さらに職員はおお!と驚きの声をあげた。
「スナギンのお知り合いの方でしたか!」
「はい、一緒に仕事をしました」
「私はスナギンとは幼なじみで小さい頃は良く一緒に遊んでいたんです」
「あっ、そうなんですね」
「よければ今度お話しをお聞かせ下さい、さてムルギンさんですが、丁度良い事に今日はここに来て薬草や狩猟用の毒などを売りに来てくれるはずです、来たらお知らせしますので、よろしければ掲示板を見たり資料室でこの辺りの地図や動植物などの資料をご覧になってお待ちください」
「それは良かった、そうします」
なんとタイミングの良い事に向こうの方からこちらに来るようなので、シャルと一緒にここで待つことにして、とりあえず資料室に行ってこの辺り一帯の地図を見に行くことにした。
廊下に資料室と書かれた矢印の通り進んで、開いたままの扉を入ると結構広い部屋があり、壁一面には大きな地図が描かれていた。
「ホウ!こりゃ凄いのう!まさに大樹海だ!」
「ホントだ!あっ!この印は遺跡だ、それに洞窟の印もある、結構沢山あるね!」
「ウム、それに不明って書かれた場所も沢山あるし危険と書かれた場所はもっと沢山ある、こりゃ探検する甲斐があるぞ!」
ワクワクするシャルに感化されて私も大いにこれからの探検にワクワクしていたのだが、それは徐々にフェードアウトしていくことになった。
ペラ・・・
「うへぇ・・・」
「こりゃダメだ、アタイこういう毛むくじゃらはダメなんだ、いかん身体が痒くなってきた」
「僕はこのゾルゾルっていう足がいっぱいあるのがダメなんだ、僕の所じゃムカデっていうんだけど、コレマジムリ」
ペラ・・・
「「ウエェ~・・・」」
二人で見ていたのは危険物図鑑というもので、最初は毒植物に関する図解説明だったのだが、今見ているのは毒虫に関するページだった。そこには毛虫にムカデにヤスデにダニにアブにガなど、とても直視出来ない程におぞましい毒虫たちのオンパレードだった。しかしこれから挑む密林には避けて通れぬ重要必要知識なだけに我慢して勉強していたのであった。
「なんか正直行きたくなくなってきた・・・」
「ウム、こんなのがウジャウジャいるところに行くのはかなり精神的にクルものがあるのう・・・こればかりは剣の腕が良くてもどうにもならん」
「どれどれ・・・ああ、これか、これはコケの多い所を避ければ大丈夫だよ、あとこっちのはシェルブの葉をすりつぶして靴に塗っておけば足から這いあがってくるのを防げるんだ」
「やっ!オヌシ凄いな!キモイ虫に気を取られていたとはいえ、気配を感じなかったぞ!」
「ホントだ!・・・って、もしかしてあなたがムルギンさんですか?」
「ああ、アタシがムルギンだ、スナギンとは従姉なんだ」
「初めまして、田中かなたと言います」
「アタイはシャル・トゥルム・ウォーデルリンヌ、よろしくムルギン!」
「えっ!ウォーデルリンヌって、もしかして歌姫テリーズの親戚だったりするのかい?」
「そうだ、テリーズはおか、叔母さんだ!」
「わぁ!凄い!どおりで凄い美人なはずだ、とても探検家をするような顔じゃないよ君!・・・ってシャルって呼んでもいいかい?」
「うん!その方がいい!よろしくムルギン!」
「よろしくシャル!」
そうして現れたのはシャル程ではないが、それでも十分美人で少し年上に見える女性で、グレーのショートヘアーに一重まぶたの切れ長の目にすらりとした鼻筋でクールな印象を受けた。
背は私より少しだけ低くスリムな体型で、手足も長いのでもしも現実世界でファッションモデルとかやっていたらかなりのスーパーモデルになっていたことだろう。
しかしこの人もスナギンと同じで腕や鎖骨あたりから見える肌には痣のように変色した跡があった。




