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タナカカナタのカタナ  作者: キクメン


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第85話

 翌朝、シャルはかなり早起きして張り切っていたようで、私の部屋まで来て「かなた!起きたか!」と嬉しそうに言ってきた。もちろん私も目を覚ましており、ちょうど顔を洗いに行くところだった。


 それから朝ご飯を食べて、シャルは祖父母に行ってくると元気に挨拶し、祖父母からも体に気を付けて無事帰っておいでと言われて家を出た。


「お爺さん達は寂しくないかな?」


「大丈夫だ!一か月以上一緒にいたし、多分この後しばらくしたらマリーとお母ちゃんも来ると思う」


「ヴォルリッヒさんとヴォルタークさんは来ないのかい?」


「二人は年内は色々忙しいだろうと思う」


「なるほど、確かにそうだねきっと」


 それから2時間程二人揃ってモルサール流歩方術で進んで行った。当然のことながら道行く人達は驚いた表情で私達を見ていた。


「今はまだ大丈夫だけど、さすがに一日中歩くのは今のアタイの体力だと厳しいかも、でも出来れば早く毒名人に会って色々教えてもらいたいし、遺跡発見の探検にも行きたい、ううむ・・・もっと体力をつけなければ・・・」


「それじゃあボクがおんぶしていこうか?」


「おお!さすがかなた!そういえば前に大きなそりにグマンの王を載せてずっと一人で引っ張ってきたんだったな」


「うん、魔の森では一日中休みなく歩いてたよ」


「じゃあ頼む、やっ、待てよ、おんぶよりも肩車の方がいいな!」


「そうだね、その方がボクも両手が空くから動きやすいかも」


「よし!頼む!」


 そうして私は初めてシャルを肩車した、シャルはそれなりに大きいリュックも背負っていたが私にとっては全く重くはなかった。まぁ多分に精神的な高揚感が働いていたのかも知れないが・・・


「おお!絶景かな絶景かな!見晴らしが良いぞ!」


 シャルがズボンを履いていて良かった、それでなくとも柔らかいお尻と太ももがじかに触れているので私の心は穏やかではないのだ。


「おまけにモルサール流歩方術だから、上下の揺れがほとんどなくて、馬よりも快適だぞ!」


 私は別の意味で快適だった。


 そうしてますます道を行く人達から驚きの目で見られながら私達は南へと向かった。


 やがてお昼になり、丁度良い所に小さな集落があったのでそこに立ち寄り、食事処を見つけてなかなかに美味しいピリ辛つけ麺を食べて満足した後で移動を再開した。


 シャルは十分休息したしエナジーチャージもしたということで自らの足で歩き始め、その後1回だけ小休止したが今日泊る村に到着するまでのおよそ4時間近くは自力で歩行した。


 二人ともお腹がグゥグゥ鳴り止まず、先に宿屋でチェックインした時も受付の人に心配される程で、安くて美味しくてボリュームのある食事処を教えてもらい、すぐにその店に向かってじゃんじゃん料理を頼んだ。


「おばちゃん!えびそば追加!」


「自分は五目炒めご飯追加!あと煮魚も!」


「あんれま!二人ともすんごい大食漢だこと!」


 そうして二人ともたらふく食べて大満足になったが、それでも代金は5千ネシアン程度という破格の安さだった。


 その後帰り道に公衆浴場を見つけたので、窓口でタオルや石鹸は持参が必要かと聞いたところ、お金を払えば貸してくれるとの事だったので、その分を払ってそのまま入浴することにした。


 一日中歩いた汗と疲れを流してとても心地良くなり、しかもさらにその後公衆浴場に隣接している店で甘味処があり、待望のフルーツドッサリかき氷があったので、当然それを頼んで食べたところ抜群に美味しくてシャルと二人で大感激した。


「これまで行く先々でフルーツたっぷりのかき氷を食べろとおすすめされてきたけど、ようやくその意味が分かったよ、これは最高だ!」


「ウマイ!ここのかき氷は凄くウマイぞ!風呂上りだから余計ウマイ!どうするかなた?おかわりいっちゃうか?」


「いっちゃう!いっちゃう!今度はこっちのやつを頼もうと思う!」


「じゃアタイはこっちにする!半分こしよう!」


「賛成賛成!大賛成!」


「アハハハハハ!」


 そうして火照った身体を美味しいフルーツかき氷で冷まし、二人とも大満足で最高の気分で宿へと戻った。


 宿は別々の部屋ではなく二人部屋を頼んだが、前回の大男討伐に向かう途中の宿泊である程度は慣れていたので、私の方は以前程緊張することはなかったが、それでもまだ少しはドキドキした。


「あ~楽しい、実に最高の気分だ、かなたありがとう、かなたに会えて本当に良かった」


「こっちこそありがとう、僕も最高に楽しいよ」


「おっといかん、凄く眠くなってきた」


「僕もだ、もう寝よう」


「ウン・・・おやす・・・スウスウ・・・」


 シャルはまるで電池が切れた人形のように眠り、凄く可愛くて綺麗な寝顔をいつまでも見ていたいところだが、私の方も強烈な睡魔には抗えず、ロウソクの灯を消してすぐに寝た。


 翌朝、シャルは今日も元気に起きて、私もそんなシャルを見て実に爽やかな朝を迎えた。すぐに支度を整えてチェックアウトし、朝市で賑わっている場所に行くとちゃんとした食事処はなかったが、屋台があったので近づくと実にたまらない美味しそうな香りがしてきて、早速一つしかないメニューの日替り定食を注文した。


「これは朝から最高のごちそうだぞ!」


「ウン、この雑炊凄く美味しいね!魚介スープに具も沢山入ってて最高!」


 美味しい食事もシャルと一緒だとさらに一層美味しくてとても幸せな気分にもなり、その後の移動も実に足取りが軽くなった。


 今日のシャルは午前中に頑張って歩き、午後は行ける所まで自分の足で頑張ってから、目的の村ヌルムワカまでの残りの距離を私が肩車して進んだ。さすが天才剣士、大したもんだと大いに感心した。


 そうして馬車だと5日はかかるという目的の村に自らの足でわずか2日で到着した。


 南のエリアの中でもかなり南の端に近いヌルムワカ村はほとんどが高床式の建物になっていた。そのため巨大な建築物は建てられないようで、ほぼ平屋建てとなっていた。面白い事に宿屋も大きな平屋建ての本館の他に小さなコテージのような小屋が建ち並んでいた。


 当然面白そうなので小さな二人用のコテージを借りることにした。とりあえず5日分を前払いで支払ったが5日でちょうど1万ネシアンという破格の安さだったので清潔さや快適さの面で少し不安だったが、入室してみると思っていた以上に綺麗だったのでホッと安心した。


 すぐにトイレなどの水回りを確認したところ、なんとしっかり水洗トイレになっていて、トイレのフタをあけてみると穴の下には下水路があって常に水が流れていた。そしてそれはシャワーやキッチンにも当てはまり、しっかりとした排水設備が整っているようだった。


 恐らくこの地域は高温多湿でスコールのような雨もよく降るようで、各小屋の天井には雨を溜める大きな容器が取り付けられており、その雨水を利用しているのだった。


 その後夕食を食べに行ってきたが、コテージにはキッチンもついているので、何か美味しそうな食材を調達して自分達で料理するのもいいかもしれないとシャルは言い、私は大いに賛成した。

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