第83話
どうやらシャルは毎日のように探検家組合に通って、探検家になるための様々なレクチャーを受けていたようで、今日この日が来ることも事前に説明していたようだった。
職員からの評判も良く、真面目に勉強していて、体力測定の結果も相当高いレベルなので、すぐにでもライセンスを与えることが出来るのだが、それでも本人の要望で凄腕探検家のタナカさんの元で弟子として現場で直に学びたいと言っていたのだと教えてもらった。
実に嬉しい限りではあるが、実際のところ私の探検家としての経験はすこぶる乏しいものなので、どうにも後ろめたい気持ちが拭えなかった。
ともあれ、全く問題なくすんなりとシャルはライセンスを取得することが出来た。しかもいきなり7級というかなりの好待遇だった。
その後金属片に刻まれたライセンス証を渡され、続けて見習い画家による肖像画を描かれて、晴れて正式な探検家シャルが誕生した。ちなみに見習い画家が描いたとはいえ、まるで写真のような精巧な肖像画だった。
また、ライセンス証に刻まれたシャルのフルネームはシャル・トゥルム・ウォーデルリンヌとなっており、これはウォーデルリンヌ家の3番目の正式な血縁者という意味を現わしているのだそうだ。
こうして昼前には無事ライセンスを取得出来たので、お祝いのために魚屋に行って大きなカニを2匹買ってから家に戻り、早速シャルは祖父母に嬉しい報告を行った。
二人とも大喜びで、早速今日も昼間から宴会ムードになり、鍋にたっぷりお湯を沸かしてカニ三昧パーティーとなったが、この後シャルはここからそう遠くない昔の遺跡がある森林公園に行って、薬草や食べられるキノコや山菜を見分ける練習に行くのだと言ってお酒は控えるとのことだった。
それはさておき早速カニしゃぶを楽しもうということで大きなカニを食べたのだが、まずはそのまま食べてみたところ、ただ塩水で茹でただけなのに何故こんなにも美味しいのかという程に美味しくて、さらにウォーデルリンヌ家秘伝のタレに付けて食べると感涙モノの美味しさだった。
太い足から少しだけ飛び出てる肉を歯で挟んでスーッと甲羅を引っ張ると肉厚のカニの肉が綺麗にとれて、赤と白の霜降り模様がとても美しく、たまらずかぶりつくと旨味と甘味と塩味が脳天直撃する程のたまらない美味しさだった。
そしてハサミの部分がこれまた絶品で、先端が変わった形の鉄製の棒を使って奥の肉をこそぎ落として食べるとこれまた旨味がギュッ濃縮された味で、ひたすら棒を差し込んで肉をかき集めて食べた。
残りの大きな甲羅とカニみそは、夕食にカニ甲羅揚げを作るのに使うとのことで、こちらも大いに楽しみだった。
そうしてお腹も一杯になって大満足して、シャルと私はそれほど遠くない森林公園へと腹ごなしも兼ねてゆっくりと徒歩で向かう事にした。山菜やキノコが採れればそれもカニ甲羅揚げの具に使うとのことでますますシャルは張り切っていた。
家を出てから30分程はゆっくり普通の速度で歩いていき、お腹の方も落ち着いたようなのを確認してからモルサール流歩方術に切り替えて速度をあげて歩いた。
1時間程歩いた辺りで森林公園に到着し、入り口にある大きな看板には全体図が描かれていた。ここは古い遺跡もあるということで、結構観光客も来るようで、公園内には屋台も出ているそうだ。
私は初めてきたのでまずは遺跡を見てみたいということで、シャルが先導して案内してくれた。
「ここはまだマリーが小さかった頃に家族で遊びに来た事があるんだ、兄ちゃんと遺跡探検ごっこして遊んだ記憶があるけど、まさか本物の探検家になる日が来るとは思わなかった」
「そうなんだ」
「面白い色や形のキノコを一杯採ったんだけど、爺ちゃんと婆ちゃんに見せたらほとんど全部毒キノコだって言われたのを覚えてる」
「アハハハハハ!」
「だから今日は間違えないで美味しいキノコや山菜とか薬草を採って、あの時と違ってちゃんと探検家になったところを二人に見せたいぞ」
「分かった、協力するよ」
といっても自分はかなり自信がないが・・・
遺跡までは観光客のために歩きやすい道路が整備されており、途中に池の上を進めるように橋も作られていて、大きなハスのような植物が浮かんでいるのを見ながら進んだ。
「まだ小さかった頃はあの上に乗っても浮いたままだったのを覚えてる、兄ちゃんとピョンピョン跳んで向こう岸までどっちが早く着くか競争したら、兄ちゃんが池に落っこちて大笑いした記憶がある」
「アハハハハ!それは面白いね」
「今でも出来るかな?それっ!」
「わっ!シャル!?」
「よっ!はっ!とっ!沈む前に飛び移れば行けそうだ!」
「ようし!なら僕も!」
ピョン!ピョン!ピョン!ピョン!
「わっ!スゲェなかなた!カエルみたいだ!」
そうして二人でハスの上を飛んで対岸まで進んでいると、観光客の人が驚きながらこちらを見て、それを見て真似をした若いあんちゃんが見事に池ポチャして仲間達に笑われていた。
「うわぁ、凄いねこの遺跡、一体どれくらい昔からある遺跡なんだろう・・・」
「千年ぐらい前からあるみたいだぞ」
私の目の前に現れたのはあちこち風化してツタが絡みついていたが、それでもしっかりと形が残っている石造りの建物だった。
「元は大分カラフルで、ピカピカの装飾品もついていたみたいだって教えてもらった事がある」
「そうなんだ・・・一体何の建物なんだろう?」
「寺院だったって聞いてる、大昔は寺がとても富と権力を持っていたみたいだぞ」
「なるほど、そうなんだ」
柱などを良く見ると大分消えかかってはいるが、かなり凝った彫刻の跡が残っていて、確かにお金がかかっている造りの建築物なのが分かった。
「それにしてもよく残っていたねぇ」
「石造りだったからっていうのもあるけど、この辺りは昔から豊かな土地で、人も穏やかな性格の人が多くてあまり大きな戦争がなかったからじゃないかって言われてる、南の地域でも中央部から北の方は他国からの侵略があったからあまり古い建物は残っていないんだ」
「なるほど、そうなんだね」
「組合の人に教えてもらったんだけど、まだ知られていない昔の遺跡とか発見したらかなりの報酬と評価をもらえるようだぞ」
「へぇそうなんだ」
「ここからさらに南の地域は密林だらけで、危険も多いからまだまだ未開の遺跡とかいっぱいあって、多くの探検家が一獲千金を求めて行くらしいんだけど、結構な割合で行方不明になってるらしいぞ」
「なんと・・・」
「アタイも挑んでみたいけど、どうにも虫が苦手でのう・・・」
「同感同感、僕も虫はかなり苦手なんだ」
「どうする?虫は嫌だけど、遺跡発見の探検は面白そうだと思うんだ」
「そうだね・・・あ、そうだ、遺跡発見するしないは置いといて、ここからさらに南のヌルムワカっていう小さな村に行きたいんだ」
「どうしてだ?」
「うん、そこには毒虫とか毒蛇とか毒キノコとかに詳しい毒名人のムルギンっていう人がいて、その人に色々と教わるといいって勧められたんだ、紹介状も書いてもらったんだよ」
「ホウ!それはいいな!是非行って色々教えてもらおう!うまくいけばその人と一緒に遺跡発見の探検に行けるかもしれないぞ!」
「あっ!それは名案だね!その人がいれば虫が苦手な僕等でもなんとかなるかも知れないね」
「よし決まった!アタイの最初の任務は遺跡発見にしよう!」
「了解!」
こうして話の流れで次は遺跡発見の探検が始まろうとしていたのであった。




