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タナカカナタのカタナ  作者: キクメン


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第81話

「すいません!お待ちください!」


「・・・うんっ?えっ?っと、私ですか?」


「はい!あのっ!あなたはタナカさんですか?」


「!?・・・はい、私は田中です」


「良かった!タナカさんがこの町に来るのをお待ちしておりました、ようこそ我が町へ!」


「えぇと・・・もしかしてテリーズさんの実家の方から連絡がいっていたとかですか?」


「はい、その通りです!ウォーデルリンヌ夫妻から凄い探検家の戦士で魔の森から唯一生きて帰って来たタナカさんがいらっしゃると聞いておりました、親族で将来有望なシャルさんの師になるためにわざわざ東の果ての地より参られると!」


 言ってる事は間違っていないが、どうにもくすぐったい感じがする。ちなみに私の事は黒髪ですぐに気付いたようだった。ここ南の地域でも黒髪の人はほとんどいなかったのだ。


「お会いできて光栄です!すぐに馬車をご用意いたしますのでお待ちいただけますか?」


「あ、いえ、結構です、モルサール流歩方術で行った方が早いので自分の足で行きます」


「なんと!さすが高ランク戦士ですね!ではこれをお持ちください!」


 渡されたのは先程見た町の地図の紙版で、各々の家の持ち主の名前が書かれていた。さらに探検家組合や戦士組合などの建物が記載された別の地図もあり、面白い事に洞窟や遺跡の場所が描かれた周辺地図もあった。


「あっ!これはとても良い物ですね!有難うございます」


「どういたしまして、ではどうかシャルさんをよろしくお願いします、歌姫テリーズさんに続くこの町のスター誕生を心から期待しております!」


「分かりました、お任せください」


 早速地図を頼りに住宅地エリアへと向かおうと思ったが、そういえば手土産などの品を全く持っていないことに気付き、何か新鮮な魚でも買って持っていこうと思って商業エリアに方向転換した。


 昼近い時間帯なので朝市は終わっているので獲れたての新鮮な魚はいが、その代わり三枚におろされた魚や干して軽く下味が付けられた魚など、すぐに調理できる状態の魚が魚屋で売られていた。


 私は直感に従って一番値段の高い大きな切り身を三枚買う事にした。


 ここ南の地ネシアンポリではガーランド通貨ではなく、ネシアン通貨が使用されており、相場はガーランド通貨よりも若干高かった。


 そしてこの三枚の魚は一枚4千ネシアンということで、他の魚に比べて10倍近く高かったが、三枚全部買うといったらおまけして1万ネシアンにしてくれたが、銀貨1枚を渡したら喜んでさらにエビを3匹おまけしてくれた。それから恐らく防腐効果がありそうなかなり大きな葉っぱに丁寧に包んでくれて紐で結んで持ちやすくしてくれた。


 手土産も手に入れたので改めて住宅地エリアへと向かって移動していると、何人かの子供に「あっ!モルサールりゅうほほうじゅつだ!」と言われ、そのうち1人2人が真似してついてきたが「わっ!凄く速い!すげぇ!」と言って嬉しそうに離脱していった。もしかしたらシャルが教えてたりして。


 そうして歩いていると交差点の左側の遠くから、同じようにモルサール流歩方術で歩いている人物を見つけた。その人物は本を読みながら歩いており、相当な上級者で上半身の上下動はまるでなく、道行く人や障害物を手前から避けて進んでいた。


「シャル!」


「ブツブツなるほど・・・ウン?・・・ッ!」


「かなた!かなたか!待っておったぞ!でも思ったより大分早かったな、早馬で来たのか?」


「いや、ずっと自分の足でモルサール流歩方術でやって来たよ、馬は休ませなくちゃいけないから結局自分の足で来た方が早いんだ」


「人間も馬以上に休みが必要だと思うが・・・まぁでもかなたは普通と違うからな、さすがワシ、じゃないアタイの師匠だ!アタイも鍛えて師匠みたいな超人探検家にならないとな!」


「シャルも今のままでも十分超人だよ」


「いや~上には上がいくらでもおるからなぁ・・・クンクン・・・うん?それは魚か?大きいな!」


「うん、一番高くて美味しそうなのを買ってきた」


「ヒャッホウ!すぐウチに帰って婆ちゃんに料理してもらおう!婆ちゃんの料理は絶品だぞ!」


「やった!じゃあ急いで行こう!」


「よし!」


 二人はモルサール流歩方術をやめてダッシュに切り替えて走った。途中から競争になり少し本気を出して加速してシャル追い抜くと「やっぱりスゲェなかなたは!」と言って嬉しそうに笑っていた。


「アハハ!アハハ!・・・ハァハァ、ゼェゼェ、こんなに息を荒げて走ったのは久しぶりだ・・・スゥー・・・フゥーーー」


「おぉー!これは随分立派な家だね!」


「うむ、母ちゃんは大スターの歌姫だったからな、そりゃもう大分儲けてたからそのお金で親孝行して豪邸を建てたんだ」


「はぁ~なるほどそれは立派な親孝行だねぇ」


「まぁ入ってくれ」


「うん」


 シャルの後に続いて大きな屋敷へと入った。


「ただいまぁ!師匠のたなかかなた先生が来てくれたぞ!」


「・・・」


「まぁ上がってくれ、爺ちゃん婆ちゃんだから出てくるまで何秒かかかるんだ」


「ウ、ウン」


 そうしてシャルは靴を脱ぎ、私もブーツを脱いで二人とも裸足になってあがった。南のエリアに来てからは宿も土足のままで良いところから徐々に靴を脱ぐところに変わっていき、南の中心都市付近からはほとんど土足禁止となっていた。


「おかえりシャルや、うん?おお!来なすったか!こりゃまた随分早くにお着きになりましたなぁ!」


「ウン、師匠は凄いんだ!自分の足で馬よりも早く来たんだぞ!」


「ひゃあ!さすが凄い探検家さんじゃ!」


「初めまして、田中かなたと申します」


「あいやこりゃどうも、孫の・・・じゃない、いやタナカさんには隠さなくてもいいのか、孫のシャルをよろしくどうぞお願いします、婆さん!おい婆さんや!」


「はいはい・・・あら!?あらあらまぁまぁ!このお方がタナカさんかい!?」


「はい初めまして、田中かなたです、よろしくお願いします、あっと・・・これお土産です」


「中には良い魚が入ってるぞ!婆ちゃん早速料理してくれ!アタイも手伝う!」


「まぁまぁ、これはどうもご丁寧に有難うございます、どれどれ・・・まぁ!これはアッパレですね!こんな良い魚を有難うございます!」


「この魚アッパレっていうのか?」


「そうよ、大昔の王様があまりの美味しさに大いに喜んで、天晴と言ったのが始まりなのよ」


「やった!それは楽しみだ!早速台所に行こう!」


「あらあらまぁまぁアハハハハ」


「アハハ!アハハ!」


 なんと癒される孫と祖母の光景だ・・・と思っているとまさに私の隣にいた祖父の目尻も下がっていてとても嬉しそうに癒されている表情だった。


 ともあれ私はシャルのお爺さんに案内されて応接間へと移動し、これまでの道中の旅話しをした。


「タナカさん、本当に此度の一件有難う、あれ程生き生きとしたシャルの顔を見れてワシらは本当に嬉しく思う、シャルがタナカさんの話しをする時はとても楽しそうじゃった、こうして今あなたに会って話しを聞いてよく分かった、本当に有難う、そしてどうかこれからシャルの事よろしくお願いします」


「いっ、いえ!こちらこそです!私もシャルさんからは多くの事を教えてもらいました、これからも色々と教わることがあると思います、私の方こそこれからよろしくお願いします!」


 と、純粋な気持ちで私は応えたが、ちょっと待てよ?・・・何だか何かの外堀が埋まっていっているような気がする・・・気のせいだろうか・・・

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