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タナカカナタのカタナ  作者: キクメン


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第74話

 それから数日が過ぎ、自分なりに洞窟の中を綺麗にして落ち葉や枯草を敷いてベッドを作って住環境を整えたが、もしも人間の身体のままだったならば相当苦労してとても快適とはいえない生活だったことだろうと思った。


 そうして数週間が過ぎた頃、活動範囲を広げて風穴から先に進んでみたところ人の足跡を発見してとても喜んだのだが、自分の今の姿を思い出して、いきなり人里に出るのは危険かも知れないと思って、様子を見る事にした。


 足跡近くの草むらに隠れてじっとして誰かが来るのを待ち続けていたが一向に誰も来る気配がなく、翌日もそのまた翌日も誰も来なかった、ちなみにその時に自分はやぶ蚊やアブやダニなどの虫に刺されない体質だと分かったそうだ。


 それでも日に一度は草むらに隠れて誰かが来るのを待っていると、一週間程後に人の気配が近づいてくるのが分かった。


 これまで人間以外の動物は何度も見かけたし、いくつかの大人しい動物とは触れ合うことも出来る程になっていたが、明らかにそうした動物とは違うというのが本能的に分かった。それもまだ全然視界に入っていない距離にも関わらず。


 そうして初めてニッキが見たこの世界の人間はまさに西洋人の見た目で、特に武装などもしていない平和的な普通の市民だった。ただ着ている服が現代のものとは大分異なり、相当昔の時代の服のように見えた。


 ニッキは耳もかなり良くなっていて、その人達が会話している声もはっきり聞こえたが、残念ながら何を話しているのかさっぱり分からなかった。


 時折笑い声も聞こえ、どうやら何かしらの仕事で来ているというよりは登山か観光で来ているのではないかとニッキは考えた。


 いきなり全身が毛で覆われた獣人が現われたら、びっくりさせたり怖がらせたりするだろうと考え、話しかけたいのを我慢してしばらく様子を見る事にした。


 その後も大体1週間おきにそうした人達が現われ、毎回違う人が訪れて眺めの良い場所でお弁当を食べて帰っていくので、やはり観光やハイキング目的で訪れている人だというのが分かった。


 夜暗くなってからその人達の足跡をたどって、人里近くまで降りてみたこともあり、その時始めて建物を見たが現代建築は一つもなく、築年数は古くはないと思われるのだが、そもそも建築材料や建築技術が何百年も前の物のように感じた。例えばガラス窓が極端に少なかったり、金属製の精巧なドアノブなどが全くない事などだ。


 ニッキはどうやってこの世界の住人達とコンタクトを取ろうか悩んでいたが、数か月過ぎても自分のような獣人は全くおらず、異世界モノによく出てくる耳の長いエルフとか背が低くてヒゲもじゃのドワーフとかトカゲ人間のようなリザードマンなども一切現れなかったので、自分はこの世界では異質な存在かもしれないと思い、ますますこちらからコンタクトを取ることをためらうようになった。


 そんなある日、小さな活発な男の子が一人森の奥に迷い込んできて、泣きながら大声をあげて両親を呼んでいた。ニッキはどうしようか悩んでいたところ、男の子は躓いて転んでしまい額などをすりむいて血が出て大声を上げて泣き出した。


 ニッキはたまらず草むらから飛び出して男の子の元へと近寄り、優しい声を掛けながら優しく頭を撫でて別の手で背中を優しく撫でた。


 男の子は驚いて錯乱することなく、泣くのをやめてヒックヒックと息をして、ニッキは男の子の怪我の様子をみたところ大事には至っていないのを確認して安堵し、近くの草を見回すと何故か薬草として使える草の葉っぱが分かったので、それをむしり取って石と石ですりつぶして男の子の擦り傷に塗り込んだ。


 さらに周辺を見回して野イチゴを見つけたのでピョンピョン跳んでいき、大きなものを選んで採って戻り男の子にアーンするように促すと、男の子は素直に口を開けて野イチゴを食べた。


「XXX!XXXX!」


 男の子の表情と声の調子から恐らく美味しかったのだと思い、ニッキはニッコリ微笑んでみせると、男の子もニッキを見て笑顔になった。


 それから男の子の手をつないで登山道まで連れて行き、有難いことに夕暮れまではまだ時間があるのでこのまま登山道を降りていけば十分人里まで辿り着くので、ニッキは男の子に登山道と地面の足跡を指さしてから下に降りる方角を指さした。


 男の子は頷いて歩き出し、ニッキはその場でしばらくの間見送っていると男の子は結構離れたあたりで振り返り、お互いに手を振って別れた。


 その後もこの半年程の間に何度か疲れて動けなくなった老人に果物や焼きキノコを与えたり、道に迷った子供を助けたりした。


 そうした経緯を経て、いつしか例のお供えの場所にお礼の野菜などが置かれるようになったそうだ。


 ニッキはいつか住人達と仲良くなって言葉を覚えて共存したいと考えていたが、それと同時に今後さらに人に知られていくことで良くない人達がやってきて、捕まえられて見せ物にされたり売り飛ばされて酷い目にあうかもしれないという思いも強くなっていき、この先どうすれば良いか悩むようになっていった。


 そんな日々を送っていた時、その想いが通じたかのように穏やかで優しそうな日本人がやってきて、自分にも分かる言葉で話しかけてきたのだった。


 その日本人は毎日私に話しかけてきて、とても素敵なお土産と、さらに驚いたことにアニメのカプモンに出てくる人気怪獣ビカジューの絵を描いた紙を置いていった。


 それでこれは悪い人じゃないと確信して、勇気を振り絞って私の前に出てきたのであった。


 そこまでのニッキの話しを聞いて、自分はかなり恵まれていたんだなぁと実感したのだが、ニッキの方ではニッキ自身の方が恵まれていると思っているようで、その理由は私が両親の顔すら思い出せない程の記憶喪失になっていることと、生前よりも遥かに健康的で肉体的に優れた体と愛らしい容姿を与えられたからだそうだ。


 他にも食べられる物や薬になりそうな植物などを見分けられる能力がある点も凄く感謝しているそうだ。


「えーと・・・そういえばニッキはステータス画面とかって見えたりするの?」


『あっそうだ!ステータス画面でタナカさんに聞きたい事がありました!』


「というと?」


『何故かタナカさんのステータス画面だけが表示されないんです』


「えっ!!っていう事はニッキにはステータス画面が表示されるの?」


『はい、ステータスを知りたいと思っただけで、画面が表示されます』


「マジで!」


『マジです!タナカさんは見えないんですか?』


「うん見えない、そういったものは全く見たことがない」


『心の中で念じてみてもダメだすか?』


「・・・ステータス、オープン!」


『・・・』


「ダメっすね」

『ダメっすか』


「・・・」

『・・・プッ!クスクス!アハハハ!』


「アハハハハハハ!」

『アハハハハハハ!』


「はぁ~・・・さて、そろそろ夜も遅いから寝ようか」


『そうですね、この世界に来て初めてちゃんとしたベッドで寝るので楽しみです』


「自分は最初はあんな天蓋付きの豪華すぎるベッドなんかで落ち着いて眠れるかなって心配したけど、これがまた凄く心地良くて横になったらすぐに眠れたよ」


『そうなんですね、でも確かにあんなベッド私もこれまで見たことがないです、それこそアニメとかマンガに出てくるような物ですものね』


 ニッキの毛も大体乾いたようなので、私達は部屋に戻って別々のベッドに入って寝ることにした。


『おやすみなさいタナカさん』

「おやすみニッキ、また明日」

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