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タナカカナタのカタナ  作者: キクメン


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第70話

 明けて翌朝、私は執務室に備えられていた紙とペンで日本地図と日本の国旗と富士山を描いて、さらにJAPAN TANAKAと書いたものと、香りの良い高級石鹸をリュックに入れた。


 さらに道中で今が旬のトウモロコシを数本とメロンに似た果物を2玉買った。ちなみに焼きとうもろこしを買ってその場で食べた。あまりにも美味しかったので2本もペロリと食べてしまった。


 それが大体2時間程前の事とはいえ、焼きとうもろこしを2本食べたにも関わらず、昨日と同じ食事処で今日は山賊焼き定食をもりもり食べて、今日も生き物調査に出かけると話した。今日はお供えに良い物を持ってきたというと、店の人は喜んでいた。


 そうして昨日と同じお供えの場所に行き、館から持ってきた紙と石鹸ととうもろこしとメロンをお供えして、これまた昨日と同様に自己紹介のセリフをゆっくり休みながら30分程言った後、また明日も来ますと言って館に戻った。


 お供え物の場所を背にして進み始めた時に、確実に何かの視線を感じたが、私は振り返らずにそのまま進んだ。


 さらに次の日、今朝も執務室で紙に何かを描こうとしてペンを手にしていたところ、気が付くと私はアニメかマンガに出てきそうな何かのキャラクターの絵を描いていた。


「あれ?コレなんだっけ・・・えーと・・・うーんと・・・わぁーなんだっけこのキャラ、世界中で大人気だったような気がするんだよなぁ・・・」


 2~3分後


「分かった!カプモン!カプモンだ!カプセルモンスターに出てくるビガジュウだ!確か稲光をビカビカ放つ怪獣だからビカジュウって名前だった!で、何でコレを描いたんだ?ってか、我ながらよく描けたな!」


 と、一人で自分にツッコミを入れつつも、せっかく描いたのでこれも一応持っていく事にした。しかもANIME BIKAJU BY TANAKAと若干意味不明な言葉も書き添えた。


 今日はイザベルは玄関まで来て見送ってくれて、私はイザベルのいってらっしゃいという言葉を背にして実に嬉しい気分で出発した。


 そして2時間程進んだところで今日も焼きとうもろこしを2本食べて、トマトとキュウリに良く似た野菜を幾つか買ってから移動を再開し、またしても同じ食事処で具沢山のトマトソース味雑炊を食べた。これはこれで大変美味しいのだが、醤油か味噌ベースの味だったら最高だったことだろう。


 そうして今日もお供えの場所に行くと、想定していた通りお供えの品は全てなくなっていて、お返しと思われる立派なキノコが沢山置いてあった。


 私はとても嬉しくなって、ありがとうと森に向かって何度も言って、今日のお土産と私の意味不明なイラストを置いて、やはり30分程自己紹介を繰り返してからまた明日来ますと言って帰った。昨日よりもさらに明らかな視線を感じながら帰った。


 さらに翌日、お供えの場所通いの4日目、今度は何を描こうかと悩んでいたところ、またしても意味不明の実に奇妙な生きモノの絵を描いていた。


 確実に元ネタがあるはずで、5分くらい頭を抱えて必死に思い出そうとしたのだが今回は完全に全く思い出せなかった。


 そして何故か私はWHAT IS THIS ? BY TANAKAと、昨日以上に意味不明な文字を書き添えてリュックに入れた。ちなみに昨日のうちにソフィーリアにお願いしてタオルをもらっていたので、それもお土産用に入れた。


 さらに話しは前後するが、昨日お土産のお返しにもらったキノコについては、リシャールもソフィーリアも驚きの声をあげる程の希少な最高級食材だったようで、今日の夕食にはそれを使った料理が出るとのことだった。


 今日もイザベルにいってらっしゃいの見送りの言葉をもらって出発し、途中のおやつも早めの昼食も食べてお供えの場所に到着した。


 いつも通りお供えを添えて自己紹介をしようとしたところで待望の変化が現れた。


 ガサガサ・・・


 5メートル程先の草むらが音をたて、待ち望んでいた者がゆっくりと静かに現れた。


「!!!」


『・・・あの・・・こんにちは、タナカ?さん』


 まいった!これはまいった!想像以上だった!これほどまでに・・・これほどまでに・・・


 ここまで可愛い姿だとは思わなかった!!


 と、つい驚きの感情が先行してしまったが、私の目の前に現れたのはまさに全身毛で覆われた獣人だった。犬でもなく猫でもなく、なんというかレッサーパンダのようだった。っていうか、両親の顔すら忘れているのに何故レッサーパンダやカプモンのビカジューとかは覚えているんだ・・・


 背丈は私のお腹くらいの高さで、全身薄茶色でところどころ濃い茶色が縞模様になっており、つぶらな瞳にちょこんと立ってる耳に太い尻尾がかなり破壊力満点の可愛さだった。衣服は着ておらず、アレがないので恐らくメス?女性?だと思われた。


「こ、こんにちは、た、田中です、性が田中で名がかなた、日本人の田中 かなたです」


 あまりの可愛さに驚いたため、若干セリフを噛んでしまった。


『私はアイニッキ・ヴァウティネンといいます、フィンランド人です』


「フィ!フィンランドですか!?私はフィンランドについては良く知りませんが北欧の国ですよね?」


『はいノルウェーとスウェーデンとロシアに接する北欧の国です、えっと、サンタクロースとオーロラと・・・あとムーマンが有名です』


「ムーマン・・・あっ!それだ!」


『???』


「えっと・・・コレ!コレってムーマンに出てくるんじゃなかったでしたっけ?」


『わぁ!ニュルニュルです!それはニュルニュルです!タナカさん絵が上手なんですね!』


 だから何で両親の顔すら覚えていないのに、ムーマンのニュルュニュルは覚えてるんだ!?


『昨日カプモンのビカジューの絵を見ました!それでタナカさんは日本人で怖くない人だと思って出てきました!でも凄いですねタナカさん!ムーマンのニュルニュルも知ってるし、フィンランド語も凄くお上手です!』


「あっ、いや、それなんですが、実は私にはアイニッキさんがとても流暢な日本語を話しているように聞こえるんです」


『えっ!そうなんですか!?』


「はい、私にはこの世界の人達もアイニッキさんも全員日本語を話しているように聞こえます」


『タナカさんにはここにいる人達の言葉が分かるんですか!?』


「はい分かります、しかも文字まで読めます」


『凄い!それは勉強したからですか?』


「いえ、最初から分かりました、自分でも驚いています」


『そうなんですね!それにその姿、その姿は元のタナカさんのお姿なんですか?』


「多分・・・そうだと思うのですが、私は大分記憶を失くしていて、両親の顔すら覚えていないのですが、何故かビカジューとか妙な事は覚えていたりするので自分でも不思議に思っています」


『それは不思議ですね・・・でも記憶を失くしているのはその・・・大変お辛い事ですね・・・』


「それが何というかあまり悲しい気持ちになった事がないのです、ともかく今はこの世界で生きることに精一杯だし、何もかもが新鮮で驚きの連続ですから」


『私も生きることに精一杯ですが、一人だととても寂しい時があって泣くことがあります、でも私はこの姿ですから全然分からない人達のところに行くのが怖くてずっと一人で近くの穴に隠れて住んでいました』


 それは全くその通りだと思った。とても愛らしいその姿で、全く見知らぬ土地で言葉も分からない人間達の前に現れたりした日には、捕まって見世物にされたり、酷い目にあわされるかも知れないと警戒するのは当然だ。


 それにしても寂しくて一人で泣いていたとか、そんなの絶対にダメだ!ダメ!絶対!私は今この場で私の全財産全能力をかけてでも目の前の獣人少女、少女でいいのか?ま、それはさておき、彼女が穏やかに健やかに暮らしていける環境を提供することを己の心に固く誓った。

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