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タナカカナタのカタナ  作者: キクメン


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第7話

 小枝と葉っぱが丁度良い具合にテーブルのようになっていた場所を見ると、果物と白キノコは手付かずのままで残っており、こっちの方が安全だったはずなのに何故危険を冒して私のお腹の上にあった果物の方を食べたんだろうかと疑問に思った。


 ともあれいつも通り枕と一緒にシーツにくるんでグルグル巻きにして首にかけて木を降りることにしたのだが、ここでまたしても全く根拠のない自信が湧いてきて、ここから地面に飛び降りても大丈夫のような気がすると思った。


 いやいやさすがにこの高さはヤバイんじゃないのか?10メートルはないと思うが7メートルはありそうだ。ウン?7メートル?それなら大丈夫だ。


 と、人によっては着地の仕方によっては骨折したり大怪我するかもしれないのに、私はまったく意に介することもなく気合も入れることも前準備をすることもなく普通に何の気なしに飛び降りた。


 地面に着地すると同時に膝を曲げてショックを吸収したが今回は背中から転がることはせずにそのまま立ち上がった。ちなみにほとんど音も衝撃も出さずにまるで忍者のように着地した。


 そろそろ鈍感な私でも自分のこの驚異的な身体能力に気付き、いずれどこかで本格的な体力測定でもしようかと思った。


 とりあえず辺りを見回して自然の用水路を見つけたのでそちらに向かおうとする前に振り返って木の枝を仰ぎ見ると木の枝に立ち上がっていた生き物がジャンプしてこちらに向かってきた。


「あっ!」と、声が出て驚いたのも束の間、あっという間にその生き物は私の肩の上に着地した。


 どうやらこの生き物はムササビやモモンガみたいに手足を広げると薄い皮膚が伸びて凧のようになってグライダーのように滑空出来るのだというのが分かった。ちなみにこういう記憶は残っているのかという事にも少し驚いた。とはいえ動物学者ではなかったことは確かだ。


 生き物は私の首の周りを素早くグルグル回ってから私の頬に頭をこすりつけてきて、私はまたしても心の中で癒されるゥ~!と言って、満面の笑みで喜んだ。


 そうして私は生き物を肩に乗せたまま自然の用水路に沿って下流への移動を続けた。


 その日も私はまったく休むことなく進み、時折生き物は肩から飛び降りて用水路の水を飲んだり、どこかに走り回ったりしたが、そのままどこかにいなくなることはなく私の所に戻ってきた。


 その後も特に新たな発見も危険な動物にも出くわすこともなく日暮れが近付いてきたので、今日も大きな木を見つけて木登りしようとしたが、生き物が「キキッ!」とひと鳴きして肩から飛び降りてその木から離れて別の大きな木へと移動した。


 私は何かを察して目の前の木の上の方にある枝をよく観察してみると、木の色にも木の枝にもかなり似ているがもっとよく目を凝らしてじっくり見るとそこにはかなり大きな蛇がいたのが分かった。


 私はなるほどと頷き、小さな生き物が向かった方の木へと移動した。


 生き物は私が到着するのを待っていて、私が木に近付くとさすがという素早さであっという間に大きな枝へと登っていった。


 それを見た私はいまや毎度おなじみになった感のある根拠のない自信が湧いてきて、何を思ったか木に向かって勢いをつけて走り出しそのまま木の上を走って垂直に駆け上がった。


 距離が足りない!と思った瞬間、無意識に間髪入れずに電光石火の速さで抜刀して身体を思い切り伸ばして木の枝に刀を突き刺し、そのまま片手懸垂で身体を勢いよく持ち上げてもう一方の腕を伸ばして枝に指を引っ掛けて指の力だけで全体重を持ち上げた。もちろん刀は素早く引き抜いた。一点だけ完璧じゃなかった点をあげると、抜刀した際に鞘を地面に落としたことぐらいである。


 そうして10メートルを少し超えたぐらいの高さの枝にわずか数秒で辿り着いた。


 少し手慣れてきた手つきでいつものように簡易ハンモックを作り、明日の朝は白キノコを食べようかと思って手にした途端、生き物は私から逃げるようにして距離を取った。


 なるほどそうか、この生き物は白キノコが苦手なんだな、それで昨日は小枝と葉っぱで出来たテーブルの上に置いた果物には手を付けず、私のお腹の上に置いた果物の方にやってきたんだと納得した。


 私は白キノコをどこか遠くに置こうと思って辺りを見回すと少し先に枝分かれしている箇所があり、そこには空になっている鳥の巣があった。


 これは実に丁度良いということで私はそこに白キノコと果物を置いて、ピンク色の果物を一つ手に取ってから戻ると生き物は近付いてきた。


 その後静かにシーツに横たわると生き物もやってきてお腹の上でピンク色の果物を少しかじってから丸まって眠り始め、それを見た私も笑みを浮かべながら眠った。


 翌朝もいつも通り空腹で目が覚めたが、お腹の上には生き物の温かいぬくもりを感じて安心し、ピンク色の果物を手にしてムシャムシャ食べていると、生き物がピクリと動いて起き始め、果物を持っている手に近付いて背を伸ばして生き物も食べ始めた。


 私はそのまま手を止めて生き物が満足するまで待つと、数十秒ほどで食べるのをやめて私の頬に頭をこすりつけてきた。


 相変らず癒されるなぁとニッコリほっこりしながら残りの果物を食べてゆっくり静かに伸びをしてから両腕で枝を掴んで起き上がった。


 それから手早く支度をして一切考え込むことなく躊躇なく10メートル超の高さの枝から飛び降り、またしてもほとんど音を立てずに着地した。


 生き物も幾つかの別の木にジグザグに飛び移りながら降りてきて最後は私の肩に飛び移った。


 その日もまるで休むことなく歩き続け、昨日と同じく生き物は時折水を飲んだりどこかに行っては戻ってきてを繰り返した。


 その後まだ日暮れ時には早い段階で遠くで川が流れているような音が聞こえてきた。


 私は状況が変化しそうな事に少し期待してペースを速めて前進した。


 程なくして少しだけ開けた場所に出ると、お目当ての川が目に飛び込んできた。


 大きな川ではないが、それでもこれまで辿ってきた自然の用水路よりも明らかに大きく、川幅も広く水深も深かった。大体幅2メートル前後で深さは50センチから1メートル程度といったところだろうか。


 これは結構草原に近づいたんじゃないかと思って私は喜んで先に進もうとしたところ、生き物は肩から飛び降りてそこで立ち止まった。


 私は振り返って生き物を見つめると生き物は二本足で立って私の目を見ていた。恐らくこの先は一緒に行けないということなのだろうと思った。


「これまで一緒に来てくれてありがとう、これはお礼だよ」


 私は黒紫キュウリを一つ生き物のすぐ近くに置いたが大き過ぎて生き物には運べなさそうだったので、小さく折って地面に置こうとしたが、生き物は両手を広げて欲しがってるように見えたので生き物に手渡しした。


 生き物は「キィッ!」と元気な声でひと鳴きすると、黒紫キュウリを口の中に放り込んでほっぺたを物凄く大きく膨らませてそのまま森の中へと素早く消えていった。一度もこちらを振り返らずに消えていった。

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