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タナカカナタのカタナ  作者: キクメン


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第51話

 マチャントからのランチを断り、よこしまな心でモルサール本部道場に向かった私は、途中でモルサール流歩方術の事を思い出して、練習しながら向かった。


「よっ!はっ!とっ!よっ!はっ!とっ!」


「おや、君はモルサール流の門下生かい?」


「えっ?ってうわっ!?」


 突然声を掛けられたので横を見ると、同じペースで気味が悪いくらい頭の上下移動がなく水平にスムーズに進んでいる人がいた。それもとびきりイケメンで高身長でスタイル抜群だった。


「あなたはもしやヴォルリッヒ様ですか?」


「えっ!何で君私の事を知っているの!?君は古くからいる門下生じゃないよね?」


「えっと・・・色々と事情がありまして・・・」


「へぇ!それは実に興味深いね!これから道場へ向かうのかい?」


「はい、あの・・・シャルロッテ様のところに行くところです」


「何だって!!」


ガシッ!


「君!君は一体誰なんだ!?何故シャルの事を知っているんだ!?」


「うわっととと!ま、待ってください!えっと・・・ゴソゴソ・・・これ!これを!」


「うん?えっ!?それってウチの巻物・・・じゃない!これロレオン爺ちゃんのじゃないか!?」


「はいそうです、それとこれを・・・」


「これは紹介状?・・・」


 ヴォルリッヒはその場に立ち止まって目を大きくして巻物と紹介状を見た、この人もまつ毛が長くて鼻筋もスラリとしていて、とんでもなく美しい顔をしていた。


「手出し無用に、シャルへの紹介状・・・いや、失礼ながら君は全くそんなようには見えないが・・・でも間違いなくロレオン爺ちゃんの字だ・・・」


「はい、ロレオン様にはとても良くしていただきました、ロレオン様に出会わなければ、こうして今ここにいることはありませんでした」


「うーむ・・・シャルとは会ったんだよね、マリーにも」


「はい、昨日は手首合わせの練習法を教わりました」


「えっそこまでいってるの!?」


 何がどういってるのか分からないが、極めて別の意味に捉えてしまいそうな言い方だった。


「これは大変だ!急いで帰ってきて良かった!後で私も離れに行くからその時に詳しく教えて欲しい」


「はい、分かりました!」


「じゃあえーと、君のその歩方だけど、なんか無理にタイミングを取ろうとしてるね、うまくやろうとしないで、うまく出来なくてもいいから、とにかく連続的にヒザを出すといいと思うよ」


「わっ!有難うございます!やってみます!」


シュバババババッ!!


「うわっ!はやっ!出来てないけどはやっ!凄いね君!っとタナカ君って呼んでもいいかい?」


「はい!」


「タナカ君は東の出身で合ってる?性が先に来て名が後に来るんだよね?」


「そうです!東の国の出身です!」


「あっやっぱりそうなんだ!私は剣の修行で去年までは東方地域にいたんだよ」


「えっ!そうなんですか!?では日本っていう国をご存知ですか?ジャパンとも言われているかも知れません」


「ニホンにジャパン?・・・いや、私がいった地域にはそんな国はなかったかな」


「海に囲まれた島国なんですが」


「海だって?それは随分先だね、あっ大分良くなってきたよ」


「有難うございます、なんかコツが分かってきました!やっぱり海って相当遠いんですか?」


「そうだね、私がいた東の地域よりもさらに東の端にあるんだ、相当遠いよ」


 そうしてそれほど長話をしていないにも関わらずあっという間に道場の表門に到着した。


「君凄いね、この速さで全然息があがってないよ」


「ヴォルリッヒさんこそ全然息が上がってないですね、さすがです」


「私は小さい頃からずっと練習してきたからね、体力を消耗しないで動けるんだ、だけどタナカ君はまだ結構無駄な力が入ってるにも関わらず、凄く速いし全く疲れた様子がない、底なしの体力だね」


「ヴォルリッヒ?お前ヴォルリッヒか!?」


「うん?・・・あっ!父上!お久しぶりです!」


「こいつめ!ようやく帰ってきたか!!」


「すいません、それが道中母上にお会いしまして」


「何ッ!何だと!?」


「久しぶりだというので、あちこち観光名所に付き合うことになって遅れてしまいました、そうだ、手紙とお土産を預かっています、これから母上も東へ向かうとのことでした」


「何だと!?まだ帰ってこないというのか!」


「まぁまぁ母上もこれまでずっと私達が育つまで苦労なされてきましたから、良いではありませんか」


「お久しぶりですヴォルリッヒ様」


「やぁデルリシアン久しぶりだね、ってどこか修行の旅にでも出かけるのかい?」


「いえ、私は組合の依頼でドグリアスの穴周辺の森に現れたという大男退治に行くところです」


「えっ!大男!?何ソレ!面白そう!父上、私も一緒に行って良いですか?」


「帰ってきたばかりだというのにか!?」


「当主様、これは考えようによっては良い機会かも知れません、先日の・・・」


 デルリシアンは小声でヴォルタークに耳打ちしたが、私には聞こえることが出来た。それは先日シャルロッテが言っていたシャルリッヒ爺さんの寿命問題を解決するのに利用出来るというものだった。さらに凱旋帰国してきたヴォルリッヒの名声を高めるのにも大いに利用出来ることも付け加えた。


 ヴォルタークはその場に佇み数秒間無言で考えてから決断した。


「よし!行け!ヴォルリッヒよ!詳細は道中デルリシアンに聞け!」


「ハッ!分かりました父上!っと、その前に・・・ゴソゴソ・・・これが父上の分、これがマリーの分でこっちが・・・」


 ヴォルリッヒは背中に担いだ巨大な荷物をその場で荷解きしてお土産をヴォルタークに渡したが、途中から私が荷物持ちになった。


「フウ、大分軽くなった、これでヨシ、では行ってまいります父上、タナカ君、今度ゆっくり話を聞かせてよ」


「分かりました、行ってらっしゃいませ」


「一応気を付けるのだぞヴォルリッヒ、デルリシアン後はまかせたぞ」


「ハハッ!」


 そうして後には私とヴォルタークが残された。私にとっては極めて居心地が悪い状況になってしまった。


「何しとる!さっさと荷物を運ばんか!」


「ハッ!ハイッ!」


「ウン?オヌシ・・・いや、何でもない」


「???」


 怒られながらもなんとか今日もマリーとシャルロッテのいる離れの小屋に行くことが出来たので、その点においては僥倖だった。


「わぁ!素敵な服です!」


「ワシのはちと幼すぎんか?」


「いいえ!とっても似合っていて可愛いですよ!姉さん!」


「「ウンウン」」


 ちなみにヴォルタークへのお土産は腹巻だった。


「でも慌ただしいですね、帰ってくるなりすぐまた旅に出るだなんて」


「まぁよくわからん大男などすぐに討伐してすぐに戻ってくるだろう」


「ワシも行きたいのう」


「そうだシャルよ、今回の件でようやくお前を自由にしてやれるかもしれんぞ」


「ホウ!詳しく話を聞かせてくれ!」


「その前にお昼ご飯にしましょうね!」


「はいッ!」


「何故オヌシが先に返事をするのだ」


「えっ、いっ、いやぁ~ハハハ・・・」


 色々あったが、とりあえず何としてでも叶えたかった今日の最大の目的のランチタイムはなんとか達成出来そうだった。

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