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タナカカナタのカタナ  作者: キクメン


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第50話

 それからこれまでの仮決定状態の宝石と鉱石の落札額を聞いて驚きながら了承していき、この時点での総合計額はあともう少しで10億に達するというのを聞かされ、脳の理解が全く追いつかなかった。


 そしていよいよホールでは最後の目玉商品の番となったようで、ひときわ大きな歓声が轟いた。


 私達はさらに別室に向かうことになり、その部屋はこちらからはホールを見下ろすことは出来るが、ホールで競りに参加している人達からは見えない上階にある部屋で、そこで落札額に納得すれば司会進行役に対してOKサインを出すのだそうだ。


 私は職員からハンドサインを教えてもらい、OKの場合、NOの場合、もう少しUPの場合などの手の出し方を学んだ。


 そうしてホールの壇上の上に乗せられていたのは私がドグリアスの穴で最後に採掘した青味がかった銀色の鉱石だった。


 それは青銀鉱石と呼ばれ、それで作られた剣は永遠に錆びないとも言われ、戦士はもとより装飾用の飾りの剣としてもかなり高い価値を有するので、貴族の間でもステータスシンボルとして是非とも手に入れたい名刀になるとのことだった。


「3億!」


「えぇっ!?いきなり3億から始まりましたよ!」


「そうですね、今回タナカ様から提供していただいた青銀鉱石は何と言っても純度が違います、相当高純度で混ざり物がほとんどありません、しかもそれでいて飾り用の剣ならば3本は作れる程に大きな鉱石です、恐らく他の宝石や鉱石の競りを控えていた商人の中にはこれが目当ての者もいることでしょう、なにせ西側の王侯貴族達は見栄をかなり重んじますから、今回の青銀鉱石は喉から手が出るほど欲しがることでしょう」


「3億5千!」


「わっ!いきなり5千も飛びました!」


「いえいえ、まだまだこれからですよ・・・」


 その後なんと1時間近くかけて5億6千万という値段がついて、私はその金額にOKサインを送って正式に落札された。


 ちなみに競りを行っている間、競りに参加している数名の商人のもとには何度も伝令の人が往復して走って何か耳打ちしていた。恐らく背後についているスポンサー的な有名貴族のパイプ役と金額交渉をしていたのではないかとの事だった。


 そうして特に騒ぎが起こることもなく無事に競売は終了し、最終的な金額計算の結果、手数料などを差し引いて私の手元に入ってくる金額は12億7千万ガーランドという驚愕の結果になった。


 当然まったく実感がなく、商人のマチャントですらしばらくの間言葉を発せられないでいた。


 そしてマチャントは結構深刻な表情をして、これはまずいことになりそうだと言い、商工組合の本部長に急ぎ説明しなければならないと職員に言った。


 そうして緊急にごく少数の上級職員と本部長を召集して緊急の会議が行われた。


 マチャントの懸念は、現在立ち入りが禁止されているドグリアスの穴に無断で隠れて立ち入る者達が多数出てくるだろうという事だった。


 今日競り負けた商人達の中には、背後に名のある王侯貴族がついている者達も必ずいるはずで、確実に貴族たちが自費で自ら抱え込んでいる私的な探検家などを召集してドグリアスの穴に差し向けるだろうと予測した。最悪の場合探検家どころか盗賊まがいの連中も現れる可能性があるとのことだった。


 こうなるとドグリアスの穴周辺が荒らされるだけでなく、これから行われる正式な調査討伐活動の大きな妨げになり、危険度もかなり上昇することが懸念された。


 探検家組合と戦士組合にも知らせて周辺の警備を強化したとしても、隠れて侵入する者達を全て防ぐことは不可能だが、それでも何もしないよりはマシという事で、すぐに各組合と連携して周辺警備を強化するよう要請した。


 こうして競売の後に緊急会議を行ったことで結構夜遅くになってしまい、大金ゲットの打ち上げパーティーという雰囲気にはならず、宿屋への帰り道にテイクアウトの料理を買って戻る事になった。


 宿屋に着くとギャラガ達が心配してやってきて、事の次第を説明すると、大金に喜び驚いたのも束の間すぐに真剣な表情になった。


「確かにマズイ事になるなこれは・・・」


「ああ、確実に場が荒れるぞ」


「何せ12億ときたからな」


「どんなに口封じしてもすぐに漏れるな、それもウワサ話しで大きくなってな」


「ヤバイな、死人が出るぞこれは」


「・・・」


 ちなみに今回の話が出る以前に既にギャラガ達にも周辺警備依頼が出ており、引き受けるかどうか検討中だとのことだったが、今回の事でますます警備が必要になるから断れない雰囲気になるだろうとのことだった。


 ギャラガ達は身をもってあの森にいる何かが極めて危険だという事を知っているので、引き受けるかどうか容易には決めかねていたのだ。そして組合からの心象もあるので無下に断れないという点も頭を悩ます一因となっていた。


「まぁでもこれでさらに警備体制が強化されるということで参加する人数は増えるから、かえって好都合かも知れんな」


「確かに腕利きの連中が数十人もいりゃあさすがに大男でも敵わねぇだろう」


「そうだ、そういえば調査討伐依頼でデルリシアンさんも参加することが決まったそうですよ」


「何ッ!デルリシアン師匠が!?」


「ええ、ヴォルターク様からそう聞きました」


「それなら安心だ!師匠が出るってんなら何も心配はない!」


「ホウ、それは凄いな・・・よし、ならば俺達も参加することにしよう、だが万が一の事に備えていつも通り俺達の生存が最優先だ」


「「「オウ!」」」


 こうして、ギャラガ達も周辺警備に参加することが決まり解散となった。


 その後マチャントと二人で少し冷めたテイクアウトの夕食を食べながら話をしたが、その際マチャントからは今回の報酬についてとても3割ももらうわけにはいかないと言い、結構私は粘ってマチャントをなだめたのだが、マチャントはとても申し訳ない様子で断り続けて、どうにか落としどころを見つけた結果2億7千万をマチャントに渡し、自分は10億を受け取るということで落ち着いた。それでもとんでもない報酬にマチャントは驚きながらも何度も礼を言って喜んでくれた。


 翌日、ギャラガ達は組合からの依頼ですぐにでも現地に向かって欲しいと言われたらしく、マチャントと相談してしばらくマチャントはこの場に留まるのと、荷馬車に積んでた商品も全て完売したので大丈夫だということで、一時的に専属護衛の契約を解除してギャラガ達はドグリアスの穴へと出発することになった。


 それから私とマチャントは商工組合へと向かい、昨夜マチャントと交わした取り分にしたがって、落札金額の受け取り名義を登録してもらった。


 もちろん現金で受け取るなどという事はせず、組合の合同銀行口座にそのまま入金というかたちになった。


 その後マチャントから昼食を誘われたが、モルサール道場に行かないといけない用事があるとウソを言って断ってしまった。


 マチャントは昨日から大事な用事を中断させてしまい実に申し訳ないと謝られて、逆に私の方がウソをついているので実に申し訳ない気持ちになった。


 何故ウソをついたのか、それは当然マリーが作ってくれるこの世で最も美味しい料理をマリーとシャルロッテと一緒に食べたいからだった。

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