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タナカカナタのカタナ  作者: キクメン


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第42話

「師匠!」


「おおソルドンか、久しぶりだね、4年・・・いや5年ぶりかな」


「はい!覚えていて下さり嬉しゅうございます!」


「ははは、忘れるものか、ここにいる者でお前を忘れた者などいないよ」


「ハハァッ!なんともお恥ずかしい限りです!」


「ゆっくりしていられるのかい?」


「はい、しばらくはこちらにおります!」


「そうか、ならば後でゆっくり話そう、まずはそこの、タナカ・・・殿、とお呼びしてよいか?」


「はっ!はいっ!よろしくお願いします!」


「フム・・・貴殿は変わった・・・あっ、いや、そうか記憶を失っているんだったね、私はデルリシアンと言います、早速シャルリッヒ様の元へ案内しますので付いて来てくれますか?」


「はい!よろしくお願いします!」


「まぁまぁそんなにかしこまらずに、タナカ殿はお客人なのですから」


 そうして私はソルドンの師匠にあたるデルリシアンの後に付いていった。とても物腰が柔らかく口調も丁寧で穏やかな感じのする人だが、まず間違いなくとんでもなく強い達人だと直感肌感で分かった。


「あっそうだ・・・えぇと、諸君らは分からなかったと思うが、タナカ殿には決して手出しをしてはダメだよ、とりあえず分からなかった者は後で地面をよく見ておくように、ではタナカ殿こちらへ」


 正直私自身もデルリシアンの言う事が分からなかった。地面になにがあるのか見たかったが、デルリシアンがスタスタと先に進むので地面を確認することなく私はデルリシアンの背中を追いかけた。さっきの一番偉そうな人もだが、デルリシアンも歩くのが速い。全くそうは見えないのに不思議だ。


「・・・お前、何か分かったか?」


「いや・・・サッパリ分からん」


「オレもだ、何が凄いのか全く分からん」


「ああ、全く迫力も何もないただの素人の一振りだったと思う」


「師匠は地面をよく見ろと言っておりましたが・・・ってあっ!!」


「「「ああっ!!」」」


 とても硬い地面には深さ2センチ程はありそうな足跡がクッキリとハッキリと残されていた。後になって私もソルドンから教えてもらった。


「ソルドンとはロレオン様のところで知り合いになられたのですか?」


「いえ、その前から知り合いになりました」


「ホウ、どういった経緯かもしよければ話してくれませんか?」


「はい」


 そうして私はこれまでの経緯を、死ぬ前は日本で暮らしていたという事以外正直に簡潔に話した。


「いやはや・・・探検家というのは想像以上に過酷な職業なんですね、私にはとても無理そうです、実を言うと私も虫は大の苦手なんですよ」


「えっ、そうなんですか?」


「ええ、ムカデとか足が沢山あるものなど・・・おぉイヤだ、考えただけでも鳥肌が立つ」


 とてもそんな風には見えないが、でも確かにこれに関しては嘘を言っているようには見えなかった。


 5分程そうした話をしたところで目的の場所に到着した。表門からは大分離れたところにあり、こう言っては失礼だが意図的に隔離されているような印象を受ける場所だった。


「恐らくロレオン様から聞いているかと思いますが、シャルリッヒ様はその・・・いささか変わったところがあるお方でして・・・」


「はい・・・一応聞いております」


「ええと、まぁ紹介状と手出し無用の巻物もあることですからいきなり立ち合ってくれとは言わないと思いますが、ある程度の無礼はどうかご容赦の程お願いします、言っても聞かない人ではありますが、一応何か無礼がありましたら、私にお知らせください」


「聞こえているぞ!デルリシアン!」


「ええ、聞こえるように言いました」


「何じゃと!この無礼者!ゲフンゲフン!」


「えっ?うわぁっ!?」


「ヒヒヒヒヒ!驚いたか?驚いたな?驚いたろう!イヒヒヒヒヒヒ!」


 いつの間にか私とデルリシアンの間に小さい老人がいた。全く気が付かなかった。


「ロレオンの巻物と紹介状を寄こせ!」


「は、こちらに」


「どれどれフムフム・・・」


 その老人は私よりも背が低く体格もまるで筋骨隆々ではなく肩幅も私より狭かった。


 長い白髪をポニーテールにしていて、ヒゲも眉毛もフサフサの真っ白でどんな顔をしているのか全く分からなかった。


 そしてあまりにも強烈なギャップがその声で、何というか子供向けアニメに出てくる可愛らしいマスコットキャラクターを演じる女性声優のような声だった。


 あまりにもイメージとかけ離れ過ぎていて、恐怖とまるっきり別の意味で声も出なかった。


「ウン?ワハハハハ!何じゃその顔!とんでもなく素っとん狂な顔じゃ!アハハ!アハハ!」


「シャルリッヒ様、客人に失礼ではありませんか」


「失礼もなんも事実を言っとるまでじゃ!アハハ!お前面白い顔しとるのう!アハハ!アハハ!」


「実に申し訳ない、何卒ご容赦下さい」


「い、いえ大丈夫です、その、ちょっと驚いているだけです」


「ホラやっぱり驚いたじゃろう!アハハ!」


「多分別の意味で驚いているんですよ」


「何じゃと!ワシでも分かるぞ!今のはあまり良い意味で言ってないじゃろうオヌシ!」


「いえ、特に他意はありません、とりあえず私の役目は終わりましたので失礼させていただきます、良いですか、くれぐれも失礼のないようにお願い致しますよ」


「おう、さっさと行け!オヌシの方こそ少しワシに失礼じゃぞ!」


「では失礼します、タナカ殿、色々とご面倒をおかけ致しますが後の事よろしくお願いします」


「えっ?あっ?は、はい、分かりました」


 出来ればもう少し一緒にいて欲しかったが、デルリシアンは一安心したかのような様子でさっさと去っていった。またしてもまるで速いように見えないのにかなりの早歩きで去っていった。


「キヒヒヒヒ!そうかそうか、タナカと言うのか、タナカカカナタ、タナカナカナタタ、カナタタ、イヒヒヒヒ!言いにくい名前だ!面白い名前だ!タナカカナタタタタ!アハハ!アハハ!」


 お酒でも飲んでるのだろうか、ヤバイクスリとかやってないよね、素でこうだとしたらなかなかにアレな人だ。大丈夫だろうか、かなり不安だ。


「それにしてもオヌシ全然強そうに見えないのう!アハハハ!ワシと同じじゃ!アハハハ!よし来いタナカ!こっちじゃ!」


 相変らず見た目と言動とギャップの激しい可愛い声でシャルリッヒは歩き始めた。どう見ても普通に歩いているように見えるのにシャルリッヒもまた実に素早く進んでいった。


 そうして案内されたのはこの辺りでは珍しい木製の小さな小屋だった。ところどころに花が植えられていたり飾られていて可愛らしい感じがした。


「客人じゃ!客人が来たぞ!マリー!お茶じゃ!お茶とお菓子を出してくれ!」


「あらあらまぁまぁ珍しく上機嫌だと思ったら、お客様ですか、凄く久しぶりですね」


 小さな小屋の小さな玄関に出てきたのは私と同じ位の年齢に見える女性で実に綺麗な人だった。この世界に来てから私が見た中で一番綺麗な人かも知れない。

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