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タナカカナタのカタナ  作者: キクメン


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第35話

 初日としては上出来過ぎる収穫に私はかなりのホクホク顔で足取りも軽やかに出口へと向かった。


 恐らく道中何事も起きなければギャラガ達も来ているに違いなく、一刻も早く手に入れた鉱石を見せて彼等の驚く顔を見たかった。


 そうして遠くに陽の光と思われる出口が見えたので駆け足で向かおうと思ったが、そこでハッと我に返りランタンの灯りを消して体を低くして静かに様子をみた。複数人の気配を感じたからである。


 すると出口付近の明るい陽の光が遮られた。恐らく誰かが穴に近づいてこちらの方を見ようとしているからだろう。


 逆光になっているのでどういう人物がそこにいるのか全く分からず、いったんリュックを降ろしてベルトの刀の柄に手をかけた、その瞬間。


「おーい!タナカァー!いるかぁー!」


 あっ、これはソルドンの声だ。


「いますよぉー!今行きまぁーす!」


 私は安心して、リュックを背負い直して出口へと足早に向かった。


「おお!タナカ、無事だったか」


「はい!全く危険な目には遭いませんでした」


「大分深くまで潜っていたんじゃないのか?結構待ったし何度か声をかけたんだぞ」


「あっそうだったんですね」


「で、どうだった?お宝はあったか?」


「それはもう凄いですよ!宝の宝庫です!」


「マジか!?」


「マジです!見ますか!?」


「おう!」


「いや、待て、ここではマズイ、宿に戻ってからにするんだ」


「あっと!そうでした!」

「おっと、そうだった、すまん」


 そうして無事ギャラガ達と合流し宿へと戻る事にしたが、お宝は隠せても私の嬉しそうな顔だけはどうにも隠し通せなかった。


「ところでタナカ、行きの道中に何かの気配を感じたか?」


「いえ、鳥のさえずり以外では全く何の気配も感じませんでした」


「そうか・・・」


「皆さんはどうでした?」


「うむ、ちょっと不自然なくらい何の気配もなかった、狩りの腕が立つハンテルでさえも動物の気配がないのが妙だと言っていた」


 ハンテルはギャラガと一緒に単独で馬に乗る護衛の一人で唯一弓と短剣を装備しているが、彼は狩人の村の出身で小さな頃から森の中で狩りをして育った経歴の持ち主だった。


「この先帰りを狙った山賊は現れるでしょうか?」


「分からん、山賊がいるとすれば必ず行きに通った我々を静かに監視していたはずだがそれがなかった・・・まさか、我々でも気付けない程の人物がここいらで山賊なんかをやっているとは思えない」


「だが、役場にゃ山賊討伐の依頼があったぜ」


「ああ、だからどうにも腑に落ちんのだ」


「この辺で山賊をやっていても旨味がなくなったから別の場所に移ったとかはどうだ?」


「うむ、確かにその可能性も考えられるが、一緒に動物の気配もないっていうのが引っかかる・・・」


 やはり私はギャラガ達のようなプロ集団に比べて危機意識がかなり低いと思い知らされた。一応監視されていないか気にはしていたが、それでも静かでのどかで平和だな~とまるでピクニック気分で歩いていたような気がするのだ。


 ともあれギャラガ達と一緒に帰路につき、時折ハンテルが森の中に入って周辺を調査したが特に気になる形跡はなかったようだった。しかしかえってそれが気になるとのことだったが・・・


 その後道中何のトラブルもなく温泉宿に到着し、今日の成果を披露するためいったん私と商人が寝泊りする部屋に全員集まり、そこで私はリュックの中からお待ちかねのお宝を取り出して見せた。


「「「オォーーーッ!!」」」


「シィーッ!皆さんお静かに!」


「おっと、いけねぇ!」

「すまん、つい声が出ちまった」


 商人は声を上げて喜ぶ皆を諫めたが、その表情は実に嬉しそうな笑顔で満ち溢れていた。


「いやしかしこれはとんでもないですぞ、これ程までとは全く思いもしませんでした、とりわけここまで純度の高い青銀は見たこともありません、これを中央都市で売るとなると、ゴクリ・・・一体幾らになることか・・・」


「どれくらいここに滞在できますか?つるはしで穴を拡張して掘りやすくすればもっと沢山これと同じ物がとれそうです」


「これが沢山ですと?・・・いや、うーん・・・」


「なんだ?時間にゃ余裕はあるし、何を悩む事があるんだ?」


「はい、これが世の中に与える影響が大き過ぎるのです、これ程のものが沢山あるということが知れるとこの辺り一帯に与える影響が大き過ぎて、私にはとても手に負えない事態になります」


「まぁ一攫千金を求めて大勢やってくるだろうな」


「でもかえってこの村にとっちゃいいんじゃないのか?宿泊客はさらに増えて繁盛するだろうよ」


「ああ、だがその分問題事も多くなるだろうな、金目当てで集まってくる連中が多いだろうからな」


「あの静かで自然豊かな場所が荒らされていくのはちょっと悲しいですね」


「ええ、これだけの鉱石宝石宝の山となれば、確実にこの地域の自然は破壊されることでしょうし、静かな温泉村の治安も悪化するでしょう」


「でもいつかはバレて遅かれ早かれそうなるんじゃねぇのか?」


「っていうか、何故今までそうならなかったんだ?少なくとも山賊連中は知っていたはずだ」


「事が公にならないようにしっかり調整して裏のルートに売りに出していたいたとか?」


「いやいや所詮田舎村の山賊のやることだぜ、そこまで頭が働く奴がいるとは思えん」


「そう、そうなんだ、どうにも引っかかる事が多すぎる、何か嫌な予感がするのだ」


「いつになく慎重だなギャラガよ」


「ああ、何というか不自然なまでに静かすぎる」


「戦で得られた直感ってやつか?」


「分からん・・・が、頭のいい奴が何か策を練っているのとは違う得体の知れない不気味さを感じる」


「お前がそこまで言うってのも珍しいな」


「オレもギャラガの言う通り悪い感じがした、今日軽く森に入って調べてみたが、大山猫やグマンどころかウサギや鹿などの糞や足跡が見つけられなかった」


 もしかして地震とか火山とか天変地異の前触れだろうかと私は想像した。


「・・・明日、しっかり調査してみるか・・・タナカよ、探検家のお前さんの力も借りたいが、同行してもらえないだろうか?」


「分かりました、お役に立てるか分かりませんが、一緒に行きます」


 実は正直なところ、今日はお宝発見祝いでパーッと宴会ムードになるかと思っていたのだが、私以外は皆とても冷静にしっかりと今後の動向を考えていて、またしても私は自分の浅はかさを痛感するものがあった。


 もしも皆がいなければその後の展開など考えもせずに、大喜びで今日持ち帰ったお宝を売りに出していたところだ。


 とりあえず今日のところは持ち帰ったお宝の事は内密にして、明日の調査結果を待ってから今後の事を検討することになった。場合によっては町へ引き返すか中央都市に行って探検家組合や商工組合に報告した方が良いだろうということになった。


 そうしてその日は大人しく一夜を過ごし、翌日はドグリアスの穴周辺地域の調査活動を開始した。


 まずは虫よけの薬を買って顔や首など肌が出ているところに塗り、かなり大雑把に描かれた地図を元に調査ルートを確認しながら行動計画を立て、互いに見える距離を保って二手に別れて調査を行うという方針が決まった。


「皆さんお気をつけて」


「もしも夕方までに戻らなかった場合は、役場に行って事情を説明してくれ」


「分かりました、ご無事を」


 そうして私に限って言えば昨日とは目的と緊張感が全く大いに異なる活動が開始された。

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