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タナカカナタのカタナ  作者: キクメン


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第28話

 今日も図書館に入ると職員の人が感心した様子で話しかけてきて、私はグルカンからもらったメモを見せるとすぐに該当の本があるコーナーに案内してくれた。


「タナカさんは勉強家ですね、さすが上級ランクの探検家です」


「いやぁ・・・単に私が物を知らないだけです」


「・・・すいません、タナカさんは記憶を失っているんでしたね・・・」


「あっいやいや!気にしないで下さい!そもそも私自身全く気にしてないですから!」


「タナカさんは不思議な方ですね、とても上級ランクの人と話しているとは思えないくらい、なんていうかその、お気を悪くなさらないでいただきたいのですが、ごく普通の温厚な一般人のようです」


 いやまさにその通りのごく普通の一般人です、温厚かどうかは自信がありませんが・・・


 そうして親切な事に全ての本を取ってくれて、ここで読んでいくか借りていくかと聞かれたので、4日後には中央都市に向けて出発するので3日後に返却すると言って借りていくことにした。その際丈夫な布製のバッグまで貸してくれた。


 商人の家に戻る途中、甘くて良い匂いのする店があったので寄ってみると、美味しそうな焼きたてクッキーが売られていたので多めに購入して帰った。


 商人の家に戻りキッチンで湯を沸かしお茶を淹れてから、中庭にある簡易テーブルとイスに腰かけてクッキーを食べながら借りてきた本を読み始めたのだが、本よりもクッキーが凄く美味しくてそっちの方に感心がいってしまった。


 それでもグルカンが読む順番まで指定してくれた本を読み始めてみると、まず最初に手当てとは何かという事から始まり、とても科学的とは言えない神秘的な説明が続き、さぁやってみよう!と続いた。


 いやいや、いきなりやってみよう!ってのはないだろうと心の中で突っ込みを入れてしまった。


 そんな風に思いながらも素直に本に書かれている通り、やってみることにした自分であった。


 まずは今の自分が怪我や病気などをしていない健康で元気な状態なのか確認するところから始まり、しっかり睡眠はとれていて眠くないかとか、空腹な状態じゃないかとか、心配事がないかなど、心理的な面も含めて健康である事を確認するように書かれていた。


 次に大きく深呼吸をして心を落ち着かせ、空気を吸うことで元気を蓄え込んでいくようにイメージせよと書かれていた。


 その時は両腕で胸の前に大きな輪を作り、肩と腕の力は抜いてリラックスした状態で行うと良いと書かれていた。


 また、目は閉じるか薄目を開けた状態にして、空気と一緒に吸い込んだ元気の素をいったんおへその下に蓄えるようにイメージし、ある程度溜まったと感じたらその元気を腕を通して両手に送るようにイメージせよ書かれていた。


 10回以上深呼吸を繰り返した時点で両手が暖かく感じられたら大いに素質があると書かれていた。


 ホントかぁ?と、とても懐疑的ではあったが、現にこの目で見たことでもあるし、グルカンの手の暖かさは確かに肌で感じたので、真面目にやってみることにした。


 まずはイスから立ち上がって自然にリラックスした状態で立ち、ついさっき美味しいクッキーを食べたばかりでとても幸福で元気な状態であることを確認し、両腕を胸の前にかかげて大きなバランスボールを持つようにリングを作り、そこからゆっくりと深く深呼吸をし始めた。


 薄目を開けて両手を見ながらゆっくり息を吸い込んで、空気の中に元気の素があると信じて、おへその下あたりに蓄積させるように想像して、呼吸を続けたところ、数回程度でお腹がグルグル鳴り出して、へその下が暖かくなってるような気がした。


 そしてその暖かい元気の素を腕を通して両手に送るように想像した。まるでホースの中を水が流れていくかのように想像した。


 今何回目の深呼吸だっけ?と考える事もなく私は集中し、ひたすら深呼吸を繰り返してどんどん元気の素とやらを集める作業に没頭した。


 驚くべきことに両手はすごく暖かくなってる気がして、どこまで暖かくなるのか知りたくて、止めることなく続けていると、温度が上昇する代わりに両手から放出される暖かい空気の膜のようなものが広がっていくのが感じられた。


 自分が勝手にそう思い込んでるだけじゃないかと思っていたが、暖かい空気の膜が顔面に触れた事でこれは思い込みじゃないぞと驚いた。


 どうやら私にも素質はありそうだという事が分かったので、次に何をすれば良いのか本の続きを読んでみると、次はいよいよ怪我を治してみようということで、周りに軽傷を負った人で試すか、ナイフで指先を少しだけ浅く切って試してみようと書かれていた。


 早速私は腰の刀を抜いて、十分過ぎる程切れ味が分かっているのでとても軽く刃に指を当ててみたのだが全然切れず、さすがに軽すぎるかと思って普通に当ててみても全く切れず、強く押し付けてもまるで刃がついていない模造刀のようにいくら押し当ててもまったく切れるどころか痛くもなかった。


 その後大胆にも手の平に対してのこぎりのように刀を前後させても全くなんともなく、摩擦で少し熱くなるだけで少しの傷もつかなかった。


 私は不思議に思い、かまどや湯沸かし用に使う薪が置いてあるところに行って、大き目の物を一つ手に取り地面に置いて軽く振り下ろすといとも簡単にほとんど力を入れていないにも関わらず真っ二つになった。


 ・・・まさか、この刀は自分を傷つけないようになっているのか?いや、ひょっとしたら今両手には元気の素で包まれた膜があるからそれで防御されてるのかも。


 そう思って今度はブーツを脱いで足の裏を刀で切ってみたのだが相変らず全く切れなかった。


 次に私は今しがた真っ二つにした薪をキッチンに行って戻し、キッチンにあった調理用ナイフを手にして親指に軽く当ててサッと刃を引いてみたところ、血が出ない程度に指の皮が切れたのを確認したのだが、すぐにその傷が消えていくのをこの目で間近に見た。


 恐らくまだ両手に集めた元気の素が残っているからじゃないだろうかと推論し、今度は足の脛あたりを軽く切ってみた。


 まずは手を当てずにそのままにしておくと、傷口から少し血がにじんできて、さらにそのまま放置していても指の時のようにみるみる傷口が治っていくことはなかった。


 そこで今度は右手をかざしてみたところ、みるみるうちに傷口は塞がっていった。


「おぉーーーっ!やった!やったぞ!成功だ!」


 私は誰もいないキッチンで思わず声を出して喜んだ。


 その実験の後はそれまでと打って変わって真面目に本を読み進めていった。途中昼食を挟み、夕方になっても読書は続いた。


 そろそろ暗くなって字が読みづらくなったのと、腹が減ってきたので夕食に出かけようかと思っていたところ、何やら美味しそうな匂いがしてきて玄関の方に行ってみると、護衛の人達が食べ物をたくさんテイクアウトしてきたようだった。


「皆さん今日は家で食事ですか?」


「おう!タナカの分もあるぞ、商人が次の旅について打ち合わせをするというから買ってきたのだ」


「あっ、そうなんですね」


「そうだ、クッキー美味かったぜありがとうよ」


「あっ食べてくれましたか、それは良かったです」


 図書館の帰りに買ったクッキーは皿にのせて食卓の上に置いておき、その際みんなでたべてくださいと紙に書いておいていたのであった。


 さすが商人の家なだけあってここには紙があり、上質な白い紙から茶色くて不純物が結構混じっているメモなどに使う紙もあり、さらにここ数日本を読んだことで文字の練習も兼ねて書いていたのだ。


 ちなみに文字はひらがなというかアルファベットしかないので漢字とかカタカナなどの文字を覚えなくてもよいというところも良かった。

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