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タナカカナタのカタナ  作者: キクメン


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第25話

 片田舎にある分家のモルサール流剣術道場の当主であるロレオン・デ・モルサールは、数人の上級者を呼んで何かを試すようだった。


 目の前には三人の上級者がやってきたが、当然全員私よりも大きな身体で前腕の筋肉がとんでもないことになっていた。何より眼光が鋭くて怖くてまともに目を合わせられなかった。


「タナカよ、すまんがその剣を試させてくれんか?」


「あっはい!いいですよ」


「大事な剣にはすまぬが床に置いてみてくれ」


「分かりました」


「さて、誰かこの剣を持てるかどうか試してみよ」


「・・・では私から参ります・・・ンッ?」


「・・・スゥーハァー、スゥーハァー、スゥーハァー・・・ッ!!・・・私には無理にございます」


「では私が・・・」


 結局三人とも剣を持つことは出来なかった。しかも全員護衛の人達と違って諦めが早かった。


「どれ、ワシも・・・ウン、こりゃ無理じゃ、やはりこれは魔の剣じゃな、剣が持ち主を選んでおる」


「そんなものがこの世にあるんですか?」


「実際目の前にあるじゃろうが、ってまぁワシも会合で話を聞いて初めて知ったんじゃがな」


「この少年・・・いや、人物はどなたですか?」


「ウム、彼は魔の森から生還したという探検家で戦士のタナカだ、どちらも3級ランクじゃぞ」


「なんと!この人物がですか!?」


「初めまして、田中かなたと申します、性が田中で名がかなたです」


「ホウ、珍しいの、オヌシ東の出の者だったか」


「はい、日本という国をご存知ないでしょうか?ジャパンと呼ばれているかもしれませんが」


「ニホンにジャパン?・・・いや、どちらも知らんなぁ、恐らく大分遠い東の地にある国かもしれん」


「島国なのですが・・・」


「ならばなおのことじゃな、ここから海のある地までは相当遠い、半年はかかるんじゃないか?」


「えっ!そんなに遠い先にあるんですか?」


「ああ、ここは大陸の真ん中にあるからのう、誰か知ってる者はいるか?」


 三人とも首を横に振って知らないと答えた。さすがにもうここは私がかつて住んでいた世界とは全く違うという事を認識した方が良いかもしれない。


「さて、では次にそうじゃな・・・両手剣で一番重いのを持って来てくれんか?」


「私が持ってきます!」


 上級者の一人がすぐに返事をして急ぎ足で剣を取りに行った。


「タナカは腰のベルトを外して動きやすくしておいてくれ」


「分かりました」


 そうして私は床に置いていた刀を鞘に納めてベルトを外して床に置いた。確かに鞘がない分こちらの方が動きやすい。


「お持ちしました」


「ウム、タナカよ、この剣で先ほどの動きをやってみせてくれ」


「わっ!大きいですね!私に持てるでしょうか?」


 その両手剣は私の身長程の長さで刀身の幅も驚く程広かった。とても振り回せるとは思えない程に大きな剣で、よく一人で持ってこれたもんだと感心する程だった。


「ウチでこれを振り回せる者は何人おる?」


「ここにいる三人だけで、縦に振り下ろして止めることが出来るのは今は私だけです、この場にはいませんがソルドンも出来ます」


 ここでソルドンの名前が出てきた事に少し驚きながらも彼の腕前に感心した。


 巨大な両手剣を持ってきた人は私の時と同じように剣を床に置いて、ではどうぞと言った。


「それでは失礼します・・・スゥーハァー、スゥーハァー、スゥーハァー・・・ってうわっ!!」


「「「オオーッ!?」」」


 その見た目から相当重いだろうと思って、かなり踏ん張って気合を入れて思い切り力を込めて持ちあげてみたところ、全然重くないどころか軽すぎて私は後ろにのけ反ってひっくり返りそうになった。


 ともあれ、なんとか体勢を立て直して正眼の構えをとり、無限マークの素振りを開始した。


 重くはないが大きくてやりにくく、なかなか小さく鋭く速く素振りをおこなうのが難しかった。


「し、信じられん!」

「なんという力だ!」


「ホウ、オヌシ大した膂力(りょりょく)じゃのう、ウム、だが分かった、オヌシ腕だけで回しとるぞ、足の力も使おうとしておるが背中でせき止められておる、なんというか・・・そうじゃな、腰と背中をこうクネクネさせてみよ」


「クネクネ・・・ですか?」


「クネクネ、じゃ」


「やってみます」


 ロレオンから指摘されたように、私は腰をクネクネとまるでなまめかしい女性の踊り子のダンスのようにクネクネさせてみた。


「そうそう、そのまま肩の付け根辺りの背中もクネクネさせるんじゃ、動きは大きいままゆっくりで良い、足から発した力をせき止めずに腰から肩へと伝えるんじゃ」


 ヴォン、ヴォン、ヴォン・・・


「おお!」

「凄い!」


 これまで発しなかった音がし始め、段々と動きもスムーズになってきて、少しずつしっくりくる感じがしてきた。


「そうじゃ、段々良くなってきておるぞ、どうじゃ?腕の力はあまり必要ないと感じないか?」


「はい!感じます!腕は剣がすっぽ抜けないようにしっかり握ってるだけで良い感じです」


「ならばその握りも少しずつ緩めてみよ、剣先を切り返すときにギュッと握ってそれ以外はすっぽ抜けない程度に少しずつ軽く握るようにせよ」


「はい!」


 ヒュン、ヒュン、ヒュン・・・


「「「オオーーーッ!」」」

「ホウ!大したもんじゃなぁ!よしよし、続けられるだけ続けて見よ」


「はい!」


 いつの間にか私の周りには大勢の人達が集まっていて結構恥ずかしかったが、それでもロレオンのいう通り大剣を振り回してひたすら無限のマークを描き続けた。


 10分、20分、30分・・・既に観衆など目に入っておらず、私はまたしても無心で無我で夢中になって無限のマークを描き続けた。すると・・・


「ヨシ!ヤメエェイッ!!」


 ドタドタドタ!


 裂帛(れっぱく)の気合のごとく、まるで雷でも落ちたかのようなロレオンの声が響き渡り、練習生の中で数人が腰を抜かして座り込んだ。


「よし、うーん・・・うん、お前が良い、お前プレートメールを着て来い、あと脇の下辺りに何かクッションになるものをいっぱい敷き詰めろ、あとそうじゃな、誰か練習用のなまくらの剣を持ってこい、あと・・・まぁ必要ないとは思うが一応頑丈な兜を一つ持ってきてくれ」


 練習生達は否定も理由も聞かず、すぐに返事をして支度をしに行ったが、私は何となく嫌な予感がしてきた。


 先にすぐに兜となまくらの剣が届き、案の定嫌な予感の通りロレオンは私に兜を被るように言った。


 それから間もなくして最も体が分厚い人がより一層体を分厚くして戻ってきた。それはまるで中世ヨーロッパの合戦にでも行くかのような恰好で、見るからに頑丈そうな金属鎧を着ていた。


「よし、準備できたな、ではタナカよ今の動きを人を相手にしてやってみせよ」


「えっ!今ですか?」


「案ずるな、練習じゃ練習、お前の方はタナカの頭に向けて真っ直ぐ剣を振り下ろすんじゃ」


「タナカはそれを払いのけて脇の下に斬り返してみよ」


「分かりました!」


 と、すぐに答えたのは私ではなく分厚い体の練習生の方だった。この中では私だけが口答えをしているような感じでかなり恐縮するものがあった。


 上半身だけではあるがプレートメールを着込んだプロレスラーのような大男と、どうみても華奢な一般人が対決する光景はあまりにも滑稽だった。


「では始めィッ!」


「エイッ!」

「うわっ!」


ヴォ!フォッ!ガコォォォン!!ドスゥン!


「「「オオオーーーッ!!」」」


 何が何だか分からぬうちに、私の目の前には尻餅をついて床に座り込んでいる重装鎧の人がいた。さらに・・・


「あそこの壁に突き刺さっているぞ!」


 練習生の一人が指を指した方を見ると、なまくらのはずの剣が壁に突き刺さっていた。一瞬自分の剣かと思ったが自分の剣はちゃんと両手に持っていたが、そこでようやく剣をしっかり見てみるとグニャリと90度近く曲がっていた・・・

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