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タナカカナタのカタナ  作者: キクメン


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第148話

 洞窟の入り口前に荷車を置いてリュックを背負い、私達は洞窟の中へと入っていった。


 先が見えない程に木製の階段が続いたが、割と緩やかな斜面なので一般の観光客でも進めそうだった。

 また等間隔でランプが置かれており、かなり太くて長いロウソクが入っていて数日おきに交換するのだそうだ。


 まだ早朝という事もあり、観光客は誰もいなかったので私達は駆け足で進み、普通の人がゆっくり歩くとおよそ1時間で到着するコースを私達は10分もかからず到着した。


 壁画のあるホールは垂直とまではいかないけれどかなりの急斜面になっており、今はジグザクに手すり付きの階段が設けられていた。


「当時は真っ暗で突然急斜面になったものですから、うっかり足を滑らせて滑落してしまったのです」


 なるほどと私達は頷き、よくぞこれで即死を免れたものだと思った。


 階段を下りている途中で既に綺麗にライトアップされている壁画に気付き、確かに上空に大きな八面体が描かれているのが分かった。


「わぁ大きいですねぇ」


「はい、各地で描かれた壁画の中でもこの壁画が最大で、しかも他の壁画と違って洞窟内にあったため、絵具がそれほど色落ちしていないんです」


 一番下まで降りて見上げると10メートル程はありそうな巨大な壁のキャンバスに例の八面体が中央に大きく描かれており、それらを仰いで万歳しているような人々が描かれていた。


 そしてこれまで私達が見てきた壁画と明らかに違う点として、壁画の一番外側の部分には荒々しい波や渦巻が描かれた海と空からは激しい雷が落ちている様子が描かれていた。


「なんだか凄い迫力だ」


「うん、これってもしかして、大変な自然災害が発生した時に、あの真ん中に描かれている大きなアレが人々を助けたっていうことなのかな?」


「そうだと思います、ほとんどの人がそのように想像しますね」


「他にもこれと同じような絵はあるんですか?」


「はい、東の果てに近い場所にある古代遺跡でも似たような絵が描かれています」


「それはどんな絵ですか?」


「この絵と同じように大荒れの海が描かれていて、人々が流されているのですが、次の絵では人々は安全な場所で両手を上げていて、その上にはやはり神の菱形が宙に浮いています」


「ポロントさんは東の果てまで行ったことがあるんですか?」


「ええ、今から5年くらい前だったでしょうか、半年ほどかけて最大海近くまで行きました」


「最大海?」


「はい、この地で最も大きな海ですね」


「その近くに日本という名の場所はありますか?もしくはジャパンというかも知れませんが」


「・・・私の知る限りなかったと思います」


「そうですか・・・」


 我ながらなかなかあきらめが悪いと思いつつも、もしかしたらという思いで聞いてみたが、やはりこの世界は現実世界と全く関係がない事がはっきりした。


「うん?もしかしてポロントさんが口にしたコケってあれですか?」


 私は数メートル先の地面に生えている緑色のコケを指さした。


「そうです、あれです」


 私達は近付き、しゃがんで足元に生えているコケをよく観察してみた。


「クンクン・・・特に匂いはないですね」


「ムシャムシャ・・・味もないよ」


「わっ!リュウト!大丈夫?」


「・・・ゴクン・・・うん平気!でも、魔の森の果物に比べたら味がないから美味しくないなぁ」


 この場にニッキかシルビアがいれば、ステータス画面でこのコケがどういうものか確認してもらえるのにと私は少し残念に思ったが、その後リュウトの体に何かが起こることもなかったので、今の私達にとっては特に有益なものではないと判断した。


 リュウトはともかく、普通の人がこのコケを口にすることはまずないだろうから、このまま放置していても大丈夫だろう。


 せっかくやってきたので、何か他に八面体に関するものがないか周辺を調査してみる事にしたが、ポロントが長年に渡り調査して、しかも観光客用に通路を整備した時もしっかり調査しているので、新たな発見はないだろう。と、思っていたのだが・・・


「・・・キュキュ?キュキュキュウ?」


 リュウトが少しかじったコケが気になっていたスラちゃんが付近のコケを調べていたところ、何か気になる事があるようだった。


 スラちゃんはまさしく流体金属のような体なので、私達には気付きにくい地面付近の目線で調査する事が出来る上に、何やら別の金属探知機センサーのようなものが働いたようだった。


 そして私の胸に飛び込んできたのでキャッチして、スラちゃんに触れると何やらコケの生えている地面から何かを探知したとの事だった。


 私はポロントに地面を掘っても良いかと尋ねると、この辺りは極めて硬い岩盤なので、掘るのは不可能に近いとの答えが返ってきた。


 ポロントのリュックにはピッケルが入っているようで、もしかしたら私の超人的な力ならば掘れるかもしれないので取り出して試してみるかと言われたが、いったん断り、私はなんとカタナで硬い岩盤を掘削ではなく切削してみる事にした。


「ムッ?さすがにかなたのカタナでもそれは無理なんじゃないか?大事なカタナが最悪刃こぼれするぞ」


「わっ、それもそうだね、やめようか・・・」


『・・・かなた・・・』


「えっ?」


 プゥ~~~~~~~~~~~~ン


「わっ、なんだ?蚊か?蚊がおるぞ」


「ホントだ!蚊が飛んでる音だ!」


「えっ?この洞窟には蚊はいないはずなんですが」


「いや、これは僕の刀から出てる音だ!」


「かたなのカタナに蚊がおるのか?」


「分かった!物凄く小さく速く振動してるんだ!」


「なんだって?カタナがか!?」


「うん!凄く小刻みに速く刀が振動してる!アハハハハ!痒い!なんか腕が痒い!」


「あっ、かなた兄ちゃん!コレって多分!」


「うん、きっとコレで切ってみてってカタナが言ってるんだと思う!えっと・・・スラちゃん、一番何かを感じる場所を教えて!」


「キュウ!・・・キュウ~・・・キュキュキュ!」


「そこだね!じゃあ斬るよ!」


「キュキュキュ!」


 フィイーーーッ!!フィイーーーッ!!フィイーーーッ!!フィイーーーッ!!


「うわっ!凄い音だ!」


「聞いたことない音がする!」


 物凄い甲高い音が洞窟内に響き渡ったが、斬ってる本人は特に激しい手応えを感じることはなく、自然と刃が勝手に地面を進んでいくような不思議な感覚だった。


 硬い岩盤がいとも簡単にカタナによって切削され、まずはVの字に切り込みを入れるとスラちゃんがその部分にくっついて取っ手の形に変形し、シャルが取っ手になったスラちゃんを掴んで持ち上げると岩盤がボコッと取れたのでそれを横にどけた。


「ゴクリ・・・とても現実に起きているとは思えない光景ですな・・・」


 確かにポロントの言う通りあまりにも非現実的過ぎてもはや馬鹿げている程の光景だった。


 ともあれそうした馬鹿げた馬鹿力を発揮して、硬い岩盤を掘っていくと、銀色に光る塊が出てきた。


「えっ!コレってまさか!?」


 そこからはその塊を傷つけないように慎重に周りを少しずつ切り取っていくと、その塊が八面体である事が分かった。


 それは砂漠の地下で遭遇したものよりも一回り小さく、全長70センチ程度で横たわっていた。


「ゴクリ・・・もしかして、死んでいるのか?」


「分からない・・・でも確かに動かないね」


「まさかオイラ達お墓を掘り出しちゃったの?」


「うっ・・・だとしたら凄く悪い事してしまったかもしれない・・・」


 私がそう言うと同時に塊の一点からレーザー光線のようなものが天に向かって発射された。


「うわっ!」

「わぁっ!」

「やっ!」

「キュッ!」

「なんと!」


 私達は身構えたが、特に何も起こらず、ただ静かに天井に向けて一筋の光が伸びているだけだった。

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