第147話
ポロントは古代壁画については全て発表したが、このコケに関する事と自分の身体が超人になってしまった事については発表せず、これまで通り自分の好きな考古学研究に打ち込む事にした。
これはいよいよムルギンが打ち立てた仮説、死にかけた人間が魔の森の食べ物を口にすると、死なずに超人になれる説が現実味を帯びてきた。
私達も今はまだ魔の森に関する情報は世の中に与える影響が大きすぎてとても危険なので、発表しない方が良いと言い、今度は金属宇宙生命体と思われる八面体についてこちらの情報を全て伝えた。
「う・・・うちゅう、じん・・・ですか・・・それは神とは異なる存在なのでしょうか?」
「ある意味神と言っても良いかもしれません、なにせ私達の人知を超えた力を持った存在ですから」
「確かにそうですね、だからこそ各地の遺跡や壁画にそのように描かれていたのでしょう」
その後途中昼食休憩を挟みながらポロントからこれまでの調査内容をじっくり聞かせてもらい、古代壁画のある洞窟に案内してもらう事になった。
普通の人だとここから3日程度かかる場所にあるそうだが、私達ならば恐らく余裕で1日で到着可能な距離だろう。
そうして明日の日の出頃に大門前に集合という事で解散したが、ポロントの壁画に関する話しはとても面白く外に出たら夕日が沈む時間になっていた。
ポロントに一緒に夕食を食べないかと誘ったが、久しぶりの調査活動がとても楽しみで、色々準備をしたいとの事で先に家に帰っていった。
私達は昨日の続きの屋台の店から回ることにして、今日も色んな屋台料理を大いに楽しみ、明日の朝に食べる料理や日持ちする食べ物に加えて、屋台の人に事情を説明して食材を売ってもらい、最後に昨日大いに気に入ったカクテルを飲んで宿に戻った。
宿の受付カウンターにて、明日日の出前に古代壁画の調査に出かけるので、状況によっては数日戻ってこない可能性があると伝え、明日早朝に一応チェックアウトしようと思うと言うと、3日までは部屋を確保しておくと言ってくれた。
そうして翌朝、私達は日の出前に宿を出て、荷車を引いて1階層の大門へと向かった。まだ人通りがないのでスロープを進むのではなく、シャルと二人で荷車を持ち上げて階段を10段飛ばしで転がり落ちるように爆走した。新聞配達や牛乳配達や畑仕事に行く少人数の人からかなり驚いた様子で目撃された。
日の出前に大門に到着すると、ポロントはまだ来ていなかったので昨晩買ったピロシキに似たパンを食べたが、冷めてもとても美味しくて満足した。
ほどなくして大きなリュックを背負ったポロントがやってきた。
「お待たせしました!皆さんお早いですね!」
「おはようございます、ポロントさんそちらのリュックは荷車に乗せてはどうですか?」
「よろしいのですか?色々入っているので結構重いですよ?」
試しに持ってみたが全然余裕の軽さだったので、全く問題なかった。とはいえ荷車のサスペンションの板バネはそこそこ沈んだが。
さらに私とシャルはかなり足が速いので、ポロントも荷車に乗るように勧めた。ポロントは超人能力を隠すために普段人目のある場所では普通の人と同じ速度で歩いたり、わざわざ荷馬車を利用していたようで、早朝とはいえここには門番や畑仕事に出かける人もいるので、申し訳ないと言いながら荷車に乗った。
ポロントによると古代壁画のある洞窟が発見されてからは観光客もやってくるようになり、そこまでの道は整備された上に観光客相手の商売も成り立つので道中には茶屋や休憩所もあるとの事だった。
「うほォー!こりゃ速い!そんなに飛ばして疲れないんですか!?」
「この速さなら4時間くらいは休みなしで走るぞ、だけど疲れる前に腹が減るんだ、そして昼飯を食べたらアタイがかなたと交代して走るんだ」
「それは凄い!これなら夕方には洞窟のある山の麓まで余裕で到着しますよ!」
その後昼食のために止まった以外はひたすら移動し続け、小腹が減った時は交代で荷車の上でおやつを食べて進んだおかげで、ポロントの予定よりも少し早い時間に洞窟のある山の麓の小さな村に到着した。
早速宿に行ってチェックインを済ませようとしたところ、探検家組合とは関係ない一般運営の宿にも関わらず、ポロントとリュウトを見た受付の人がすぐに経営者を呼んできて、一番良い宿を無料で提供してくれる事になった。
ポロントが超一級探検家で、リュウトが神の使いだという事を知っていたからという理由も大きいが、それ以上にポロントの古代壁画発見のおかげで、これまで狩猟と山菜を取って自給自足をするだけだった小さな貧しい集落が今や皆観光客相手の商売をする事で大分生活が豊かになった事に対して最大の恩義があるとのことで、お礼代わりとして当然だとの事だった。
その後も夕食に良さそうな食事処を探すために村を歩いていた時もポロントを見るや村の人達は皆頭を下げて礼を言い、続けてリュウトを見て大いに驚かれるという状態だった。
やがて賑やかで繁盛していそうな食事処を見つけたので、そこに入るとやはりそこでも店の人がわざわざ店主を呼んできて、個室に案内されて大いに歓迎されて美味しそうな地元料理を沢山ご馳走してくれた。
美味しい地元料理をたらふくご馳走になり、大満足で宿に戻ってお風呂に入ったが、有難いことに天然温泉の浴場があり、これまた実に心地よい風呂で大満足だった。
「まさか、ここまで観光業が盛んだとは思いませんでした」
「そうですねぇ、古代壁画だけではここまで栄えなかったと思います、観光地として名高い町からそう遠くない上に、温泉の質が良いのと地元料理が美味しいという点が気に入られているのではないでしょうか」
「そうですね、地元料理は美味しかったですし、ここの温泉風呂も最高ですよ」
「ハァ~・・・良い気持ちだぁ~」
「キュウ~・・・」
そうして私達は一日の疲れを癒してからグッスリと眠り、いよいよ古代壁画のある洞窟へと向かう事にした。
朝早くからやっている食事処で朝食をとり、お弁当におやつも買って登山を開始した。
「道もしっかり整備されてるからラクですね」
「ええ、多くの観光客が来てくれるおかげですね」
ポロントに道を尋ねなくても道案内の看板があるので矢印に向かって進むだけで良く、時折道が分かれているが、それはお目当ての洞窟以外にも綺麗な高山植物を眺めるためのルートであったり、乳白色の源泉を眺めるルートや、定期的に間欠泉を眺めることが出来るルートだった。
「古代壁画だけだと、すぐに見終わっちゃいますからね、それ以外にも自然の風景を楽しめるための散策用の道を整備したのでしょう」
「なるほど、さすがですね」
「そろそろ見えてきますよ、あっ、アレです!」
普通にハイキングを楽しみながら会話しているようだが、実際には凄まじい速度で荷車を押して進んでおり、普通の人が4時間近くかけて到着する場所に、私達は40分程で到着した。
「いやはや本当に皆さんとんでもない肉体をお持ちですね、私ではここまで早くはこれないですよ」
「魔の森の食べ物を食べたからというのもあるが、もともと剣の修行でかなり鍛えていたし、その後もかなたと一緒にあちこちに行って一日中走ったり、盗賊達と戦ったりしてきたからより一層強くなったのかもしれん」
「ははぁなるほど、しかしまた凄い日々を送られているようですな、なるほどどおりで数々の偉大な発見をなされるわけです」
こうして第三者に自分の日常生活を評価されると、とても平穏で普通の暮らしとは程遠い事を再認識させられた。この世界で目覚めた当初は穏やかな日々を送りたいと思っていたはずなのだが・・・




