第145話
それから10日程が過ぎ、2度程盗賊達の襲撃にあったが、シャルのマンツーマン実践指導の成果もあり、私も素手で相手を気絶させる事が出来るようになってきた。ちなみに相手からの攻撃は一度もかする事すらなかった。
そうしてのんびりと各地の美味しい物を食べて、観光も楽しみながら進み、中央都市を出てから二週間程が過ぎたところで、南東で最大の町に到着した。
「うわぁー!凄く眺めの良い町だ!」
「うむ、母ちゃんが凄く良かったって言ってたが、これは本当に見事な景観だ」
「こりゃスゲェ~!」
「キュキュウ~!」
その町は河岸段丘と呼ばれる地形に作られた町で、まさに階段状のようになっており、段丘面と呼ばれる平坦な場所には建物が建てられており、段丘崖とよばれる急な崖の部分には長い階段が作られていた。
そして上段の部分には美しく立派で大きな建物が建てられており、下段の部分には一般住宅や商店などが建てられていて、近隣には美しい畑も多数あった。私達は早速足取り軽く町へと向かっていった。
特に門前払いを食らうこともなく、一番下のエリアにある大門から町へと入ると、最初に町を一望した時に感じた時以上にとても大きな町である事がわかり、しかも段々になっている風景が見ていてとても面白くてワクワクするものがあった。
「この町凄く面白い!オイラこの町とても気に入ったよ!」
「ホントだ!ここは実に面白い町だ!」
「キュキュ!キュキュー!」
これ程魅力的な町なので当然観光客達も多くいて、大門のすぐ近くには町の大きな案内図があった。
私達はこれまでの村や町のように単に一泊して通過するだけというのをやめて、気が済むまでしばらくこの町に滞在して観光を楽しもうと決め、まずは探検家組合に行って組合直営の良い宿を教えてもらいに行く事にした。
早速案内図から探検家組合のある場所を探すと、どうやら二段目のエリアにあるようで、階段なら最短距離だが荷車や馬車のためのスロープもあり、そちらはジグザグに斜面が設けられているようだった。
私とシャルの怪力なら荷車など軽々持ち上げて階段を上ることが出来るが、結構人の往来が多くて迷惑をかけそうなのでスロープで行く事にした。
そうして他の荷車の後ろに並んでいると、体格が良く元気な人達がやってきた。
「荷物運びぃ!荷物運びはいりませんかぁ!」
「そこのお客さん!荷物運びはいりませんか!?その荷車なら一段500ダリルで運びますよ・・・って、うわっ!その空飛ぶトカゲはまさか!!」
「知ってるぞ!新聞で見た!神様の使いだ!」
「ってことはお客さん達はまさか・・・」
シャルは待ってましたと言わんばかりに、マスクを取り出して被ってこう言った。
「極一級の探検家、世直し仮面だ!」
「「「 オォーーーッ! 」」」
「どうか是非とも我らに荷車を運ばさせて下さい!お題は結構ですから!」
「それは有難いが、オヌシらでは無理だと思うぞ」
「???」
荷物運びは荷車を引こうとしたが、ビクとも動かず他のメンバーも加わって後ろから力いっぱい押しても動かなかった。
「一体これには何を乗せているんですか!?」
「フフフ、これにはアタイと師匠の剣があるのだ、それも魔の森で手に入れた剣で、アタイ達以外の者には持てないようになっている不思議な力があるのだ」
「「「 オォーーーッ! 」」」
荷物運び達が少し残念そうな顔をしたので、私とシャルはそれぞれ刀と剣を荷車から取り出して、せっかくなので荷物を運んでもらう事にした。
「どこまで行きますか!?」
「探検家組合までお願いします」
「分かりました!オオッ!さっきとまるで違って軽いです!これなら私一人で十分です!」
「お二人が荷車に乗ったらやっぱりまた重くなって全く動かなくなるんですかい?」
別の荷物運びが質問してきて、確かに私もどうなるのか知りたくなってのでシャルと二人で荷車の上に乗ってみた。
荷物運び達が全員集まって荷車の前後から掛け声をかけて力いっぱい押し引きしたところ・・・
「・・・せぇーの!」
ゴロゴロゴローッ!!
「うわっ!とととっ!」
ズサーーーッ!
勢いあまって前で引いていた二人が後ろから突き飛ばされるようにして派手に転んだ。私とシャルは全くバランスを崩すことなく微動だにしなかった。
「・・・イタタタタタ」
「わっ!大丈夫ですか!?」
「はい!これくらい平気でさぁ!」
「あっ、すりむけて血が出ていますよ」
私は手を当てて荷物運びのヒザに手を当てた。
「うわっ!スゲェ!痛みが取れていく!あっ!傷が塞がった!血が止まった!こりゃスゲェ!」
「そっちの方は?」
「大丈夫です!血は出てねぇです!痛ッ!」
「あっ、結構腫れて内出血してますよ」
私はもう一人の荷物運びにも手当てを行った。
「ひゃあ!みるみるうちに痛みが消えていく!腫れもどんどんひいていく!こりゃたまげた!」
「この町一番の手当て使いよりも凄い手だ!さすが極一級探検家さんだ!」
「それにしても不思議ですね、さっきまでビクともしなかったのに今度は軽々としましたぜ?」
「フム・・・アタイ達が剣を所持していれば剣も安心するんだろう、別々の場合は他の誰かに持ち去られないように剣が動くのを拒んでいるのかもしれん」
「ははぁなるほど、さすが魔の森の剣ですなぁ」
普通に聞けば極めて非現実的な事なのだが、荷物運びの人も私もシャルの言う通りだと納得した。
その後私達を乗せた荷車は荷物運びのリーダーらしい人が一人で引っ張っていく事になり、この町の名物や名所を教えてもらいながら進んだ。
程なくして探検家組合に到着し、組合直営の良い宿について聞くと最上段にある高級宿を教えてもらい、荷物運びの人は外で待っていてくれたので、最上段までまた運んでもらうことになった。
「はぁ~さすが極一級探検家ですなぁ・・・ここはそりゃもう下手すりゃ一泊の宿泊費でもアタシらのひと月分の稼ぎ位はしますぜ」
「いやぁ~それが一応極一級になると、組合の特別割引があるんですよ」
「へぇ~そうなんですね」
「だが高ランクの組合員は登録費用に純金貨1枚もかかるんだ」(シャル)
「そんなにかかるんですかい!探検家ってのは大変な職業なんですなぁ・・・」
私は荷物運びに謝礼を渡そうとしたが、荷物運びはそれを断り、神の使いと私達を運べた事が自慢出来ると大いに喜んで、またいつでも声を掛けてくれれば無料で運ぶとまで言ってくれた。
「良い人だったね」
「うむ、この町の人は元気と愛嬌があって、変に飾ったり丁寧過ぎないところが良い」
「なんかオイラの故郷もこんな感じの人が多かったような気がする!あまり覚えてないけど!アハハ!」
そうしていったん先に宿に隣接する荷車や馬車置き場にいって、見張りをしている人に利用料金を尋ねたところそれは宿泊料に含まれるとの事だった。
とりあえず荷車を置いてから宿屋のエントランスに入って受付カウンターに向かうと、確かにかなり高級そうな宿というのが一目でわかり、カウンターテーブルは天然の総大理石で作られていた。
最初からリュウトがパタパタ飛んでいたので、受付の人は私達がどういう人物か察した様子で、いつも通り私は極一級のライセンス証を見せると「新聞で拝見致しました、お目にかかれて大変光栄です」と言ってくれた。
もちろん部屋は最上階の最上級の大部屋で、果たして通常料金だと幾らになるのか分からないが、宿泊費は何と無料だと言われてしまい、私は驚いて聞き直す程だった。どうやら各地の組合直営店には通達がいっており、費用は全額組合が支払うとの事だった。




