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タナカカナタのカタナ  作者: キクメン


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142/145

第142話

 それまで地面の裂け目が出来ていた場所は完全に塞がって芝生になり、例の果物がなる背の低い木が出現し始め、さらに泉も湧き始めた。


 これでこの場所全てが完全に人工的に作られていることがはっきりした。


 辺りはすっかり暗くなっており、今夜も八面体は暖かくて甘い美味しいドリンクを差し出してきたので、皆で飲むとまたしても心地良い気分で眠くなり、全員その場で横になって寝た。


 翌朝八面体の金属音ではなく、疑似太陽の明るさで目を覚ますと、芝生の上には沢山の衣服と装備品が綺麗に横に並べられていた。


 キィン、キィン、キィン、キィン


 私達が起きてそれらを見ていると八面体は音を発したが、いつもと同じような音なのに何かとても悲しい感じに聞こえた。


「きっとオイラ達が寝ている間に、持って来てくれたんだと思う・・・」


「うん、そうだね・・・」


 私は八面体に静かにゆっくり近づき手を伸ばし、初めてそれに触れた。八面体は避けることなく私に触れられるままにしていた。

 すると私が手をあてて触れている部分がオレンジ色に光って点滅し、ほんのり暖かくなった。


 10秒ほどそれが続き、私はこの場所で何が起こったのか理解する事が出来た。明瞭な言葉による説明でもなければ、映像が頭の中に映し出されたわけでもないのに、何故かここで何が起きたのか理解出来た。


「ええと・・・みんな集まってくれるかい?」


 皆どうした?と理由を聞くこともなく、すぐに集まってくれた。皆が仲間で本当に良かったと思った。


 すると次の瞬間で私達は元の砂漠へと転移した。


 私達は砂漠中央部の神殿遺跡の本殿の前に出現し、沢山の遺留品と私達の荷物も全て一緒に転移されていた。


 驚くべきことに、地下世界に行く前に損壊していた場所は元の状態に修復されており、石畳に空いた大きな穴と地下世界に続く階段はすっかりなくなり、元の石畳の床に戻っていた。


 幸いな事に地下世界に行く前に置いてきた大きなそりもそのままの状態で置かれていたので、私達は遺留品を丁寧に集めてそりに乗せ、南の村へと引き返すことにした。


 帰り道の道中で私は八面体に触れて知った事、ここで一体何が起きたのかを皆に説明した。


 今から百年ほど前に大規模な地殻変動が起きて、地下世界の機械もその影響を受けて少なからず損傷してしまい、そのせいで物質転送装置の制御がおかしくなってしまった事が今回の原因だった。


 そして今回の探検家達に限らず、この百年以上の間これまでも被害者は出ていたが、今回のように短期間で大勢の人に被害が出たのは初めてだった。


 残念ながら遥か以前に被害に遭われた人達の遺留品は人工環境に取り込まれてしまい既に残っておらず、どれくらいの人達が被害に遭われたのかも分からないとのことだった。


 そして驚くべきことにあの金属八面体には感情があり、とても申し訳ない事をしたという謝罪と悲しい気持ちと私達の協力に大いに感謝する気持ちが伝わった事を説明した。


 ただ、短時間の接触だったのと、私もその時はそこまで思いつかなくて聞けなかった事として、彼らが何者でどこからやってきて、あの地下世界は何のために作ったのかとか、遥か昔にこの世界に住む人類と一体どういう関係だったのかなど、今にして思えば聞いておけば良かったと思う事が全く聞けなかった事を皆に謝罪した。


「確かに気になるが、そのうちまた同じようなヤツに会えるさ!その時覚えてたら聞けばいいんだ!それにアタイは聞いても理解出来ない気がする」


「アタシも難しすぎて分からない気がする」


「オイラ優しい宇宙人で良かったと思う、それだけ分かれば十分だよ!」


「そうですね!」


「優しい金属さんで良かったです!」


「キュキュキュウ~」


 その後昼過ぎに南の村に到着し、リーやギャラガ達と合流すると、村にいる探検家組合の職員から砂漠付近出身の探検家や案内役の行方不明者の名簿が提示され、早速村の公民館に行って遺留品の確認を行うことにした。


 いったん全ての遺留品を取り出し、多くの職員の人達が丁寧に並べて一つ一つ入念に調べていった。


 私達はギャラガに同行した新聞記者にこれまでの事を説明しようとしたが、宇宙人に加えてザンブロワの事も含めて果たしてこの場で全て言ってしまっても良いものか判断に悩み、ひとまず最重要な事は中央都市に戻って各組合の中央部代表や町長達と検討した方が良いと思うと言うと記者も同意してくれた。


 そうした理由でまずは速報として、私達が全員無事に戻ってきたことと、残念ながら行方不明者達は死亡したが遺留品はほぼ全て持ち帰ったという内容の速報をリーに頼んで速く飛ぶ鳥に送ってもらった。


 遺留品の鑑定調査は夜まで続き、私達は村に一泊したのだが、少々残念な事に無事戻ってきた事と行方不明者達の遺留品を持ち帰った事に対して感謝を込めた慰労会を開きたいとの申し出に、実は10日程全くお腹が空かない凄い食べ物を食べたので残念ではあるが気持ちだけ頂くという事で断らざるを得なかった。


 翌日の午後に全ての遺留品鑑定調査が終了し、持ち帰った37名分の遺留品のうち、19名が近隣の村出身の人達だという事が分かり、それらはこの村でしっかり管理し、必ず身内の人に届くようにすると言った。


 私達は残った遺留品を引き取り、中央都市に向けて急いで戻る事にした。何せまだ八面体が作ってくれたスープの効力が続いているので、今度は食事はおろかご当地グルメ堪能も封印して夜に宿屋で眠る以外はほぼノンストップで進む事にした。


 そのおかげで行きは10日程度かかったのが6日の夕方過ぎに中央都市に到着した。


 今日はそのままマチャントの借り屋敷に向かおうとしたが、さすがに私達集団はかなり目立つ上に超有名人なのですぐに中央都市の職員が駆けつけてきて、お城の貴賓室に部屋を用意してあると言われたので、彼らに従ってお城へ向かう事になった。


 食事はどうするか聞かれたので、明日までは必要ないと答えたところ職員は少しだけ?という表情をしたが、それでは明日の朝食からお持ちしますと言ってくれた。


 その後かつての城にある貴賓室へと到着して、皆風呂に入ってさっぱりして着替えてから早めに横になって休むことにした。


 翌朝、久しぶりに素晴らしく豪華な朝食がズラリと並べられ、私達は10日ぶりにようやく戻った食欲を大いに満たすことにした。


「宇宙人さんが作ってくれた凄いスープも美味しかったけど、やっぱりオイラは毎日お腹が空いたら美味しいものをお腹いっぱい食べる方がいい!」


「同感だ!アタイもちゃんとお腹が空いてご飯を食べる方がいい!」


「「「 うんうん! 」」」

「キュウキュウ!」


 そうして私達は沢山のご馳走を一つ残さず全て食べて、久しぶりの満腹感と満足感に満たされた。


 その後しっかり食休みを取った頃に職員の人がやってきて、そろそろ事情聴取を行っても良いかと聞いてきたので私達は準備オーケーだと伝えた。


 そうして貴賓室近くにある広い応接室にて、都市長や各組合の中央代表と各有識者に対して今回の一件について報告を行う事にした。


 私はもうこの際、今回起こった事や以前魔の森で遭遇した宇宙人についても一切隠すことなく全て報告する事にした。

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