第139話
「私はニッキです、えっと・・・ザンブロワさん、よろしくお願いします」
「私はリーと言います、ザンブロワさん、よろしくお願いします」
「キュゥー!」
どうやらはぐれメタルスライムのザンブロワは、ニッキ達の言っている事が分かっているようだった。
「その・・・色々とお辛いかと思いますが、ザンブロワさんも僕達と一緒に行きますか?」
「キュゥー!」
ザンブロワは私の胸に飛び込んできて、肯定の意思表示をしてきた。ザンブロワに触れた途端嬉しいという感情が伝わり、私はとても愛おしくて癒される存在だと思った。
その後シャル達が無事合流してきて、互いに無事の再開を大いに喜び合った後で、もう一度ザンブロワ達の身に起こった悲劇について説明すると、やはり皆涙を流して悲しんだ。
「出来ればこの場所で亡くなった方々の遺留品を全て持ち帰ってあげたいんだけど皆はどう思う?」
「「「 賛成! 」」」
即答で全員一致だった。
「キュウキュウゥー」
ザンブロワは皆に感謝しているようだった。
「ただ、その前にそろそろギャラガさん達が到着している頃だと思うから、先にこちらの状況を伝えたいと思う、ええと・・・」
「私が行って伝えてきましょうか?」
リーがまるで以心伝心のように、私の意を汲み取って言ってくれた。
「そうしてくれるかい!?」
「はい!まかせて!」
「ありがとう!出来れば組合の方で確認出来ている行方不明者の正確な人数と名前の一覧をもらってきて欲しい、それから危険だから砂漠には近寄らないようにって言ってきて欲しい」
「分かった!」
「あと・・・先にこの人達の遺留品を届けて欲しいんだけど・・・いいかな?」
「もちろん!」
「キュウ!キュウゥー!」
「どういたしまして!」
どうやらリーもザンブロワの感情が分かるようだった。明瞭な言葉としてではないが、心の気持ちが伝わるのである。
リーには余裕をもって2日後の夕方にリュウトがブレスを吐いて居場所を知らせ、もしその日に戻って来れなくても朝昼夕の3回ブレスを吐いて知らせるという取り決めをした。
そうしてリーはザンブロワの分も含めて7人分の遺留品が入ったリュックを持って、私とリュウトがやってきた階段へと飛んで行った。
残った私達は早速行方不明の他の探検家達の捜索を行う事にした。
「確か以前組合の方は23人の探検家の皆さんが行方不明だって言っていましたね」
「アタシも23人って記憶してる、ただ道案内とかで一緒に随伴した人達は分からないって言ってたよね」
「そうだね、今7人の探検家達の分を回収したから、後は16人分とそれ以外の人達だね」
「キュウ」
私はザンブロワの意図をなんとなく読み取って、胸に抱くとザンブロワは「キュウウウー」と鳴き、またしても明瞭な言語としてではなく、思念として考えている事が伝わった。
「ザンブロワさんは超一級の探検家だから、道案内人とかは一緒にいなかったようだよ」
「なるほど!さすが超一級だ!」
「うーんと・・・アタシにちょっと考えがある」
ムルギンは少し考え込んでからそう言った。なんといっても彼女はあの大樹海でほぼソロ活動で過ごしてきたのでこういう時は断然心強い。
ムルギンの考えでは、私とリュウト以外全員南の遺跡で飛ばされてきて、皆同じような場所で出現してきたので、この瞬間転移にはある程度は規則性があるという考えで、その点は私も同意見だった。
そして私とリュウトは中央の神殿、まさしくそこが目的地と思われる場所の地表から、転移されたのではなく自らの足で降りてきたので、この不思議な地下世界においてもそこが中心点だろうと言い、この2つの地点から東西と北の方角が分かり、行方不明者の捜索もその3地点を重点的に調べれば見つかるかも知れないと言った。
「凄い!ムルギン姉ちゃん!オイラ絶対それが良いと思う!」
「さすがだムルギン!」
「さすがです!」
「ムルギンがここにいて本当に良かった」
「キュウウー」
「まずは東から向かおう、北は恐らく一番最後で良いと思う」
「それって皆街道に近い南の村から出発したからってことかい?」
「そう、北の村から向かった探検家は恐らくほとんどいないと思うんだ、そして西の村の先にはリュウトがいた岩石地帯があるからそっちの方からも恐らく探検家達は出発していないんじゃないかと思う、だから後は東から出発したんじゃないかな」
「でもどうして南からじゃなく東の村から出発した人達がいたんだろう?」
「確か東にはそこそこ大きな山があってそこから吹き降ろす風を背に出来るからかも知れない、昼までは太陽を背にして進むからまぶしくないし、追い風だから目や口に砂も入ってこない、そして帰りはそのまま西に抜けるつもりだったんじゃないかな」
「キュウー!」
「褒めてくれるのかい?ありがとう」
周辺の地形までしっかり頭に入っていて、とても合理的な推論をするムルギンはそれはもう舌を巻くほどに頼もしかった。
早速2地点間の方角をしっかり確認してから、一応疑似太陽の位置と影も使って確認して、目指すべき方角を指し示した。
リュウトに上空から進行方向を確認してもらい、途中で何か所か背の低い木々が行く手を遮っている事が分かった。
この木々は結構厄介で、普通の森や林にある木と違って背が低い分枝が邪魔で間を抜けるにはしゃがんだり四つん這いにならないと進めなかった。私とシャルの刀と剣で伐採しながら進めないことはないがそれでも百メートル以上もそうやって進むくらいなら普通に迂回した方が早いし疲労度も低い。
そのため時折大きく迂回してはリュウトとムルギンが方角を確認して軌道修正して進む手間が生じて、皆の超人的脚力を持ってしてもそれほどすぐには目的の場所まで到着出来なかった。
とはいえこの場所は砂漠や大樹海と違って至って平穏で快適な場所なので、ほとんど疲れ知らずの超人的な私達は休む事無くどんどん進み続けた。
「キュキュ、キュキュキュウー」
「えっ?ああ、うん、実はね、僕達はここにある木の実に似たものを魔の森で食べたことがあるんだ」
「キュキュキュ!キュウキュキュキュウー!」
「うん、僕達はアレを食べても平気だったんだ、後でちゃんと説明するけど、僕達はアレを食べた事でこうして凄い身体になったんだ」
「キュキュッキュ、キュキュキュウ!」
「凄いなかなた、良くザンブロワの言ってる事が分かるな」
「うん、なんかね、ザンブロワさんに触れていると、何を言っているか分かるんだ」
「どれ、アタイにも抱かせてくれ」
ザンブロワはキュウと同意したので、私は胸に抱いていたザンブロワをシャルに渡した。
「キュキュキュ、キュキュキュウ」
「やっ!ホントだ!何を言っているのか分かるぞ!どうして皆はあの果物を食べても平気なんだ?って聞いてる」
ザンブロワの発する音の長さと言っている内容の言葉の文字数の長さにかなり開きがあるが、恐らくスライムが発している音には濃密な音の情報量が圧縮されているのだろう。
「確かにその通りだ、アタイは一度アレを物凄く薄めたのをほんの少しだけ飲んで仮死状態になった、もしかしたらそれで少しは慣れたのかもしれんが、ムルギンはそんな事なく最初から丸かじりして食べたぞ、何で死ななかったんだ?」
「いや、二人とも一度死んでるからね、白キノコを食べた後それこそ二人とも白目になって呼吸も心肺も停止して、それこそ僕の方こそショックで死にそうになる程心配したよ」
「そうだった、スマン」
「アハハハハハ!あの時は心配かけたね!でも確かにそうだね、まさかアレを食べたら身体がドロドロに溶けて死ぬなんて分かっていたら、絶対に食べなかったよ、シャルが美味しそうに食べるからついアタシも不用心に食べちゃった、それに一口食べたら物凄く美味しかったし・・・あっ・・・うーん・・・」
「どうした?」
ムルギンは何故かそこで立ち止まって、少し考え込んだようだった。




