第137話
「あの時と同じだ!魔の森にあった大きな三角のやつだ!」
リュウトが声を上げるのも無理はなく、壁には以前魔の森で遭遇した大きな二等辺三角形の八面体が描かれていて、その下には大勢の人々が万歳していて、一段高いところにはまたしても宝飾された杖を高く掲げた人物が描かれていた。
「宇宙人だ!やっぱり宇宙人が昔も来ていたんだ!この遺跡もきっと宇宙人が作ってくれたんだよ!」
確かにリュウトがそう想像するのも頷ける程に、今目の前にしている壁画の絵は説得力があった。
「続きを見に行こうよ!何か描いてあるかも!」
私は頷き、早速次の部屋に行こうとしたが・・・
カチャカチャカチャ!
「わっ!なんだ!?」
次の部屋に行こうとしたその瞬間、カタナが小刻みに震え始めた。
ガタガタガタ・・・
今度は床が小刻みに震え始めたので、私は全く迷うことなく松明を投げ捨ててすぐに今来た道を猛ダッシュで戻った。リュウトも理由を尋ねることなくしっかり私の腕に抱き着いて一緒に脱出した。
グラグラグラ・・・
揺れはますます大きくなっていき、常人ならばバランスを崩して立っていられない程にまでなったが、私はおかまいなしに全力疾走した。
ガラガラガラ!
いよいよ壁が崩れ始め、天井からは即死級の大きな石の崩落が始まったが、まだそれほど奥まで進んでいなかった事と、私の超人的な肉体能力のおかげで間一髪それらをかわして本殿の玄関ホールから脱出する事が出来た。
そうして石畳のところまで戻るとなんと石畳の中央部分に大きな穴が空いていて、遥か先の地下まで続く階段が出現していたのを見た。
「「 ・・・ゴクリ・・・ 」」
またしても私もリュウトも声を出す事を忘れて、その階段を驚きの表情で凝視した。
あまりの驚きで完全に忘れていたが、先ほどまでの大きな揺れはすっかり収まっていて、本殿も完全な倒壊には至っておらず、外見上はそれほど損壊しているようには見えなかった。
私とリュウトはお互いに見つめ合って強く頷き、念のため近くにあった小屋の残骸から松明に使えそうな木材を幾つか拾ってから一言も発することなく階段を下って行った。
15分程降りたところで踊り場があって折り返してまた下っていき、天井から差し込む光が届かなくなってきて暗くなり、そこからさらに15分程降りた踊り場に達すると明かりがないと真っ暗なので、リュウトの極小ブレスで松明に明かりを灯して降り続けた。
階段は石の階段というよりは真っ白いコンクリートのような階段で、まったく風化した感じはなくすごく表面が滑らかで綺麗だった。
なんと1時間以上も地下へと休みなく降り続け、恐らく普通の人ならヒザはガクガク笑って、太ももの筋肉も乳酸が出て筋肉痛になっているかもしれないが、私は一向に何ともなく疲れ知らずで降り続けた。
いよいよ降り始めてから2時間が経過しそうなところで、これまでの踊り場とは違う、大きなホールらしき広間が見えてきた。
「「 ・・・ゴクリ・・・ 」」
リュウトと私は音が聞こえる程ツバを飲み込んで、さらに用心しながら階段を降り続けた。
やがて最後の一段を降りてホールに降り立つと、突然辺りはとても明るくなり私達は思わず身構えた。
さらに驚くべきことに私達が立っているサークル上の舗装された床の先には芝生が広がっており、さらにその先には背の低い木々や泉や小川まで見えた。
「凄い!まるでさっき壁画で見た所みたいだ!」
まさにリュウトの言った通りの風景が広がっていたが、どうにもどこか自然的ではない感じがした。
特に危険な感じはしないのでサークルから出て芝生の上に立つとさらに私の違和感は増した。余りにも綺麗すぎるのである。歩きやすく見栄えの良い短さに刈り揃えられた芝生はいかにも人工的なのだ。
そして空を見上げると青い空を模しているが、明らかに本物の空ではなく、とてもリアルな映像のように見えてしまうのである。太陽も同様だった。
私達はさらに先を進んで、背の低い木のある場所まで歩いていくと、何やら見覚えのあるピンク色の実がなっていて、漂ってくるその香りも魔の森の小屋近くにあった果物と全く同じだった。
私は一つ手に取ってかなり丈夫な茎をカタナで切ってもぎ取り、鼻に近付けて香りを嗅いでから一口かじると、リュウトもかじりついた。
シャクシャク・・・ゴクン・・・
「うん、間違いなくこれは前に魔の森で食べた果物と同じだ」
「うん!美味しいね!」
もしもシャル達も同じような場所に飛ばされていたとすれば、これで一応食料と水の問題は解消したという事で私は少し安堵した。リュウトも同じことを考えたようでそうした発言をした。
残りの果物を半分に分けてリュウトと食べきったところで私は今度は別の不安が頭をよぎった。
「どうしたの?かなた兄ちゃん」
「もしも行方不明だった人達がこの果物を食べたとしたら・・・」
「あっ!普通の人には猛毒なんだっけ!わぁ!どうしよう!大変だ!!」
そう、これまでマチャントや他の人達から、普通の人間は魔の森の物を食べると死ぬという話しを聞いていたのだ。だがしかし既に私達にはもうどうする事も出来ず、ただただ奇跡が起きて無事生き残っている事を願うしか出来なかった。
私はさらに進んで今度は小さな泉へと近づくと、まさに魔の森の小屋近くにあったのと同様の泉があり、とても綺麗な水が湧き出ていたので顔を近付けてそのまま飲んでみると、その味も小屋近くにあったとても美味しい泉の水と一緒だった。
泉はそのまま小さな水路となって流れていき、その先にある同じような幾つかの泉の水路と合流して小川になって流れていた。
私達はその小川に向かってさらに歩いていき、小川の中を覗いてみると驚くべきことにそこには30センチ程の魚が数匹泳いでいた。
リュウトが素早く魚を捕まえようとすると、魚は全く逃げることなく容易く捕獲され、口をパクパクするだけでまるで抵抗しなかった。リュウトは優しく小川に戻すと、魚はまた何事もなかったかのように泳ぎだした。
「なんか変だよこの魚!」
「うん、分かる、これは明らかにおかしい・・・もしかしたら食料として食べやすいように作られた魚のような気がする・・・」
「それって宇宙人が作った魚ってコト?」
「そう思う、この場所にある物全てが人工的に作られたんだきっと・・・」
「オイラなんだか少し怖くなってきた・・・」
リュウトはもう一度私の腕にしがみついてきた。
確かに私も少し気味が悪くなってきたが、リュウトがいてくれるおかげで気分は大分和らいだ。しかしそれだけにニッキやリーの事を思うと、たった一人でいるのはとても心細い思いをしているかも知れず、一刻も早く皆と合流したかった。
「そうだ!リュウト、空に上がってブレスを出してくれるかい?」
「あっそうか!皆に知らせるんだね!分かった!」
これだけ広い地下空間だから問題ないと思うが、遠くに見える景色は映像で実はそれほど広くないとかだとリュウトのブレスで燃えたり溶けたりしないか少し心配だった。
ゴオオーーーッ!!
そんな心配をよそにリュウトは景気よく盛大にブレスを吐いた。ブレスの火炎の線上の空の映像が途切れたのがハッキリ分かり、やはり空は人工的に描き出された映像だというのが証明された。




