第135話
3分程で古代遺跡の広い石畳の上に無事到着し、全員腰を下ろして水を飲んで落ち着いた。
「ムルギンの言った通り、リーが消えたのを確認してからあんな短時間であれだけ掘っても見つからないのはどう考えてもおかしい、それに底なしの穴だったとしても必ず叫び声とか聞こえてもいいはずなんだ」
「確かにそうだね、誰も気づかない程静かに消えるのはおかしい、穴とかなら必ず叫んで伝えるはずだし、そもそもリーは飛んで逃げられるし、ニッキだって凄い身体能力で回避出来るはずだよ」
「そうだ!リー姉ちゃんは空を飛べるんだ!落とし穴なんかに落ちるはずがない!」
「そもそも全く音もなく消えるのがおかしいぞ、アタイはモルサール流の気配察知には自信があるが、それでも気付かないというのは尋常じゃない」
「・・・これは底なし沼とかアリ地獄みたいな落ちていく穴じゃないと思う、もしかしたら・・・」
「ファンタジーに良くある転移魔法みたいなもので、瞬間的に転移されたとかでしょうか?」(シルビア)
「古代遺跡の謎の力かも!」(リュウト)
「なるほど・・・あれ?だとしたらなんで昔は発動しなかったんだろう、かなり昔は大勢の観光客で賑わっていたって聞いたけど、その頃に行方不明者が出ていたら観光どころじゃなかったはずだよね」
「あっそうか!」
「昔は発動していなかったって事ですよね・・・」
「凄いね君たち、アタシらには何の話しをしているのか良く分からないよ」
「うむ、さすがちきゅうじんだ」
「えっと、ある場所から突然消えて別の場所に行く現象の事を言っているんだよ」
「それってかなた達がちきゅうから突然やってきたのと同じって事か?」
「それとは別の気がする、ニッキもリーも地球で亡くなって目を覚ましたらこの世界に来たと言っているから、今みたいに突然一瞬でいなくなるのはそれとは別のような気がするんだ」
「これに関してはアタイ達にはさっぱり分からないから、かなたがそう思うというならそうなんだろう」
「で、これからどうする?」
「うん・・・どこかに移動したとして、それがどこなのかと考えると、リュウトの言う通りこの古代遺跡の何かの力だとすれば・・・もしかしたら遺跡の中央部に送られたとかっていうのはどうだろう?」
私は広い砂漠の東西南北に遺跡があるのは、そこから中央の遺跡に行くための瞬間移動装置なのかも知れないと想像した。ある意味駅のような存在だ。だとしたら何故今私達がいる遺跡の石畳の上じゃなくてその周辺のなんでもない場所でニッキ達は突然消えたのだろうか?装置の誤作動か何かだろうか?
「すげぇ兄ちゃん!それじゃないか!?」
「そうですね、移動装置なのかも知れませんよ!」
「何か分からんがさすがかなただ!」
「アタシも良く分からないけど、かなた達がそういうなら行ってみて確かめよう!」
グウ~~~ッ
「その前にかなたは腹ごしらえが必要のようだ」
「そうだね、あれだけ凄い勢いで穴を掘ったらそりゃお腹もすくよね」
「そういえばそろそろお昼の時間ですね」
「オイラもお腹空いた!」
大事な仲間が消えたというのに薄情だと思われるかもしれないがそんな事は決してなく、私達は当然仲間を心配する気持ちは強いが、同じくらい超人的能力を持つ仲間を信頼しており、さらにここで我を見失って慌てて行動するのはかえって良くないと判断し、体も頭もしっかり働くように栄養補給する事にした。
一応食料は保存の効くものを含めて多めに持って来ているので全員満腹になるまで食べなければ5日程度はなんとかなりそうだった。
そうしてひとまず昼食を食べて空腹を満たし、水分補給代わりになる水をたっぷり含んだ瓜を食べた。
するとシャルとムルギンがおしっこをしたくなったとのことで、全員腰にロープを巻いたままなので私達も一緒に付いて行くことになった。
以前大樹海を探索した際、用を足すときが一番危険だという事でうんこをする時もシャルやムルギンが近くにいる所でしなければならず、さらに言えばこれまで何度も水洗トイレどころか下水道すらないような村で過ごしてきたので強制的に大分慣らされてきた。
それでも一応レディが用を足すのをガン見するわけにはいかないので見守り役はシルビアに頼んで、私とリュウトは背中を向けることにした。
出来れば音もかき消してあげたいところだが、どうやらこの砂漠の砂はとても吸水性が良いようでほとんど音は聞こえなかった。
それから数分程が過ぎて、さすがにそろそろ終わったかなと思って後ろを振り返らないまま声を掛けたのだが誰からも返答がなかったので、私とリュウトは互いに目を大きく開いて見つめ合ってから、すぐに後ろを振り返った。
「わぁ!いない!皆いないよ!かなた兄ちゃん!」
目線の先には3つの輪のままの状態で落ちているロープしかなかった。
「間違いない!これは瞬間移動だ!砂の中に落ちたんじゃない!」
「うん!アリ地獄だったらかなた兄ちゃんも引っ張られてたはずだもんね!」
「そう!しかも今回も全く誰も声を上げないまま消えた、シャルなら必ず声をかけたはず、そのシャルの声すら聞こえなかった程に一瞬の出来事だったんだ」
「どうする?かなた兄ちゃん」
「そうだね・・・まず、僕等も少しこの遺跡周辺をグルグル回ってみよう、僕等も瞬間移動するかもしれない」
「分かった!」
リュウトは離れ離れになるのを恐れて私の右腕にしっかり抱き着いた。お互い超人的肉体を持つ身なので抱き着いているリュウトも抱き着かれている私も全く問題なくいつまでもこの状態でいられる。
私はそりを引っ張って遺跡の石畳から降りて砂の上を歩き始めた。
リュウトと一緒に遺跡の周りをグルグルと3周したのだが何も起こらなかったので、いったん停止して少し考えてから当初の考え通り中央の遺跡に向かって進む事にした。
だがしかしここで問題が生じた。
残念ながら私では真っすぐ迷わず中央の遺跡に向かって進む事は出来ないのである。今ここには太陽の位置などを利用して正確に方角を把握出来るムルギンがいないのだ。
幸いな事にリュウトがいるので空高く飛んでもらえば中央遺跡の方角は分かるのだが、その間別れ別れになってしまい、もしも先にリュウトがいなくなれば私だけで迷わず中央部の遺跡に向かうのは極めて困難になる。それどころか元の村まで戻る事すら厳しくなるだろう。
それでもこのままこの場所に留まっているわけにもいかないので、私は時々リュウトに方角を修正してもらいながら中央部の遺跡に向かう事にした。
本来ならばいったん村に戻って体制を整え、助けを呼んで大勢の捜索隊を編成するべきなのだが、さらに多くの行方不明者を出しかねないのと、一刻も早くシャル達と合流したいため、敢えてたった二人という非合理で正しくない選択をした。
ちなみにリュウトが試しに私をぶら下げて飛んでみたが一応高度2メートルまでは頑張ったが、それ以上は無理だった。
「かなた兄ちゃん、どこにも行かないでおくれよ」
そう言ってリュウトは最初の飛行を開始し、空高く上昇していったが、チラチラと何度もこちらを見ながら上昇していった。




