第134話
リーとリュウトが村に到着したという事で、私達はご当地グルメを堪能するのを少し控えて真面目に突き進んだ。
完全にご当地グルメ堪能をやめないあたりが私達らしかったが、砂漠地帯近くになるにつれて目立ったご当地グルメがなくなってきたという理由もあった。
そうして3日が過ぎた夕方に私達はリーとリュウトのいる砂漠地帯の南端にある村へと到着したが、街道沿いにある村なので人と物の流れが盛んで、町と言っても良いくらい大きくて賑やかな村だった。
ニッキもさることながらシルビアは誰が見ても一瞬で分かる姿なので村に入った途端大歓迎で、村の門には垂れ幕まで用意されている程だった。
早速オープンスペースのフードコートのような広場に案内され、様々な屋台の料理がふんだんに用意された大テーブルに着席すると、リーとリュウトもやってきて、皆大喜びで飲食した。
行方不明者の捜索というとても重要な任務の途中だというのに私達も村人達もまるでお祭りのような賑やかさで、この時点ではまるで緊張感の欠片もない有様だった。
そんな一夜が明けて翌朝、さすがに今日は私達も真剣な面持ちで捜索活動を開始した。といっても2名程楽しそうな表情のメンバーがいたが。
「わぁ凄い!見渡す限りの砂の山だ!大樹海とは大違いだよ!」
「アハハ!歩きにくい!モルサール流歩方術だと砂を巻き上げて全然ダメだ!」
リーとリュウトの事前捜索ではあらかじめ地図で確認していた砂漠の東西南北と中心地点にある遺跡に向かう足跡を幾つか発見したが、時折発生する強い風で途中で消されていて追跡は困難との事だった。
また、リーは鳥達にも頼んで結構広範囲に捜索したが、誰一人として発見出来ず、焚火の跡とか装備品などの落とし物も見つからなかったそうだ。
とりあえず現地に行ってみる事にして、まずは南にある一番近い遺跡の跡へ向かう事にした。
荷車は車輪がきめ細かい砂に埋まると考え、そりに変更してシルビアが引っ張ってくれたが、さすが八本足で体重を分散させているだけあって、陸上ではこの砂漠でもシルビアが最も移動速度が速かった。
シャルのいう通りここではモルサール流歩方術が使えないので通常の駆け足で進んだが、太陽が照り付ける砂漠の上を駆け足で進むなど常人では自殺行為に等しかったが私達にとっては全く苦ではなかった。
一応私達は丸くて大きな日よけ傘のような帽子を被っており、シャルとムルギンはカラフルな軽装の上に通気性の良いマントを羽織っていて、私は以前買った革の軽装鎧を着込んでいるという状態だった。
本来ならば暑さで熱中症になりそうなものだが、確かに暑さは感じるものの特に体調に不調をきたすような事もなく駆け足で進み続けられた。恐らく魔の森で食べた何かの作用で寒さだけでなく暑さに対する耐性も強化されたのではないだろうか。
また、実に頼もしく有難いことに、この広大な砂漠の中でもリーやリュウトの上空確認と大樹海でも迷わず進めるムルギンの方角認識能力のおかげで全く迷わず一直線に最初の遺跡へと進むことが出来た。
そうして何度目かの大きな砂丘の頂点に登ったところで、お目当ての遺跡があるのが見えた。
「わぁ凄い!立派な石の柱が何本もあるよ!」(ムルギン)
「ホントだ!よく壊れずに残ってるもんだ!」(シャル)
「そろそろ何か起きるかもしれないから、皆用心して進んで」
「「「 了解! 」」」
立派な大昔の遺跡を見てつい急いで行きそうになるのを制して私は皆に警戒するように注意した。
私の一言で皆しっかり周辺を警戒しながら駆け足をやめて慎重に進んでいったが、遺跡に近づくたびに最初に見たときの印象よりも遥かに立派で大きな柱に魅了されて、そちらにばかり目がいってしまった。
「ひゃあーでけぇーっ!空から見た時は気付かなかった!」(リュウト)
「うわぁ~ホント!コレは大したもんだよ!」(ムルギン)
「凄いな、大昔の人はどうやってこんな大きな柱を作ったんだ?」(シャル)
「一つも傾いていないですし、どれも壊れていないです、凄いですね!」(シルビア)
「柱の彫刻もまだ残ってるみたいです!何が描かれているのでしょうか!」(リー)
「ホントだ、何が描かれてるんだろう・・・って、あれ?一人足りないような・・・って、あれ?ニッキ?ニッキはどこ?えっ・・・まさか・・・」
「大変だ!ニッキがいないぞ!かなた!」
「ええっ!?ニッキ姉ちゃん!どこ!」
「ニッキさん!」(シルビア)
「ニッキ!」(ムルギン)
「ニッキさぁーん!!」(リー)
「足跡!ニッキの足跡は!?」(ムルギン)
「私にまかせて下さい!」
シルビアは8つの目で地面を注視した。本当に頼りになる。
「あっ!ありました!・・・あっ、でも途中で途切れてます!」
私達はシルビアの背中を追った。全員シルビアの背中をしっかり見ながら進んでいってしまった。
「ここです!」
「やっ!ホントだ!」
私はすかさずそりからスコップを取り出して、途切れたニッキの足跡の先の周辺をまるで小型のショベルカーのように凄まじい速度で掘り起こした。
ザッ!ザッ!ザッ!ザッ!
「ニッキ!」(自分)
「ニッキ!」(シャル)
「ニッキ姉ちゃん!」(リュウト)
「ニッキさん!」(シルビア)
「ニッキ!」(ムルギン)
ザッ・・・
「ムッ、どうした?かなた、何か見つかったか?」
「いや、また一人足りないような・・・ってあっ!リーがいない!」
「「「 ええっ!! 」」」
「ホントだ!リーがおらん!」
「わぁー!リー姉ちゃーん!」
「リィーッ!」
「リーさぁーん!」
「みっ!みんな!そりの周りに集まるんだ!」
私達は急いでそりの周辺に集まって互いをしっかり確認し合い、私はロープを取り出して腰に巻き、シャルに渡してシャルも腰に巻いてからムルギンに渡し、同様にムルギンも腰に巻いてからシルビアの胴体に巻きつけて縛った。
リュウトは空を飛んでいるので、もしも降りるときは地面にではなくそりの上か私の頭かリュックの上に降りるように言った。
そしてたった今来たばかりの道の方を振り返ると、分かりやすいリーの足跡を見つけ、途切れた箇所の少し先にリーの羽を見つけたのでその地点をスコップで掘りはじめ、猛烈な速さでさらにどんどん深く掘っていったがまるでリーの姿は見つからず、羽一つ見つからなかった。
「そんなバカな!リーが消えてからそれほど経っていないのにこんなに掘っても見つからないなんて!」
「かなたのいう通りこれはおかしい!こんなに速く沈んでいくなんてあり得ない!大樹海の底なし沼だってこんな速くない!」
「ヤバイぞかなた!どうする!?」
くそっ!どうすればいいんだ!?確かに少し緊張感が足りていなかったけど、まさかこんなにも早く、それも超人的能力者がこれだけ集まっているのに、誰一人気付かず立て続けに行方不明になるなんて!
うかつだった!何が超人的能力者だ!明らかに慢心していた!ちくしょう!僕は!僕はどうすれば!
『・・・かなた・・・』
「ハッ!?」
私はパッと顔をあげて見渡してみると、そこには皆が心配そうに私の顔を見ている事に気付き、フゥーと深く息を吐くと何故か自分でも妙に冷静になる事が出来た。
「砂の上は危険だ、いったん遺跡の石の床の上に行って考えよう」
冷静な私の提案に皆真剣な表情で頷き、さらにシルビアからの提案でシルビア以外全員そりの上に乗ってシルビアに引っ張ってもらう事にした。
それにしてもさっきの声は一体・・・




