第133話
翌日リシャールは公務のため先に帰っていき、ニッキは残って私達と一緒に過ごして数日が過ぎたが、その間私とシャルはお忍びでモルサール家を訪問し、シャルは久しぶりの家族再会を喜びこれまでの活動報告を行い、私の方はというと相変わらずヴォルタークからなかなかにトゲのある言葉を受けつつもちゃっかりしっかりマリーの手料理を味わってお泊りもした。
また、新聞社からリーの描いた絵が大変好評だという報告がもたらされ、リーは絵本作家になりたかったという夢を語ると新聞社から是非不定期連載でも良いから何か描いて欲しいと頼まれて、引き受けるつもりだと話してくれた。この世界では現実世界のように出版業が盛んではないので新聞社が受け持ち、印刷業も新聞社の管轄の一部となっていた。
マチャントは今の借屋敷は三ヶ月契約をしているとのことで、それまでの間好きな部屋を自由に使ってくれと言ってくれて、リーはとても喜びつつも何か仕事を探して家賃を払ったり生活費を稼がなければと言って考え始めた。
本来神の使いに労働させるなどもってのほかで、町や都市をあげて神の使い達には無償で快適な生活を提供するのは当然の事と考えていたが、神の使いである本人達がそれを望まず、出来れば自分達でしっかり自立した生活を送りたいと言っているので、さすがに神の使い自らがそう言うのであればそれを否定する事は出来ないので、町としても出来る限りの協力をするという事になった。
そこで私は鳥にお願いして手紙を届けたりするのはどうかと言うと、まさにそれが一番だといって採用され、さらに大きな鳥にお願いして空から荷物を届けるのはどうだと提案してみると、マチャントからもそれは凄く良いビジネスになると同意してくれた。
早速どこまでの荷物をどれくらいの距離でどの程度の日数で送り届けられるかの実証実験を行う事にし、商工組合に事業説明と協力要請を得るためにリーと一緒に組合に出かけて行った。
こうしてリーの自立生活の方針が決まり、私達も出来る限りの協力を行って過ごして一週間ほどが経った頃、そろそろシルビアとムルギンとニッキは家に帰ろうかと言っていたところで、探検家組合の職員が訪問してきた。
グルミンが対応に出ていたらしく、職員の人を連れてやってくると、何やらあまり良い報告じゃない雰囲気だというのが分かった。
職員はまず突然の訪問を心を込めて謝罪し、私達は職員をなだめて何があったのか聞いてみた。
「最近新たな神の使い様を探しに行く探検家が急増しているのですが、北東地域の中央部にある砂漠地帯にて行方不明の探検家が続出しているのです」
「あっ、それって多分オイラが目を覚ました場所から遠くの東にあった場所の事だ」
「なんと、そうでございましたか」
「どれくらいの探検家の人達が行方不明になっているんですか?」
「確認出来ているだけで23名の探検家の方々が行方不明です、道案内人などの随伴要員の方も含めるとさらに増えると思います」
「その付近に住んでる人はいるのか?」(シャル)
「砂漠の外縁部地域に小さな村が幾つかありますが、今のところ特に村人達に問題はないようです」
「その辺りには古い遺跡とかってあったりするの?」(ムルギン)
「はいあります、相当古い文献や近隣の村に伝わる話しでは中央部に幾つか古い遺跡があるようで、当時はまだ幾つか小さな緑地と地下水脈から湧き出る泉があり、割と観光客達で賑わっていたそうです」
「組合の方々はどう考えられているんですか?」
「幾つか意見が出ているのですが、例えば魔の森のような危険地帯になっているとか、危険な生物や自然災害が発生しているなどが出ています、さらには・・・申し上げにくい事ではありますが、邪神の神の使いが出現したという意見も出ています、と言いますのも、かの地を探索する探検家はいずれも5級以上のライセンス保持者で、中には超一級探検家として名高いザンブロワ氏もおりまして、例え過酷な砂漠といえどもそう容易に遭難することはあり得ないのです」
「かなたよ、これは我々が行って調査するべき事案だと思うぞ」
「オイラもそう思う!行かなくちゃ!」
シャルは真剣そうなセリフを言いながらもリュウトと一緒にとても嬉しそうな顔をしてそう言った。
「砂漠は行ったことないし面白そうだからアタシも行きたい!」
「ムルギンが行くなら私も行きますね」
「もしかしたら同じちきゅ・・・いや、神様の使いかもしれませんから私も行きます!」(ニッキ)
「私も行ってお手伝いします、鳥さんにお願いして下見や連絡も出来ますから」
「おおなんと!そう言っていただけますか!皆さんが勢揃いとあればとても心強いです!」
結局私は一言も行くと言わないまま行くことが決定してしまったが、確かに私もこれは実際に現地に行ってみる必要があると思った。
しかしその後思ってもみなかった方向に話しは膨らんでいき、神の使い達が勢揃いして行方不明の探検家達の捜索に行くという事が新聞に大きく掲載され、さらに捜索には新聞記者も同行するという事になり、その新聞記者を護衛するためにギャラガ達も一緒に同行するという事態に発展した。
これまでは自分達だけ行動していたので、結構自由に思い付きで行動していたが、さすがにこちらの世界の普通の人間、それも新聞記者が同行するので、常に自分達の言動には注意する必要が生じてしまった。
といっても常に新聞記者を引き連れて行動しなければならないという束縛はなく、私達は自分達の身の安全を最優先にほぼ自由に行動して良く、新聞記者もなるべく私達の活動の邪魔にならないようにすると上層部から書面で確約されたので、その点については私も大分安堵した。
その後数日程かけて組合職員や新聞社職員などから役に立つ情報を得たり捜査活動プランについて共に検討してもらい、マチャントやギャラガ達からは捜索活動に必要な装備品などを揃えてもらった。
こうして準備は整い、私達は北東地域中央部のある砂漠地帯に向けて出発した。
先にリーとリュウトが先行して上空ルートで一直線に砂漠地帯外縁にある村へと向かう事になったが、私達が捜査活動を行うと決定した段階で既に該当の村々には今回の捜索活動について通達しており、各村の受け入れ態勢もしっかり整っているとの事だった。
私達も魔の森を抜けて進めば直線距離的に近いし、我々の脚力ならば問題はないのだが、そんな私達でも魔の森を抜けた先にある険しい岩山地帯を抜けるのは行けない事はないが、食事や休息の観点で快適とは程遠いので通常の街道ルートで進む事にした。
何よりあちこちの村や町に立ち寄ってご当地グルメを楽しめないという点で満場一致で不採用となった。捜索活動なのにご当地グルメ堪能とか、なんとも不謹慎ではあるが・・・
私達は以前購入した小型だが車輪が頑丈で原始的な板バネ方式ではあるがしっかりサスペンション装置が付いている荷車を使って全員人力でマイペースで進んだが、それでもギャラガ達の馬を置き去りにする速度で進んだ。
これについてはあらかじめ説明済みで、ギャラガ達のペースに合わせていては私達の能力と時間がもったいないので、事前に打ち合わせ済みの行動だった。
ただ出発後数日程は時折とても美味しいご当地グルメがある町や村にて、大いに堪能している時に追いつかれてしまう事が度々あった。
それでも4日程過ぎた辺りからはゆっくりご当地グルメを堪能していても追いつかれることはなくなり、私達は自慢の超人的脚力をいかんなく発揮してどんどん突き進んでいった。
そうして中央都市を出発してから一週間が過ぎたところで立ち寄った村にて、リーとリュウトが砂漠外縁の村に到着したという連絡が届き、明日から上空からの捜索活動を開始するとの事だった。




