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タナカカナタのカタナ  作者: キクメン


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第131話

 町役場はかつての石造りの歴史的建造物を利用しているのでとても町役場とは思えないくらいに広くて立派な玄関ホールで、何も知らずに入ったらどこに行けばいいのか戸惑ってしまう程だった。


 しかし今の我々はかなりの有名人で、しかも今は遠くからでも明らかに目立つリーが傍にいるので、玄関ホールでも注目の的で、案内窓口など探さなくても向こうからこちらにやってきてくれた。


「なんと!そのお方が新たな神の使い様ですね!」


「コニチハ、ワタチナマイ、リー・シーユエ、イイマス、ヨロチクオネガシマス」


「あっ凄い!リー言葉覚えるの早い!」


「ホントだ!大したもんだ!さすが神の使いだ!」


「まさにおっしゃる通りです!感激です!それでは私が案内致しますのでどうかご同行願います」


 そうして私達は職員の後についていき館内奥へと進んでいった。


 建物は石造りで極めて立派な歴史的建造物の趣があり、リーはあちこち見回してとても喜んでいた。


「スゴクリッパ!スバラシイタテモノ!」


「有難う御座います!この建物は数百年前に建てられた重要施設なんです、敵の攻撃にも耐えられるように強固な作りになっているので今もこうして利用出来るんですよ」


 私は職員の説明に感心しながらも同時通訳してリーに聞かせるとリーはなるほどと言って感心した。


「いつ聞いても不思議だ、同じ言葉を繰り返して話しているのに、かなたやリュウトが話すとリーもシルビアもニッキも何故か言葉が分かるんだ」


「そうなんだよ、自分でも変な感覚なんだよね」


「オイラ心で通じてるんじゃないかと思う!もしかしたら声に出さなくても通じるかも!・・・・・・今何を言ったか分かる?」


 グゥーーー


「「「お腹が空いた!」」」


「アハハハハハ!当たり!」


 さすがにこれはシャルも分かったようだった。


 今ので職員も緊張がほぐれたようで、色々とこの城塞都市にまつわる話しをしてくれて、あっという間に奥の広間に到着した。


 広間には映像でしか見たことがないような立派な机と椅子があり、木製の椅子には赤い革張りでクッションが入った腰掛と背もたれがついていて、座り心地はいいのだがとても高級な感じなので居心地はちょっと落ち着かない感じだった。


 リーはその大きな体型から座面の小さな椅子に座ることが出来ないのでそのまま床の上で丸くなった。相変わらず癒される可愛い姿だったが、職員がすぐに人を呼んでもの凄く高級そうな絨毯を数人がかりで持って来て、それを床に敷いてリーにはその上でくつろいで下さいと言った。


 そしてすぐに食事をお持ちしますとも言い、その際リーは何を食べるのか聞いてきたが、人間が美味しいと思うものは何でも美味しく食べると言ったので、職員は安堵した表情で退出していった。


 机の上にはティーセットが置かれていたので、食事が来るまでの間お茶とちょっとした茶菓子を口にしながら待つことにした。


 リーはシャルから色々と言葉を教わりながら過ごしていたが、そこでふとリーと最初に出会った事を思い出して、リーはどうやって小さな紙に文字を書いたのか聞いてみると足の爪をペン代わりにして書いたと教えてくれて、机の上を見回してみたところ高級そうな筆記用具一式が置いてあったので、紙とインクを床に置いたところリーは片足で立ってもう片方の爪の先にインクを付けて凄く器用に紙に文字を書き、さらに驚くべきことにかなり似ているシャルの顔を描いた。


 リーはボディ本体が丸くて大きいので、体の構造上足元は全く見えないはずなのだが、完成した文字や絵は私よりも断然上手だった。


 シャルも同じことを思ったらしく、見えないのにどうしてこんなに上手なんだと聞くと、リーは目では見えていないが頭の中では見えているという、何かの達人か名人のような事を言った。


 いやさすがにこれはリーの特殊能力だろうと思ったが、これまで1年以上過ごしてきたなかで、とてもヒマだったので地面に色々と文字を書いたり絵を描いて過ごした事もあったといい、最初はまるで読めない文字だったが、ずっと書いているうちに上達したのだとの事だった。


「だとしても凄い能力だよこれ・・・」


「アタイだったら飽きて続かないぞ」


「オイラも」


『私は幼い頃から体が弱くて家で絵を描いたり物語を書いたりして過ごしました、将来の夢は絵本作家になることだったんです』


 リーは幼少期の頃の話しをしてくれて、ニッキと同じように成人を迎える前に亡くなったそうで、こうして鳥の姿で生まれ変わったのはどこにでも自由に空を飛んでいきたいという願望から生じたのかも知れないと語っていた。


 少ししんみりしそうになりかけたところで、丁度良いタイミングでとても美味しそうな香りと共に沢山の料理が運ばれてきたので、私達は暗くなるどころか物凄く明るい様子で目の前のご馳走に大喜びした。


 早速美味しい料理を口にして皆満面の笑みでいたところ、職員が先ほどリーが描いた絵を見て感心し、それがリーによって描かれたという事を教えると、さすが神様の使いだと言ってとても納得していた。これはもうこのまま神の使いという私の作り話を押し通していくしかないだろうなと思った。


 食後ゆっくりしていたところで、ようやく公務を終えた町長や、その他の重役の人達や各組合の長達がやってきて、リーの紹介やこれまでの世直し活動の報告を行う事になった。


 驚くべきことにリーの言語習得速度は想像を超える程に早く、先ほどまでは片言だった言葉が大分流暢になっていた。ニッキやシルビアも言語習得は早かったがリーはそれよりも数倍早いと思った。


 リーの自己紹介の後は世直し報告会の番になり、これまで北方の周辺地域における最も頭の痛い問題だった武装集団の壊滅と、それよりは規模は小さいがそれでも盗賊の集団としては大きい規模の盗賊達を壊滅させた偉業への感謝と賛辞が続き、超一級を超えた極一級という新しく追加された階級を授与される事になるようだった。


 これは3日後に開催されるお披露目会の場で正式授与されるらしく、シャルも一緒に授与されるとの事だった。こうなるともはや仮面を被るのは意味をなさないのだが、それでも恐らくシャルやリュウトは仮面を被り続けることだろう。


 そうした中、少し気になる報告がもたらされた。それは私達が気絶させた盗賊達がその後まるで人が変わったかのように真面目に労働作業を行うようになったという事である。


 シャルも周りの人達も大いに結構な事だと言って素直に喜んでいたが、私には何か少し引っ掛かるものがあり、盗賊達は記憶を失っていないかと尋ねてみたが特にそのような者はなく、何かしらの後遺症のようなものも見られないとの事で、とにかく普通に大人しく従っており、至って真面目に労働活動を行っているとのことだったので、私もそれ以上は深く考え込まないようにした。


 打ち合わせは夕方まで続き、結局夕食もこの場でご馳走をいただくことになり、完全に日が暮れた後で大きな馬車に乗って人目につかないようにして以前も宿泊したかつてのお城へと移動した。


 翌日は前回同様本番前リハーサルが行われ、今回初めてのリーは結構緊張した様子で職員の説明を聞いていた。


 ちなみにニッキとシルビアも参加予定らしく、今回ハイラル家からはリシャールのみの参加で、シルビアはムルギンと一緒に来るそうだ。


 ちなみに南の地域からこの中央都市まで移動すると私の脚力をもってしてもひと月はかかるのだが、シルビアがムルギンを乗せた台車を引いて飛ばせば10日もあれば余裕で到着するとの事で、恐らくそろそろ到着しているのではないかと職員は言った。さすがシルビアと思いつつも果たして台車に乗るムルギンは大丈夫だろうかと少し心配した。


 リーは他の地球出身者、それも皆優しく穏やかな性格の元地球人達に会えるという事でとても楽しみだと言っていた。恐らくニッキとシルビアも同じように楽しみにしている事だろう。

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