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タナカカナタのカタナ  作者: キクメン


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第130話

 その後数日程移動したところで、グルカンの妹のグルミンがいる町に到着すると、グルミンがとても嬉しそうにグルカンが中央都市に行くのでグルミンも中央都市に来るようにという手紙と旅費が届いたと話してくれた。


 私もそれを聞いてとても嬉しくなり、それならグルミンを荷車に乗せて一緒に行こうと提案すると、シャル達は大賛成で、グルミンは申し訳ないと言ったが、速く到着出来るしその分旅費が浮いて、グルカンが送ってくれた旅費を他の事に有意義に使えるよと説得すると同行を同意してくれた。


 そうしてグルミンを荷車に乗せて中央都市へと向かったが、道中宿泊する宿代も食費も全部こちらで支払うのでグルミンは凄く恐縮して申し訳なさそうにしており、なかなかそれに慣れずに戸惑っていたが、リーのブラッシングとかお風呂で背中などのリーが届かない場所の身体の部位を洗ってあげたり、私達の衣類の洗濯などでなんとか少しでも恩返しをしようと奉仕活動をしてくれた。私達はそうしたグルミンの心根にとても好感が持てた。


 行きの道中でこの辺りの盗賊達は一掃したので、帰りは盗賊達に襲われることもなく順調に進み、予定通りの日程で中央都市へと到着したのだが、今やこの辺りではかなりの有名人になっているのに加えて、パッと見て明らかに新たな神の使いだと分かるヴィジュアルのリーが身を隠すこともなく空を飛んでいるので町中の視線を浴びることになった。


 それでも大勢の人達に取り囲まれて先を進む事が出来なくなる事もなく、子供たちが何人か後ろを追いかけてきたくらいで、後は大抵が声を掛けてくれたり手を振って見送ってくれたりした。


『皆さん凄く良い人ばかりなんですね!とっても嬉しいです!』


「まぁ神の使いって事にして大々的に知らせてもらいましたからね・・・」


『ウフフうまい事思いつきましたね、でもあながち間違っていないかも知れませんよ、というのもなんとなくなんですが私がまだ卵だった時に何かの声を聞いたような気がするんです』


「えっ!?ホントですか!?」


『はい、まだ卵の中で眠っていた頃だったので、ほとんど覚えていないんですが、声・・・いや、もしかしたら何かの思念のようなものを聞いて眠っていた気がするんです、それが何かは思い出せないんですが』


「リーは何と言ってるんだ?かなた」


「うん、リーさんがまだ卵の中で眠っていた頃に、神の声を聞いたかも知れないんだって」


「そうなのか!?でももしかしたらそれはお母さん鳥かも知れないぞ」


「リーさん、卵から孵った時って近くに親鳥はいましかたか?」


『いえ、私一人でした、巣も何もなくて地面が暖かい地熱のある岩場で一人で卵から孵りました』


「付近に鳥の羽とかは?」


『なかったです、親鳥が私を産んで暖めたような形跡はまったくありませんでした』


「そういえばリーさんはこの世界に来てどれくらい経っているんですか?」


『そうですね、卵から孵ってからは多分一年半くらいです、その間親鳥どころか私と同じような鳥は全くいませんでした』


「ふーむ・・・」


 これまでは私もこの世界にやってきたのは、異世界の神様による説が有力だと思っていたのだが、魔の森に出現した幾何学的な物体に遭遇してからは宇宙人説が急浮上していた。


 今聞いたリーの話しからも神であれ宇宙人であれ、私達はどうにも何かしらの意図が働いてこの世界にやってきたと思わざるを得なくなってきた。しかしその意図や目的とは一体なんだろうか。


 そうして考え込んで歩いていたところ、今の超人的な肉体を持つ私としてはめずらしい事に前を歩いていた人物にごく軽くぶつかってしまった。


「おっと・・・うん?」


 急に立ち止まったのはグルミンで、少しだけ前につんのめったがそんな事などまるで気にも留めずに、ある一点を凝視しているようだった。


 私もグルミンの視線の先を見てみると、そこには見間違い用のない特徴的な人物がいた。それは大きな体のソルドンでその横にはソルドンに比べれば小柄であまり目立たない人物、グルカンがいた。何やら紙袋を抱いており恐らく食料調達の最中だと思われた。


「兄・・・さん?」


「うん、そうだよ、あれはグルカンさんで間違いないよ、おーい!」


 私は手を振ってソルドン達に声を掛けると、こちらに気付いたようで相変わらず大きな声でソルドンは私の名前を呼んだが、それに負けない程大きな声でグルミンはこう言った。


「グルカン兄さん!」


 グルミンは私の横を通り抜けて走り出すと、グルカンはこれまで見た事もない驚きの表情をし、抱いていた紙袋を落としたが、ソルドンがその身体に似合わず俊敏な動作で地面に落ちる前にキャッチした。この辺りはさすがモルサール流剣士である。


「兄さん!グルミンです!妹のグルミンです!」


「・・・」


「兄さん!会いたかった!」


「ウッ!・・・ウォオオオオオ!!」


 と、感極まって大声を出したのはグルカンではなくソルドンだった。


「グルカン!妹だぞ!生きていたんだ!良かった!本当に良かったな!ウォオオオオーーー!!」


 先にソルドンの方が号泣し始めたのだが、ソルドンの真っすぐな人の好さが垣間見えて私はソルドンの事が前よりも好きになった。


 そのまま立ちすくんでどうして良いのか分からなさそうなグルカンにグルミンは抱き着きグルカンの胸に頭をうずめていたが、グルカンも目を強く閉じてうなだれてグルミンを強く抱きしめた。うつむいているので表情までは窺い知る事が出来なかったが、地面にはポラポタと涙が落ちていた。


 号泣するソルドンの方をなだめるというおかしな状況だったが、とにかくソルドンに話しを聞くと、ギャラガ達だけでなくマチャントも一緒に来ていて、城塞都市の外側ではあるがそれなりに大きな屋敷を借りて数時間前に到着したとの事だった。


 私達も一緒にマチャントが借りた屋敷に行きたかったが、その前に町役場に行ってリーを町長や他の人達に紹介しに行かなければならないのでいったんグルミンと別れて私達は町役場へと向かう事にした。


 久しぶりの城塞都市の大門まで来るとリーはとても興奮した様子でその素晴らしい景観を見て感激し、空を飛んで上空からもじっくりと眺めて楽しんだ。


「あの体で軽々と空を飛べるリーは凄いな」


「うん、ちょっとうらやましいね、ああやって空を自由に飛べたらさぞや楽しいだろうねぇ」


「うん、かなた兄ちゃん達には悪いけど、空を飛べるのって楽しいし便利だし最高だよ」


「いいな!」


「うん、オイラ大きくなったらシャル姉ちゃんもかなた兄ちゃんも背中に乗せて飛んであげるよ!」


「ホントか!それは楽しみだ!」


 確かに楽しみだが、果たしてリュウトはこの後どれくらい大きくなるんだろう・・・大怪獣並みに大きくなったら大変だぞ、そもそもエサとかちょっとヤバいんじゃないのか?


 城塞都市内部に入ると私達はますます注目の的になり、道行く人はほぼ全員足を止めてこちらを見て手を振りながら見送りの声をかけてくれた。


 その中にはなんと久しぶりのマリーとテリーズの姿があり、やはり先ほどのソルドンのように買い物帰りと思われる紙袋を持って手を振ってくれた。


 シャルと小声でどこかで合間を見つけてモルサール家に訪問しようと打ち合わせつつ歩き、程なくして立派な風格のある大きな建物の町役場へと到着した。

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