第129話
前回数百人の武装集団を討伐した時に比べれば数十人程度など物の数ではないとばかりに私達はあっという間にこの集落にいる盗賊達を全員気絶させた。
「大丈夫だったか?かなた」
「うん、新しい仲間が助けてくれたよ」
「やっ!それって鳥の親分か!?」
「ははは、とっても可愛らしい親分だよ」
「見たい!見たい!」
「おーい!お兄ちゃんたち~!」
「あっ来たみたいだよ」
「どれどれ?・・・やっ!アハハハハ!丸っこい!確かにとっても可愛いな!」
『こんにちは!』
「うむ?何と言った?にーはお?」
「あっ凄い!シャル、それは中国語だよ」
「ちゅうごくご?どこの国だ?かなたと同じちきゅうのどこかの国の事だな?」
「そう、僕が住んでる日本という国の隣にあるとても大きくて人も沢山住んでる国だよ」
『わぁ!ホントだ!凄く綺麗で可愛い人ですね!私はリー・シーユエと言います!』
「りーしーゆえ?それがオヌシの名前か?」
『そうです!リー・シーユエです!』
「アタイはシャルだ!シャル・トゥルム・ウォーデルリンヌ!シャルって呼んでくれ!」
『しゃる!』
「そうそう!アハハ!りーしーゆえは可愛いな!抱きついてもいいか?」
「シャルがリーさんにハグをしたいって」
『わぁ!いいですよ!』
「いいって」
「やった!よろしくリー!」
『よろしくシャル!』
「オイラもハグしたい!」
出来れば私もハグしてフワフワでプクプクの羽毛に顔をうずめたいが、そこはなんとか我慢した。そしてとても癒される光景を目にした。
その後この集落にいる盗賊達に長年に渡って恐喝され続けていた村の村長と村人達がやってきて、全員気絶している状況を見て凄く驚いた後に、飛び跳ねる程に大喜びして早速近隣の村々や町の自警団にかけあって、捕縛連行してもらうとの事だった。
村に戻ると私達はまさに勝利の凱旋といった感じで村を挙げて大歓迎されたが、それに加えて新たな神の使いの発見という事で村中お祭り状態になった。
とりわけリーはやはりその愛くるしい姿ですぐに大人気となり、子供たちも大喜びでリーに近付いてハグしていった。
『田中さん有難う!これまで言葉も分からないし、こんな姿だったので怖くて人前に出れなかったんですけど、田中さんのおかげでこうしてこの世界の人達と仲良くなれてとても嬉しいです!』
「こちらこそリーさんに会えて嬉しいですよ!」
『有難う!』
「「「しぇーしぇー?」」」
「有難うって意味だよ!」
「わぁー!しぇーしぇー!」
「「「しぇーしぇー!」」」
中央都市で各地方の新聞記者も大勢呼んで、大々的に地球から来た転生者を神の使いと言って宣伝したおかげで誰もリーを見て怖がる事もなく、普通に受け入れてくれて実に良かった。まぁこの愛くるしい姿のリーを見て怖がる人などまずいないと思うが・・・
結局その日はこの村に泊まることになり、今後このまま北に向かう旅を続けるかどうするか話し合ったのだが、つい先日の武装集団壊滅に続き新たな神の使いの発見という事が起きた以上さすがに中央都市に戻って報告した方が良いだろうという事になった。
恐らくこのまま北に向かっても数日中に中央都市側から戻ってくるよう要請されるだろうから、それならばこちらから向かった方が無駄にならないという結論に至ったのだ。
リーも中央都市に行ってみたいとの事なので、翌朝から私達は中央都市に向けて出発した。
もうことさら隠す事もないのでリーやリュウトを荷車の中に乗せて運ぶ事もなく、私とシャルが交代で荷車を引いてリーとリュウトは空を飛んで進んだ。
「リーは丸くてプクプクしてるので速いな!」
『なんて言ったの?』
「リーは丸くてふっくらした可愛い小鳥なのに速いねって言っているんだよ」
私は直訳せずに若干アレンジして通訳した。
『はい!自分でも不思議です!あまり力いっぱい羽ばたかなくても飛べるんです!』
「オイラは疲れたぁ~」
リュウトは荷車ではなく私のリュックの上に乗って休憩し頭を私の顔の横に出して景色を楽しんだ。
リーは速さだけでなく持久力も大したもので、お昼ご飯休みまでぶっ続けで空を飛び続けた。
『リュウトが言っていた通り、田中さんもシャルも凄く速いし驚くほど疲れ知らずなんですね、それにその歩き方とっても独特ですね』
「うん、この歩き方はモルサール流っていう剣術の流派の独特な歩き方なんだ、普通に走るよりも全然疲れないんだよ」
『そんな剣の流派があるんですね!』
「うん、この世界には色んな流派があるんだよ」
『そうなんですね、そこまで上手になるには何年もかかるんじゃないですか?そういえば田中さんはこの世界に来て何年くらい経っているんですか?』
「それがまだ一年経っていないんだ、大体7か月くらい前にこの世界で目を覚ましたんだ」
『えっ!そうなんですか!?それでそのなんとか流の歩き方がそこまで上達したんですか?凄い!それも田中さんの何かの能力なんでしょうか?』
「確かにそうかも知れませんね・・・」
考えてみれば剣術も歩方術もさらに言うと例の手当てにしてみても我ながら常人ではまず不可能なまでの習得速度だと思う。リーの言う通り何かしらの能力のおかげなのかも知れないが、リーやニッキやシルビアや青い鬼の怪人と違って私とリュウトはステータス画面とやらを見る事が出来ないので、自分にどういう能力があるのか全く分からなかった。ただ言語能力については間違いなく特種能力だろう。
それから2日経過したところで立ち寄った町にて、門番と一緒に別の人が立っていて私達を見るとすぐに駆け寄って来た。
「お待ちしておりました!神の使い様と世直し仮面様御一行でございますね?私はこの町の探検家組合の職員です、中央都市からの手紙を預かっています!」
「やはり来たか、戻って来て正解だったな」
「そうだね、お受け取りします」
「どうぞ・・・おおっ!こちらのとても愛らしく素敵なお方が今回発見されたという神の使いの方であられますか!?」
「そうです、鳥の神の使い様です」
『こんにちは!』
「に・・・にいめん、はお?というお名前であられますか?」
「いいえ、こんにちはと挨拶なされたんですよ」
「おお!さすが世直し仮面様!神の使い様のお言葉が分かるんですね!」
「はい、まぁ一応・・・」
神の使い様というのは良いのだが、世直し仮面と呼ばれるのはまだ何とも慣れないものがあった。これで定着されてしまうのだろうか・・・
ともあれ私は手紙を開き確認すると、案の定中央都市に戻って来て報告して欲しいという内容が書かれていて、出来れば到着日を教えて欲しいとの事だった。理由はそれに合わせてまたもや報道各社や各地の有力人物を招集してお披露目会をするからのようだ。
皆にそうした内容を伝えて、とりわけリーには途中の村や町に寄ってゆっくりする事は出来ないが良いかと尋ねると、全く問題ないとの事だったので、私は一週間程もあれば到着すると職員の人に伝えたところ、そんなに早くに到着出来るのかと驚きながらも、喜んだ表情で、早速その旨中央都市に連絡すると言って足早に立ち去って行った。
尚、この町一番の高級宿屋を押さえておいてあるとの事でとても有難かった。




