第128話
実際には一瞬の間の凄い速度だったのだが、この時の私にはまるでスローモーションのように映り、それはどうやら相手もそうだったようで、お互いに目と目を合わせて見つめ合っていた。
それは巨大な小鳥のようなフォルムで、白くてところどころ薄いピンク色の模様があり、丸くてフワフワで小さなクチバシにクリっとした丸い目で、一瞬にしてとても愛らしくて癒される存在だと認知した。
私は自然と両手を延ばして限りなくゼロに近い相対速度でそれを優しく抱きかかえて床に着地し、そっとその愛らしい巨大な小鳥を床に置いた。
その巨大な小鳥は私のへその位置程の高さで、全体的に丸いのでまるでバランスボールのようだった。
「えっと・・・こんにちは」
「こ、こんにちは・・・その様子だと、大丈夫みたいですね」
「はい、あなたも・・・大丈夫みたいですね」
ガチャガチャ、バタン!
「あっ!」
「いけない!エイッ!」
ビュウッ!ドシンッ!グエッ!
今の轟音を聞きつけた盗賊の一人がドアの鍵を開けて中に入ってきたので、巨大な小鳥はその姿からは想像出来ない程の目にも止まらぬ速さで盗賊に体当たりすると盗賊は同じく目にも止まらぬ速さで後方に吹き飛んでいった。大怪我してなければ良いが・・・
私は呆気に取られてただ見守っていると、巨大な小鳥は他にも数人程吹き飛ばしてから戻ってきて、外に出た方が安全だと言って、壁に開けた穴から外に出るように言ってきたので私は頷いてすぐに壁の穴から脱出した。
外に出るとおびただしい数のカラス達がげんこつ程の大きさの石を盗賊達に向けて落下させており、盗賊達は逃げ回った挙句建物の中に避難した。弓矢を放つ者もいたが素早く飛び回るカラスに当てられる者は誰もおらず逆に落石の餌食になっていた。
「凄い!あのカラス達はあなたの命令で動いてるんですか?」
「いえ、命令ではなく沢山の魚や木の実をあげてお願いを聞いてもらったんです」
「そうなんですね、わざわざ有難う御座います」
ペコリ
「・・・礼儀正しいんですね、もしかしてあなたは日本の方ですか?」
「はい、田中かなたと申します」
「やはりそうでしたか、私はリー・シーユエと言います、中国の黒竜江省出身です」
「そこは中国のどのあたりでしょうか?」
「一番東北にある省です、アムール川を挟んだ向こう側にはロシアがあるという場所です」
ゴオォーーーッ!
「あっ!アレは!?」
「あれはドラゴンの子供の姿でこの世界にやってきた私の仲間で、別の仲間にこの場所を知らせるために口から炎のブレスを吐いて教えているのです」
「凄い!ドラゴンですか!?」
「ええ、アメリカ出身だそうです」
「まぁ!」
ギャアギャアギャア!
「あっいけない、カラス達が怖がって逃げていっています!」
「大丈夫、今度はもっと心強い味方がやってくると思います」
「それって田中さんと一緒にいた女の子ですか?」
「そうです、多分この世界で最強の剣士です」
「その方はどちらの国の方なんですか?」
「この世界の人で、とても綺麗で可愛い人ですが天才的な剣の達人で身体能力も超人的なんですよ」
「まぁ!そんな方がいるとは、やっぱりここはファンタジーな異世界なんですね!」
「そうですね、でもファンタジーの割にはエルフとかドワーフとか魔族とかはいないようですし、肝心な魔法とかもどうやらないみたいです」
「えっそうなんですか?それは少し残念ですね・・・それにしても田中さん中国語上手ですね」
「あっ、いや、私にはリーさんが日本語を話しているように聞こえています、そして私はずっと日本語で話しているつもりなんですよ」
「まぁ!それが田中さんの特殊能力なんですか?」
「そうかも知れません」
「あと、田中さんのステータスだけが見れないのも、ステータスを見れないようにする能力か何かなんですか?」
「能力なのかどうか分からないのですか、私には一切ステータス画面というものが見えないんです、仲間のドラゴンのリュウトも私と同じです、あとリュウトも私も地球での記憶がかなり失われています」
「まぁ!それは大変!・・・あら?」
一羽の小鳥がリーの前にやってきた。
チチチチッ!チチッ!
「えっと、凄い速さで田中さんの仲間の方がやって来たそうです」
「あっ、それはシャルです、さっき言った最強の天才剣士です」
「でも一人じゃ危険です!助けにいかないと!」
「そうですね!いきましょう!」
ビュッ!
「わっ!凄く速い!私も!」
ビュウッ!
正直なところ、シャル一人で危険という事はないのだが、リーの手前というのと万が一という事を考えて全力ダッシュで盗賊達のいる方へと向かった。
「かなた兄ちゃん!はいカタナ!シャル姉ちゃんが持って来てくれたよ!」
「サンキューリュウト!」
建物の影から出たところでリュウトが上空から刀を持って来てくれたので、私は素早くジャンピングキャッチして鞘から抜いてエンジン全開で目の前の盗賊を片っ端から気絶させていった。
「凄い!田中さんも剣の達人なんですね!」
「かなた兄ちゃんは刀を持ったら最強なんだ!って初めまして!オイラはリュウト!アメリカのミルウォーキー出身だよ!でも本当の自分の名前は覚えてなくてリュウトって名前はかなた兄ちゃんに付けてもらったんだ!よろしくね!」
「私はリー・シーユエよ!中国の黒竜江省出身なの!リュウトももしかして英語を話しているの?」
「うん、英語で話してるよ、リー姉ちゃんの言葉も英語に聞こえる、かなた兄ちゃんと同じで自分の生まれ育った国の言葉で話したり聞いたり出来るんだ」
「それってこの世界の人達の言葉も英語に聞こえてるの?」
「そうだよ!この世界の人達も英語で話してるように聞こえる、でもニッキ姉ちゃんとシルビア姉ちゃんはこっちの人の言葉は全然分からなかったんだって」
「ニッキさんにシルビアさん?」
「そう、ニッキ姉ちゃんはえーと・・・どこだっけ?シルビア姉ちゃんはブラジル出身なんだ」
「今はいないの?」
「うん、仲良しの人と一緒に自分の家に帰った」
「えっ?こっちの人と仲良くなって自分の家を持っているの?いいなぁ」
「うん、かなた兄ちゃんがニッキ姉ちゃんとシルビア姉ちゃんを見つけて、こっちの人達と仲良くなるようにしてくれたんだ」
「そうなんですね、田中さんは良い人なんですね」
「うん!かなた兄ちゃんはとても優しくて強くて時々凄く面白いんだ、オイラかなた兄ちゃん大好き!」
「まぁ!・・・あっ、あれっ!?」
「どうしたの?」
「刀で人を斬っているのに、血が出てないし、身体も切れて・・・ない?」
「そうだよ!かなた兄ちゃんのカタナとシャル姉ちゃんの剣は人を殺さないで気絶させる事が出来る凄い剣なんだ!宇宙人からもらった凄い剣なんだよ!」
「ええっ!宇宙人!?」
「そう!宇宙人!魔の森の奥で不思議な形の宇宙船があって、その中からシャル姉ちゃんの剣が出てきたんだ、その後宇宙船はオイラ達が見ている前で宇宙に飛んで行った!」
「そんな事が!!・・・凄い・・・凄すぎる!これはじっくりゆっくり色々教えてもらわないと!」
「うん!リー姉ちゃんも一緒においでよ!」
「うん!そうする!」
「やったぁ!」
私とシャルが一人残らず盗賊達を気絶させている間にどうやら新たに一人仲間が加わったようだった。




