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タナカカナタのカタナ  作者: キクメン


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第127話

「ハハハハ、一人で3人前も食えば熟睡もするわな、それにしてもコイツらよくまぁこんな小さな体で3人前も食えるもんだ」


「よくやった、お前はもう引っ込んでろ」


「は、はい・・・あっあの・・・」


「なんだ?」


「ひっ、いっいえ・・・その、どうか、どうかあまりひどいことはしねぇでくだせぇまし・・・」


「ふん、まぁそれはこいつら次第だな」


 その後男が店の外に出て甲高い笛の音のような音を出すと徐々に店の前に人が集まってくる気配を感じ取った。


「キシシシシシ、いよいよ始まるぞ」


「面白くなってきたね」


 シャルとリュウトはすこぶる嬉しそうな様子で小声でそうささやいた。


「ダメだ!この荷車ビクともしねぇぞ!」


「分かった!この袋だ!この袋の中にバカみたいに重たい物が入ってるんだ!」


「リュックの中は着替えくらいしか入ってねぇな、でもこのコートは相当高い代物だ」


「一体この袋の中には何が入ってるんだ?」


「袋の中には剣が入っておるんじゃ」


「そうか!剣か!って何ッ!?ヒャァッ!」


 ビシッ!グエッ!ドタリ!


 シャルはモルサール流一式の隠密、それもさらに磨きをかけて向上した術で近付き、盗賊の一人を手刀一発で気絶させてから剣を取り出し、剣を手にした瞬間電光石火の早業でたちどころに周辺にいた盗賊達を一刀両断していった。といっても盗賊達の身体が真っ二つになることはなく次々と気絶させていった。


 私も起きて外の様子を見に行こうとしたところ、厨房からドタドタと複数の人間が近付いてくるのが分かり、それもその音と気配から身体の大きな男達だというのが分かったので私はわざと寝たふりを続けた。


「まだ一人寝たままだ!」


「おお!黒髪だ!顔も悪くねぇ!高く売れるぞ!」


「こりゃ軽いな!オレ一人で十分だ!」


「よし!運び出せ!」


「外の様子はどうだ!?」


「ありゃダメだ!裏口から出ろ!」


 ドタドタドタ!


 男達は私を担いで裏口から出ていった。


「シャル姉ちゃん!かなた兄ちゃんが!」


「ウム、分かってる、そのままヤツ達のアジトまで案内してもらおう」


「ラジャー!それじゃオイラ透明になってアイツ達を追いかける!」


「頼んだぞ!アジトを見つけたらリュウトのぶれすで教えてくれ!」


「あいよ!」


「さて、恐らく村の人達はコイツ達に脅されていたのだとは思うが、一応村長に話しを聞くとするか」


 シャルは何故かここで仮面を被ってこう言った。


「アタイは世直し仮面だ!悪をやっつけるためにここに来た!村長はいるか!」


 一方私は・・・


 パカラッ!パカラッ!パカラッ!


 馬の背に乗せられて側道を進んでいた。


 薄目を開けて様子をうかがっていると、最初からずっと一羽の鳥が私達を追っている事に気が付いた。


 同じく透明になって空を飛んで追跡していたリュウトもその鳥に気付きながら後を追っていた。


 30分程走ったところでどうやら集落に到着したようで、私は寝たふりを続けて男に担がれて運ばれた。


「なんだ!?獲物はその痩せたガキだけか?」


「ああ、どうやらマズイ相手に手を出したようだ」


「どんな相手だ?」


「新聞に載っていた神の使いと世直し仮面とかいうふざけた連中だ」


「なんだって!?オイ!大丈夫なのか?」


「ああ、一人は桁外れに強かった、俺たち以外は一瞬にしてそいつにやられた」


「そのガキは大丈夫なのか?」


「強力な眠り薬を入れた飯を3人前も食べたんだ、下手すりゃ3日は目を覚まさないだろう」


「3人前?そんな細っこい体でか!?・・・ま、まぁそれならちょっとやそっとじゃ起きないだろう、しかしそのガキはどうするんだ?」


「そうだな・・・人質として身代金を要求するか、性奴隷として売りに出そう、黒髪でなかなか顔も良いから高く売れるだろう」


「しかしそいつも強いんじゃないのか?」


「強い麻薬や媚薬で廃人にならない程度に飼いならそう、その方面が得意な知り合いがいる」


「そ、そうか・・・」


 かなり聞き捨てならないセリフが飛び交い、私はとても恐ろしくなると同時に怒りも込み上げてきた。しかし今私の手元には愛用の刀はなかった。


「とりあえず何人か村人に変装させて様子を見に行かせよう、状況次第で身代金を要求するか、コイツを売りに出すか決める」


「分かった、そうしよう」


 私は別の部屋に運ばれて扉に鍵をかけられた。部屋には人の気配がなかったので薄目を開けて周りを確認してから目を覚まして起き上がった。


 幸いな事に手足は縛られていなかったが、恐らく普通の縄程度なら私の怪力の前には無意味だろう。


 同じく私の怪力ならば木製の扉程度ぶち破る事も容易だろうと思うが、なにせ愛用の刀がないので下手をすれば前にシャルから言われたようにパンチで盗賊の頭を爆発させてしまうかも知れないし、シャルのように手刀を使えば首の骨を折るどころか首チョンパさせてしまう恐れもあったので、どうにもこちらから手を出すわけにはいかなかった。


 部屋には一応換気と光を取り入れるための窓があったが、高い場所にある上に横に細長い窓だった。普通の人ならば窓から外に出るのは無理そうだが、私なら問題なく出れそうだと思い、助走なしの垂直ジャンプで難なく指をひっかけて、指のわずか第一関節だけで体重を支えてそのまま懸垂して身体を持ち上げた。


 まだまだこの世界ではガラスは高級品のようで、この窓は開口されており、夜や雨や雪が降っているときや冬の寒い時期などは長い木の棒を使って折り畳み式の木製の雨戸のような窓でフタをするようだった。


 どうやら頭を横にすればすり抜けられそうで、筋骨隆々の大男とは程遠い私のスリムな身体ならこのまま脱出は可能と思われた。


 と、その時一羽の小さな小鳥が私の目の前に降り立った。しかもその鳥はクチバシに何か紙切れのようなものを咥えていた。私は手を差し出すと手のひらの上にその紙切れをポトリと落としてチチッと鳴いて飛び立っていった。


 私はいったん完全無音で部屋の中に着地して、紙切れを広げてみた。するとそこには次のように書かれていた。


 STOP I HELP YOU

 停止 我??


 2行目の漢字で我の後に続く漢字が分からずなんとなく幣という漢字と称という漢字に似ていると思ったが日本の漢字ではないような気がした。


 ともあれ、意味は分かった。それ以上に鳥を使って監視している人の正体まで分かった。確実に地球から来た人物、それも恐らく中国の人だという事が。


 私は素直に手紙に従って大人しくしていると、何やら外が騒がしくなってきた事に気が付いた。


 ギャアギャアとカラスの鳴き声のようなものが聞こえてきたと思ったら、その声はとんでもなく多く大きくなっていき、空だけにまさに空恐ろしいという感じにまでなってきた。


 するとあちこちで盗賊達の怒号や悲鳴が聞こえてきて弓を持ってこいという声も聞こえてきた。


 一体外で何が起こってるのかとても気になり窓から外を見ようと思ってジャンプして窓に手をかけて外を見ようとしたところ、白い物体が物凄いスピードでこちらに近付いてくるのが見えた。


「わぁ!どけてぇーーー!!」


「うわっ!」


 私はあわてて壁を蹴って思い切り後方へジェンプすると、その瞬間にドカン!という大きな衝突音が部屋中響き渡り、部屋の壁が木っ端微塵に破壊され、まるでスローモーションのように飛び散る木片の中から白くて丸くてフワフワの何かと目が合った。

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