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タナカカナタのカタナ  作者: キクメン


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第125話

 公民館の上で皆と一緒にほぼ雑魚寝という状況にも関わらず私もシャルも互いの剣と刀を抱いてスヤスヤと熟睡したが、何やら美味しそうな香りが鼻腔をくすぐるとパチッと目を開けて覚醒した。


「かなた兄ちゃんもシャル姉ちゃん凄いな、さっきまでスヤスヤ寝てたのにご飯の匂いですぐに目を覚ましたぞ」


「うむ、腹が減った」


「えっと、今何時くらいだろう?」


「もうすぐ昼になるみたいだよ」


「わっそんなに寝てたのか」


「うん、かなた兄ちゃん達床の上で寝てて身体痛くなかった?お姉ちゃん達は少し痛そうにしてたよ」


「アタイは平気だ」


「確かに平気だね・・・ってあれ?他の人達は?」


「みんなご飯を作るのを手伝いに行ってるよ」


 私達は良い香りのする方へと向かって歩くと、炊き出しをしている人達とそれを手伝っている女性達がいるのを見た。その中にはグルカンの妹のグルミンもいた。


「あっ、世直し仮面様おはようございます、お食事になさいますか?」


グウ~


 口で返事をする前にお腹の方が返事をした。


「あははははは!あっ、ごめんなさい、つい」


「イヒヒヒ!身体は正直だ!ご飯おくれ!」


「はい!どうぞ!」


 シャルとグルミンの屈託のない笑顔に加え、他の女性達も少し馴染んで柔らかい表情になっているのを見て私は大分安心した気持ちになった。


 その後具沢山のスープと黒パンをもらって食べ、私は顔を洗って化粧を落とすとシャルと自警団の人達は少し残念そうにしたが、保護された女性達からは昨夜とは微妙に異なる視線と賞賛を得ることになった。


 それから戦士組合と商工組合に行ってグルカンとマチャント宛にグルミンの件についてのお知らせを届けて、その旨グルミンに伝えてから私達はさらに北へと進む事にした。


 町の役人からは今回の功績に対して町を挙げての褒章を行いたいと言われて引き留められたが、あまり公にされたくない点を説明してあくまでも世直し仮面が行ったという事にしてくれと頼んだ。


 とりわけ素性がバレると今後命を付け狙われる可能性が出てきて、新たな神の使い探しの行動に支障が出るという説明がかなり効果があって、割とあっさり納得してもらえた。


 ちなみに報奨金は全額女性達の生活再建費用に使って欲しいと言って寄付する事にした。シャルもリュウトも大賛成してくれて、役人達は大いに感激して賞賛とお礼の言葉がしばらく止まらない程だった。


 そうして私達は大勢の人達に見送られながら町を出て北上する旅を再開した。


 途中で立ち寄った町や村では私達の存在が知られていて歓迎ムードが強く、飲食費用は無料な上にお土産も沢山もらい、その日の宿まで一番良い部屋が無料となった。


 そして翌日の新聞や掲示板にでかでかと世直し仮面の大活躍が報じられていて、素性を隠すとか言っておきながら空飛ぶトカゲのリュウトを連れている時点でバレバレな事に苦笑してしまった。しかもちゃんとリュウトも仮面を被っている絵が描かれているのがとても可笑しかった。


 それでもそれから数日程進んだ辺りからは大分静かになってきて、リュウトもなるべく町や村の出入口では荷車の中で大人しくしてくれたので、私たちが世直し仮面だという事はそれほどバレなくなってきた。


 とはいえシャルも私もどうやらこの地方の人からするとまだ十代の少年少女に見えるようなので、行く先々で心配される声がかけられる事になった。


「モグモグ・・・やはりまだまだ北の地方の治安は良くないんだなぁ、おばちゃんおかわりおくれ!」


「モグモグ・・・そうだね、町の中でも結構武装した人達を多く見かけるし、私もおかわり下さい!」


「モグモグ、オイラもおかわり!」


 さすがにリュウトが出てくると身元がバレてちょっとした騒ぎになってしまうが、だんだん私達もそれに慣れてきてしまった。


 そうした日々が続いたところで、どうにも町や村の普通の人達とは別の何かこれまでとは違うごく僅かな視線を感じるようになってきた。


 キョロキョロ・・・


「やはりかなたも気になるのか?」


「うん、なんか何日か前から見られているような気がするんだけど、全然相手が見つからないんだよね」


「アタイもそれとなく気配を察知しようとしているんだけど見つからない」


「えっ!オイラ全然気づかなかった!」


「きっと悪意や殺気がないからかもしれん」


「そうだね、シルビアの時の同じで殺気や悪意は全く感じられなくてただ見られているって感じ、だけどシルビアの時と違って全然気配を感じないんだ」


「なんだか不気味だね」


「そうなんだよ、しかも結構頻繁に見られている感じがするんだ、これだけ多く見られているならこちらからもその気配を感じても良いはずなのにそれがどうにも見つからないのが不気味なんだ」


「かなたでも分からないというぐらいだから、今度の相手は相当な奴かも知れんぞ」


「わっ、オイラちょっと怖くなってきた」


「う~ん・・・でもやっぱり殺意というか悪意はないみたいなんだよなぁ・・・」


「とりあえずこれまで通りなるべく皆一緒で行動しよう、単独行動する時は声をかけるんだ」


「そうだね」


「そうする!」


 その後も頻繁に何かの視線を感じながら北上を続けていたところ、とうとうリュウトがその視線に気が付いた。


「かなた兄ちゃん分かったよ!オイラ達鳥に見られてるんだ!」


「えっ!?鳥だって?」


「そう!鳥がこっちを見てるんだ!」


 私とシャルはキョロキョロと辺りを見回してみたところ、確かにこちらを見ている鳥がいた。


「あっ!一羽だけこっちを見ている鳥がいる!」


「ホントだ!やっ!逃げた!」


「あの鳥だけじゃないよ!今朝は別の鳥が見てた!他にも色んな鳥が見ていたんだ!」


 リュウトは朝私達が目を覚まして井戸の近くの洗い場で洗顔している時に透明になって辺りを見回しているときに鳥達の中で一羽だけこちらをずっと見ている鳥がいたのを発見したと説明し、以後もテラスで朝食を食べているときや茶屋でお茶を飲んでいるときにも違う鳥が見ていたと言った。


「なるほど、そりゃ気付かないわけだ、まさか鳥達から見られていたなんて・・・」


「でも何で鳥達がアタイ達を見ているんだ?」


「もしかしたら鳥を操る事が出来る能力を持った人がいるのかも知れない・・・」


「そんな奴がおるのか!それは面白い!」


「うん!面白い!」


 確かに面白いかもしれないが、もしもこれが敵対的な相手だったら結構厄介じゃないかという危機意識が頭の中によぎった。


 鳥からの監視はその後も続き、移動中には上空からも見られていることをリュウトが発見し、さらにこちらを見ている鳥を発見してもこちらが近づかない限り逃げなくなり、徐々にその距離も近付いてきた。


「なんか、だいぶ開き直ってきたぞ」


「そうだね、随分大胆になったみたい」


「オイラ手を振ってみる、あ、逃げなくなった」


 鳥はますます近付いてくるようになり、茶屋で野外のテーブルでお茶を飲んでいるときにテーブルの上に乗って来て、私がクッキーのかけらを置くと近づいてきてついばむ程になった。


 そこからますます近付くようになり、荷車の幌の上に乗ってしばらく付いてきたり、いよいよ私やシャルのリュックの上にまで乗ってくるようになった。


「これはこれで案外可愛いな」


「そうだね、監視されていても小鳥だからどうにも憎めないというか危険を感じないんだ」


「オイラ鳥を操っている人は悪い奴じゃないんじゃないかと思う」


 確かに私もリュウトの言う通りの気がした。ニッキやシルビアのように私達がどういう人物なのか慎重に調べているのではないかと推測した。

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