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タナカカナタのカタナ  作者: キクメン


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第123話

 まず真っ先に台車付近にいた者達をほぼ一瞬のうちに全員気絶させた。全てシャル一人で片づけた。


 さすがモルサール流随一の天才剣士といったところで、それに加えて魔の森フードドーピングで超人的な肉体を手に入れ、さらに魔の森ソードを手に入れたことでもはやこの地上で敵う者などいないのではないかという程の無双ぶりだった。


 あまりにも速く、音もなく、抵抗する暇すら与えず全員倒したので、付近の者達を倒しても他の盗賊達は異変に気付かず各自食事の用意を続けていた。


「シャル姉ちゃんスゲェ!」


「まずは頭をおさえる」


「了解」


 シャルは剣を鞘に納めて私に渡し、私に対してシャルの後ろに続いて剣と刀を見えにくくして歩くようにと指示し、私はすぐに全てを理解して頷いた。


 そうしてシャルは最も大きなテントの中にごく自然と中に入り私たちも後に続いた。


 中に入ってすぐに気づいたのは異様に甘ったるい香りで、少し肌寒い外と違ってテントの中は暑いくらいだった。


 まず入り口の前についたてが置いてあり、中の様子が丸見えにならないようになっていたが、もちろんプライバシー保護のためだが、どういうプライバシーかは容易に想像出来た。


 ついたてを避けて進むとテント生活とは思えない程に豪華な調度品が並んでいて、大きなテーブルと座り心地のよさそうな椅子も並んでいて、さらにその先に薄いカーテンがかかっていて、その奥にベッドがあるようだった。


 幸いと言ってよいのかどうか分からないが、ベッドの方から男女の性行為中の喘ぎ声が聞こえてくる事もなく静かだったが、明らかに身体の大きな人物がベッドの上に腰かけており、その隣で酒を注いでいるように見える女性がおり、他にもベッドの上に2人程いるようだった。


「誰だ」


 低く良く通る声で男の声が聞こえた。


 シャルはこちらをチラと一目見たので私は頷くと、薄いカーテンを開けて中に入った。


「おっ!おおぅ!?」


 男は目を大きく見開いてシャルを見て、さらに斜め後ろに立っている私の顔を見た。


「なんと!素晴らしい!素晴らしいぞ!特に後ろの黒髪!おお!何と美しいのだ!決めた!お前は、いや、そなたはワシの妻になるのだ!」


 そう言って男は立ち上がり近付いてきた、私の顔しか眼中にないようで別の意味で凄く怖かったが、それが幸いして見えないようにシャルの背中側に隠して私が持っている剣と刀にはまるで気付いておらず、シャルは全くノールックで腕を後ろに回してきたところで私は阿吽の呼吸で絶妙な位置に剣の柄をシャルの手の位置に動かし、シャルが剣の柄に触れた瞬間ゼロコンマ数秒の速さで剣を抜いて水平に剣を薙いだ。


 男は一切の抵抗も出来ずそのまま前のめりに倒れてきて正直私は男に触れたくなかったが、派手に倒れて大きな音がして人がやってくるのは困ると一瞬の間に判断して仕方なく男を抱きしめてそっと横たえた。


 傍に仕えていた女の人達は騒ぐかと思ったら、あまりの速さに状況を理解出来ていないようで、さらに一滴の血も流れていないし無残な光景があるわけでもないので恐怖でパニックになることもなかった。


「助けに来るのが遅くなってすまん、アタイ達は世直し仮面・・・今回は特別に仮面は付けていないが、世直し仮面だ、今から盗賊どもを全員やっつけるので静かにしていてくれるか?」


「神様の使いも来てくれていますよ!」


「オイラが!いや、我が来たからもう大丈夫だ!」


 ほとんど無表情に見えた女性達の顔が少しだけ明るくなり、コクコクを頷いた。


「よし、本格的にやるぞ!パッと見て強そうな奴やエラそうな奴を優先するんだ、接近戦で動き回れば弓矢はそうそう当たらない、そもそも敵陣の中だから同士討ちを嫌がって弓矢は使わないだろう」


「わかった!」


「さぁ行くぞ!少しは歯ごたえのある奴がいればいいな!」


 私とシャルは来た道を戻って、テントの外に出て各個撃破することにした。


 幸いなことにあちこちで焚火のかまどに火をつけて夕食の準備をし始めており、たった2人の少女が素早く動いていてもほぼ誰も気にする・・・というよりも誰も気にも止めていなかった。


「やっ!そのお鍋美味しそうだな!」


「そうだろう!?オレの作る鍋はウメェぞ!ってひゃあ!お前凄い美人だな!」


「キシシシシシ!あんがとよ!」


ヒュン!・・・バタッ


「えっと・・・こんばんは」


「うん?おっ!おおう!?」


「うぉーーーっ!?凄ェ美人だ!」


「ホントだ!凄い黒髪の美人だ!」


「すいません・・・」


ヒュヒュヒュン!ドサドサドサッ


「かなた兄ちゃんスゲェ!一瞬で3人倒した!」


 こうして私とシャルは次々と焚火かまどの場所に行ってほとんど無防備に煮炊きをしている盗賊達を殲滅していった。


 大軍が押し寄せているような状況ではない上にほとんど音を立てずに殲滅、それも筋骨隆々で完全武装の戦士ではなく軽装の少女二人がいるだけなので、どんどん手こずる事なく焚火かまどごとに集まっている小集団を殲滅していった。


 さらにまた幸いな事に薄暗くなってきたので、状況が分かりにくくなっている上に、皆焚火の前で食事と酒に夢中で他の焚火周辺の集団など気にしておらず、皆談笑しながら飲食していたので、さらに効率よく殲滅作業は次々と進行していった。


 一か所につき1分もかかるかかからないかという驚異の殲滅速度でどんどん盗賊達を気絶させていき、大体一か所で10人程度の盗賊達がいて、開始から20分程が経過した辺りでもうかなりの数の盗賊達を倒し、残るは外周の見張り役を兼ねた数か所程度となった。


 既に日は落ちていて、焚火かまどの火を付けっぱなしにしているので、外周の者達はいつもより静かだと思うだけで未だに警戒した様子はなかった。


 そうして結局一度も騒ぎを起こすこともなければ、手ごわい相手に苦戦する事もなければ、大勢の野盗達に逃げられる事もなく、2人の少女による静かで一方的な殲滅は終了した。


 最後にリュウトが地上からおよそ20メートル程の高さから空に向かって盛大に炎のブレスを吐くと夜空に向かって一条の閃光が輝いた。


 リュウトはこれまでずっと私の後ろで見ているだけだったので、ウズウズしていて力が有り余っていたようで、かなりのフルパワーでブレスを盛大に吐き、タップリ30秒程も炎のブレスを吐き続けるとグッタリして私に抱き着いてきた。とても可愛かった。


 ちなみにその可愛い姿とは裏腹にリュウトの炎のブレスに触れた者はその地獄の業火によって跡形もなく焼き尽くされる事だろう。


 近代科学文明社会と違ってこの世界はまだ電気のない世界なので、街の明かりはまだまだ明るいものではないためリュウトの炎のブレスは恐らくかなり遠くからでも容易に目撃出来たはずで、きっとこの後町の方から自警団達がやってくるだろうと思い、私とシャルは一番料理が上手そうだった者が作っていた焚火かまどに行って、良い感じに仕上がっていた鍋を勝手に食べることにした。


「やっ!確かにこれはなかなか旨い!」


「ホントだ!塩加減といい薬味といい、色んな具材から出るうま味といい、実に美味しい!しかも途中までしっかりアク抜きもしていたみたいだから、渋みとか雑味が消えててとても美味しいね!」


「モグモグ、ゴクン!美味しい!」


 私達は大量の盗賊達が気絶して横たわっている中、全くそれらを意に介さず楽しそうにモリモリと鍋を食べていたが、そんな様子をテントの中から見ていた可哀そうな囚われの身の女性達は恐る恐る静かにゆっくりと外に出てきて、しばらく見渡した後で彼女たちも各々鍋をつつき始め、時折小さな笑い声がチラホラと聞こえてきた。

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