第122話
いくら超人的な人間といえどたった2人、それもどう見ても女子といった外観の人間が数百人相手の武装集団を壊滅させるなど作り話しにすらならない程に非現実的な作戦なので、さすがに町長を含めその場の全員から批判されそうだったのだが・・・
「皆の者よく聞け!オイラ、じゃない我は神の使い!それもドラゴンの化身である!神の使いである我が保障しよう、この2人と我が加わればたかが数百人程度の悪党どもなどケチョンケチョンだ!」
「け、けちょんけちょん・・・とは、どういう意味でありましょうか?」
「えっ!?あれ?えっとね・・・チョチョイのチョイっていう意味だよ」
「ちょ、ちょちょいのちょい?・・・で、ございますか?」
「そう!チョチョイのチョイ!」
「えっと、まるで相手にならないという意味です、リュウト様は姿を見えなくさせたり、口から物凄い炎を吐くことが出来ます、それこそ町を焼き払う程の物凄い業火です、リュウト様、ちょっと姿を消してもらえますか?」
「分かった!」
スウ・・・
「なんと!消えた!」
「さすが神の使いであられます!」
「ウン、オイラ、じゃない我は凄いがこの2人も人間にしては凄く強い、だから何の心配もないぞ!」
「ハハァッ、分かりました」
「えーと、可能な限り殺さずに気絶させておきますので、空にリュウト様のブレス、じゃない、えーと・・・炎の柱があがったら私達が勝利したという合図ですので来てください」
「「「 分かりました! 」」」
リュウトのおかげで何とか町長始め自警団の人達を説得出来たので、私達は提供する物資と一緒に武装集団の元に行くことになった。私の刀とシャルの剣は提供物資の箱の中に隠した。
「ホウ、思っていたよりも早かったな、賢明な決断だ・・・って・・・何ィィィッ!!」
ザワザワ・・・
「「「 どうした?何事だ? 」」」
「うわっ!なっなんという上玉!こんな上玉一体どこに隠していたんだ!?いや、それよりもお前達、気は確かか!?」
「この方々は町の平和のために自ら望んでお前達の元に行くと言ってくれたのだ!お前達のような者どもにこれほど美しい方々を送るのは我らとて断腸の思いだ!それでも無用な血が流れ死者が出るのを防げるなら喜んで行こうと言ってくれたのだ!グウウウッ!!」
交渉人は演技とは思えない程見事な号泣ぶりを披露した。半分以上本気で泣いているようだった。
「そ、そうか・・・その意気は認めよう、しばらくお前たちの町には手を出さない事を約束する」
「ああ、どうかその2人にはなるべく悪いようにはしないでくれ」
「それは・・・いや、分かった」
「よし!お前ら!戻るぞ!」
「「「 オウ! 」」」
「クククク・・・コイツらバカだな」
と、小声で言ったのは悪党ではなくシャルで、シャルはうつむいて表情を隠していたが、凄く嬉しそうというか若干あくどい顔をしていた。
そして今度は本物の悪党達が私達を連行するために近付いてきた。
「ヘヘヘ・・・そう怖がんなって、ってひゃあ!こりゃ物凄い別嬪だ!こんな別嬪初めて見た!なんちゅう美しい黒髪!ひゃあ瞳まで黒い!ありがたや!ありがたや!」
「こら!拝んでないでさっさと運べ!ってひゃあホントだ!こりゃとんでもねぇ別嬪だ!」
「こっちの銀髪もどエライ別嬪だが、黒髪の方はこの世のものとは思えない美人だ!」
「ああ、なんと、もったいない・・・」
「ああ、こんな美しい女子が・・・」
「可哀そうに・・・」
彼らのセリフから察するに、連行された女性達がどういう目に遭うのか想像出来たが、あまり良い想像じゃないので頭の中から追いやる事にした。
「オイ!お前ら!さっさと運ぶんだ!」
「「「 ヘッ、ヘイ! 」」」
こうして私とシャルは結構丁重に扱われてそのまま台車の上に載って馬にひかれていった。
「ところでかなり今更の事なんだけど、こうなるともう世直し仮面じゃないよね、僕は化粧してるから一応変装している事になってるけど、シャルはほぼ素顔じゃない?素性が明らかになるのは困ると思うんだけど・・・」
「まぁしょうがない、こういう事もあるさ、何事も臨機応変だ」
「う、う~ん・・・あっそうだ、それにリュウト、リュウトも透明になれるんだったら靴下仮面は要らないんじゃない?」
「あっ、ホントだ!アハハハハハ!でもかなたお兄ちゃん達と一緒に仮面を被りたかったし、シャル姉ちゃんが大事な赤い靴下で仮面を作ってくれたから被りたかったんだ!」
「その靴下かなたの高級石鹸で洗ったばっかりだから良い香りだろう?」
「うん!とても良い匂いがするよ!温かいし!」
と、これから私たちがどんな目に遭わされるか想像すれば、とてもこんな悠長な会話をしている状況ではないのに、私達は相変わらずのんきな会話をしながらカッポカッポと馬にひかれていった。
2時間程が経過したところで、見晴らしの良い草原に到着し、森を背後にした場所にてかなりの規模の野営地があるのを見た。
「フム、敵襲があった場合でもすぐに森の中に入って応戦や逃走出来るようにしているようだぞ」
「なるほど・・・」
「わぁ大きなテントだ!あんなの初めて見た!」
「北方の一部地域の人達の中には一つの決まった場所に定住しないで、あちこち移動して生活する者達がいると聞いたことがある、恐らくそうした者が中心にいるんだろう」
なるほど、かつてモンゴルにいた騎馬民族のようだと私は思った。相変わらず何故こういう事に関する記憶は残っているのだろうか・・・
やがていかにもむさくるしい男達が大勢いる領域に入ると、台車に乗っている私とシャルを見た瞬間目を丸く見開いて驚愕の表情を浮かべた。
「ウォーッ!凄ェッ!凄ぇ美人だ!」
「ひゃぁーっ!なんちゅう別嬪だ!」
「どっちも凄い美人だがあの黒髪を見ろ!あんな美人見た事がない!」
「コラ!どけろ!道を開けろ!」
怒鳴られても男達は構わず付いてきて私とシャルをうっとりした様子で見続けた。
台車は最も大きなテントの前で止まり、テントの入り口の前に立っていた二人の男が近付いてきた。どちらもかなり身体が大きく顔にあちこち傷が付いていて物凄く怖かった。
「よし、かなた、やるぞ」
「えっ、もうやるの?夜まで待って寝込みを襲うんじゃないの?」
「うむ、前回は少し楽しんでいたせいでかなたのアレの危機だったからな、今回はただ殲滅すれば良いだけだし、証拠を貴族たちに見せるために待つ必要もない、やれるうちにやってしまおう」
「分かった、でも夜中に寝込みを襲うのと違って逃げ出す人達もいるんじゃない?」
「日が明るい今のうちの方が逃げる奴を見つけやすいし、どうぜ逃げる奴は大したことない奴だから、せいぜい野盗に落ちぶれる程度だろう」
「なるほどそうだね、分かった、じゃあやろう」
私達は台車に乗せられた積み荷の箱の中から刀と剣を取り出して、鞘から抜くと同時にそれぞれ対面した怖くて強そうな体の大きい門番役に問答無用に斬りかかった。
二人とも口の端をつり上げて下卑てニヤけていた表情から一変して驚愕の表情に変わり、彼らの武器に手をかけたところは大したものだったが、何もできずにそのまま気絶した。
すぐにシャルの方を見ると、シャルが予想していた通り、魔の森で手に入れた怪しい不思議な剣は私の刀と同じように相手を完全に斬りつけても相手の身体が真っ二つになっている事はなく、無傷のまま気絶させていた。
「思った通りだ!この剣は実に素晴らしい!」
シャルはとても満足そうに剣を見つめて頷き、私もそれを見て頷き、いよいよエンジン全開で武装集団殲滅に取り掛かることにした。




