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タナカカナタのカタナ  作者: キクメン


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第120話

 北へ向かう街道を封鎖しかけていたのは、これから向かう中規模の町の自警団で、どうやら軍隊と呼べるほどの規模や組織ではないようだった。


 そしてこの場所は襲撃予想の方角とは反対方向なのでそれほど厳重でピリピリした緊張感漂う空気ではなく、警備要員も精鋭というよりはどこかのどかな感じのする普段は普通の町民のような人達で配備された人員数もそれほど多くなかった。


 そうした人達だったのと私たちが新聞に掲載されるほどの有名人だったので色々と教えてくれて、どうやら襲撃してくるのは隣の町の軍隊ではなく、あちこちの町や村で専業の軍人だった者達が集まって出来た武力集団だとの事だった。


 これまで北方地域では厳しい自然環境の中で数少ない資源を求めて奪い合う地域紛争が起こる長い歴史があったが、食料となる野菜の品種改良であったり、流通と貿易のルートが拡大されていったことでこれまで北では無用だったものが他の地域では価値が創出されそれで収益を得られるようになったり、他にも探検家によって貴重な鉱石が埋蔵されている洞窟が発見されたりなどして、少しずつ経済的にも豊かになっていくことで徐々に地域間紛争の発生率は低くなっていき、軍隊の規模も縮小していく過程にあった。


 そうした中にあってそれまで職業軍人を生業としていた者達の中で状況の変化に応じてリスキリング出来ず、かつある意味戦争の犠牲者ともいえる人達として戦って奪う事しか出来ない者達が集まり、徐々にその勢力が拡大して武装集団になった。


 最初はほぼ野盗集団だったのが、徐々に規模を拡大していき組織を取りまとめる人物も現れて、今や一つの勢力にまで拡大発展しているそうだった。


 彼らはなかなかにしたたかなようで、あまりにも突出してしまうと他の各地域が協定を結んで協力して彼らを壊滅させにくる可能性が出てしまうので、襲撃する際はやり過ぎない程度に絶妙な手加減をするそうだった。また、どうにもあちこちの町や村に多少の物資を横流ししたりすることで予防線も張っているなどの狡猾さもあった。


 規模的には数百人程度との事だが、それでもほぼ全員が職業軍人なので戦闘集団としては桁外れな武力を持っていたので、そう簡単に手を出せないというのも彼らの存続に一役買っていた。


 そのため大規模な討伐が行われる事もなく、例えは悪いがたまに起こる自然災害程度の認知度でずるずると彼らの存在を許していた。


 さすがに私とシャルが超人でリュウトのブレスがあったとしてもそんな集団を相手に戦いを挑むわけにはいかず、私達でそんな状況を解決しようなどとは思わなかったのだが・・・


「よし!アタイ達でそいつらをやっつけよう!」


「やっつけよう!」


「ちょっ!待って待って!」


 どうにもこういう事においてはシャルと私の意思疎通は方向が異なるのであった。


 有難いことに自警団の人達の耳には届かなかったようなので、シャルとリュウトを引き寄せてさすがにたった3人でそんな無謀な事をしてはいけないと説得を試みた。


「大丈夫だ!アタイの剣とかなたのカタナがあれば相手を殺さずに無力化できる!リュウトは・・・口から吐く炎を相手に向けたらダメだぞ、相手は黒焦げになって死んじゃうから威嚇するのに使うんだ、神の使いがお怒りだと言えばかなり効果がある」


「いやいやいや、相手は数百人だよ、飛び道具で背後から襲ってくるかもしれないし、相手は数が多いから行く先々で刺客を送ってきて、トイレで用を足していたり、食べ物に毒を盛ったりとか、油断しているときに色々仕掛けてきてこの先安心して旅ができなくなるかもかもしれないじゃないか」


「大丈夫だ!一人残さずやっつけるぞ!背中はかなたにまかせた!あと毒は前に白キノコを食べたから効かない身体になってるはずだ!トイレはかなたの見てる前ですれば良い!」


「そうだ!そうだ!大丈夫!」


「そんな無茶な・・・」


 どうにも新しい剣を手に入れたのと、ここ最近全く戦いとは無縁の生活を送っていたことでモルサール流の天才剣士はかなりうずうずしているようで、戦いたくて仕方がないという様子だった。


 それこそまさに普通の生活に戻れない戦闘集団の人達のようではないかと思ってしまった。


 とりあえず自警団の人達には今言った事は話さないようにと念を押して、ひとまず封鎖されている通路を通してもらう事にした。


 私たちのことは新聞で出回っているので、武装集団達も彼らの仕事の邪魔さえしなければ、神探しの旅の邪魔はしないだろうとの事だった。


 そうして自警団を離れて彼らの町に向かう街道を歩き続けた。


「前にやった時みたいに仮面をかぶって戦おう!そしたらアタイ達だと気づかれない!」


「それ面白い!オイラもかぶる!」


「いや、リュウトは仮面をかぶってもバレちゃうってば、っていうかそもそもリュウトに合う仮面なんてないと思うんだけど・・・」


「アタイが作ってあげるぞ、靴下に穴をあければ合うんじゃないか?」


「やった!それイイネ!」


「いや、だからなんでもう戦う事前提で話しが進んでるの」


「アタイらは世直し仮面だから、正義を行わなければならないんだ!」


「世直し仮面イイネ!オイラもそれに入りたい!」


「リュウトもアタイ達の仲間だから、世直し仮面の一員だ!」


「やった!」


 ちなみに以前盗賊を倒したときにかぶったマスクはちゃっかり持ってきており、私のリュックにもしっかり入っていたりする・・・


 そんな話しをしている合間に町に到着してしまったが、これから武装集団が襲ってくるとは思えないほど皆普通に暮らしている様子だった。


「とりあえず腹が減ったから何か食べよう!」


「賛成!」


「あっ!もしかしてその空飛ぶトカゲとあなた達は神の使いと探検家タナナさんですか!?」


「アハハハハハ!惜しい!タナカだ!そしてアタイはシャル!タナカの弟子だ!」


 先程と同じようなやりとりを町の門番として、特に何事もなく町の中に入れてもらい、飯屋を探して入って日替わり定食を頼んで食べたが、この世界に来て初めてあまり美味しくない料理を味わうことになった。


「ウム・・・不味くはないが美味しくもないな、量も多くない」


「ムカデやサソリよりは美味しいよ!」


 なかなかに辛辣なコメントが飛び交っているがこの状況下では無理もなく、まだこうして余所者の私達にも食事を提供してもらえるだけましな状況だった。


 ちなみにリュウトは今ではちゃんとスプーンやナイフにフォークを使って食事をすることが出来て、テーブルの上に座って行儀よく食べる姿は結構可愛くて見ていて飽きなかった。店の人もほっこりした表情でしばらく見ていた程だった。


 ともあれ腹が膨れたので店を出て町を散策していると、一応戦闘準備らしい事はしているようだが、それよりも恐らく武装集団に差し出す食料や酒樽や衣料品などを選別して運び出している人達の方が目についた。


 戦闘によって多くの死傷者を出すよりもある程度の物資を明け渡すことで戦闘を回避する方を選択しているのだろう。


「戦わないのならなんで街道を封鎖したんだ?」


「うーん、一応念のためとかじゃない?」


 町の様子に感化されて私たちまでこれから武装集団がやってくるというのになんとものどかな会話をしていたのだが、そこで町の中央部にある大きな鐘が鳴り響いた。


 先ほどまで用意していた物資を大きな台車に乗せて来た方向とは反対の方向に向かって大通りを進んでいったので私達もそれとなく後をつけた。

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