第119話
大お披露目会実施から数日、私たちは警護の人達の付き添いのもと中央都市を歩き回り、食べ物屋台に寄って買い食いしたり、いろんなお店を見て回ったり、様々な仕事場にいって働く人達の話しを聞いたりするなどの社会見学を行った。
目的は多くの一般の人達と交流することで認知度を高めてもらい、少しずつこの社会に溶け込んでいく事が目的である。
毎日中央都市部の様々な場所に訪れ、その際新聞記者や画家も一緒に行動して、ある意味で偏向報道ではあるかも知れないが、その時の模様をなるべく心温まる感じで記事と絵にしてもらった。
その後新聞の見出しに大きく掲載されて各地方に届けられ、ますます神の使いという設定のニッキ達の認知度がこの世界に徐々に広まっていった。
そうして1週間ほどが過ぎ、そろそろニッキ達が元居た地方に戻っても大丈夫だろうという報告が西と南の地域からもたらされたので、ニッキとシルビアはそれぞれ護衛をつけてそれぞれの元へと戻ることになった。リュウトは残念ながら帰っても近くに町村のない不毛な岩石地帯なので私とシャルの元にとどまった。
ちなみにその間ちゃっかり数回ほどモルサール本部道場を訪ねてマリーの手作り料理をご馳走になったりもした。
「かなた、そろそろ次の探検をしたいぞ」
「オイラも!」
「次の探検はもう決めてあるんだ、というよりもこれからずっとその探検になると思う」
「やっ!それはどんな探検だ?」
「聞きたい!」
「これからこの世界をあちこち旅して他の地球出身の人達を探しに行きたいんだけどどう思う?」
「よしっ決定っ!」
「オイラも賛成!」
「そう言うと思っていたけど、実際そう言ってくれて嬉しいよ、ありがとう」
「世界中旅するというのも良いし、ニッキやシルビアやリュウトのような仲間と出会えるのも良いし、前にかなたが倒した大男のような邪神の使いに再挑戦するのも良い!今度は勝つぞ!」
「賛成!賛成!大賛成!」
それから数日後に私のライセンスが1級を飛び越えてとうとう超1級ランクになり、シャルも2級から1級に昇格した。
「うーむ・・・」
「何を考えこんでるの?シャル」
「いや、アタイの場合かなたに付いて行っただけで特に何もしてないのに1級になったのは果たして良いのだろうかと思っていたのだ」
「何もしてないって事はないし、そもそも徒弟制度での登録は継続しているからそういうものとして、受け止めても良いんじゃない?」
「オイラも良いと思う!シャル姉ちゃんは人間の中ではとても凄いよ!」
「そうか分かった!それなら有難く受け取っておくことにする!」
シャルのこういう素直なところは個人的にとても好感が持てて、自分もこうありたいと思った。
ところが新しく刻印されたライセンス証を受け取りに探検家組合に行ったところ、さすがに1級ライセンス保持者なのに徒弟制度を継続するのは、規約上違反ではないが常識的に無理があるという事で、私とシャルの徒弟制度は終了となってしまった。
そして私の超1級ライセンスは通常よりもさらに上級扱いになっているようで、重大な犯罪行為などを行わない限り、完全永久保持でライセンス降格もないというものだった。
ただ1点だけ気になったのが、私の死後の事になるが私の銅像が建てられて各地方の大規模な町の探検家組合に飾られるとの事だった。ちなみに神の使いであるニッキ達は死後ではなく近いうちに銅像が建てられるそうだった。
一通りのランクアップ登録に関する手続きと、今回の件における莫大な成功報酬受領に関する手続きが終了したところでようやく完全フリーな状態となり、いよいよ待望の旅の開始となった。
当然いつかは東の果ての海の先にある島国を目指したいところだが、普通の人では半年以上もかかるという距離にあるようなのでそれは後回しにして、まずは北のエリアに行くことにした。
西や南もまだまだ未開拓エリアはあるが、こちらについてはニッキやシルビアが時間のある時に少しずつ捜索してみるとのことで、それぞれに任せることにした。
また重要な事として今回神の使いの存在を大々的に世間に公表した事により、かなり多くの探検家達が神の使いを発見するのだと意気込むようになり、続々と未開拓エリアや古代遺跡に洞窟などを捜索し始めているようだった。ただその分事故も多く、既に重傷者や行方不明の探検家もいるようだった。
組合としても十分危険に配慮する事と、さらに要注意事項として神の使いが皆全て善良な存在とは限らず、中には邪神の使いとして狂暴凶悪な存在もいるのでうかつに接触しないこともしっかり説明し、ランクの低い探検家には場合によっては探索を許可しない事もあるらしかった。
とはいえまだ1週間も経っていない状況なので、新たな神の使いが発見されたという報告もなく、せいぜい未発見の生き物が発見されたといった程度の状況だった。
ともあれ私達は北に向けて出発する事にしたのだが、事前に北の出身のギャラガとグルカンから参考情報を仕入れていた。
ギャラガ達はマチャントと一緒に神の使いのパレードを見に来ていて、さすがに城塞都市部の高級ホテルは確保出来なかったが、外周部の割と城塞都市に近いところに宿を借りていて、パレード終了後もしばらく滞在していたので、彼らと合流して北のエリアに関する情報を仕入れいていたのだ。
そうして早速前回も使用した荷車を引いて中央都市を出て北に向かう街道を進んだ。もはや疾走と言っていい程に上達したモルサール流歩方術でシャルと一緒に突き進んだ。
リュウトも結構速く飛ぶようになり私たちにちゃんとついてきたが、さすがに持久力の方がまだ足りないようで割と頻繁に私の頭の上に乗ったり荷車の中に入って休憩していた。
中央都市を出発してから数日の間はさすがに治安は良く盗賊に行く手を遮られるような事もなく順調に進み、懸案のトイレ等の衛生環境についても問題はなかった。
しかし5日目を過ぎたあたりから水洗トイレの完備状況が徐々に低くなっていったが、それでもまだ値段の高い宿を選べばそれなりに清潔なトイレが設けられていた。
そして1週間が過ぎたところで久しぶりに街道を塞ぐ一団が現れた。
「かなた兄ちゃん、道が塞がれてるよ!」
「あっ本当だ、やっぱり出てきたかぁ・・・」
「久しぶりの盗賊か・・・うん?あれ盗賊か?」
「確かに何かいつもと違うね・・・」
「皆同じような服を着ているよ、なんとなくオイラあの人たちは軍人のような気がする」
「あっなるほど、きっとそうだ」
私達は一応警戒しながらも行く手を塞いでいる一団の元に近づいた。
「こ、こんにちは~」
「うん?・・・あっ!あなた方は!」
「新聞で見た!神の使いの空飛ぶトカゲ様だ!」
「できればドラゴンって呼んで欲しいなぁ」
「あっ!もっ!申し訳ありません!どらごん様!」
「わっそんなに頭を下げて謝らなくてもいいよ!」
「ハッ!ハハァッ!」
「となるとあなたはかの超一流の探検家の・・・えぇと・・・タカカ様ですか!?」
「アハハハハハ!惜しい!タナカだ!そしてアタイはシャル!タナカの弟子だ!」
「しっ!失礼しましたタナカ様!」
「いえいえ、大丈夫です、ところで道を塞いでいるのは何か理由があるんですか?」
「はい、どうやら近々襲撃がありそうなのです」
「えっ!襲撃?ってどこから?何の襲撃ですか?」
「実は・・・」
以前ギャラガから聞いた話では、北方の地域ではまだ政情不安な地域があり、温暖で食物が豊かに育つ土壌のある地域と異なり、厳しい自然環境の中で資源を求めて地域同士の紛争も起こっていると聞いたが、まさにギャラガの言う通りの紛争が起き始めているようだった・・・




