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タナカカナタのカタナ  作者: キクメン


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第118話

 神の使い達の大お披露目会は以前鬼怪人討伐の祝賀会で使われたかつてのお城の大ホールで行われる事になったが、今回はかなりの数の参加者になるため一度で全員入りきらないので、余裕を持って午前と午後の2回に分けて開催されることになり、その間には城塞都市中心部に限られるがお披露目パレードも行うことになっていた。


 そのため大お披露目会には招待されていないが、それなりの権力者や資産家達は神の使いを一目見ようと大金を投じて城塞都市内部の高級宿を片っ端から確保して、さらに沿道で眺めの良い場所も人と金を使ってあらかた確保していた。


 そして当日、まず朝一番に大きな鐘の音が鳴り響き、続いて各地で遠くまで響く太鼓のような大きな音があちこちで鳴って共鳴し、恐らく城塞都市部のみならず中央都市外縁部までも含めた全域まで大お披露目会開催の合図が届いたことだろう。


 続いて各地方において人口や規模の大きな町の町長や領地を統治している貴族などの権力者達が次々とホールにやってきたが、付き従う護衛役や豪華な馬車の一団により、ホールに入る前から既に大渋滞しており、当然こうした事態は事前にしっかり想定していたが、それでも各担当者たちはスケジュール通りに進行出来るだろうかという不安と戦いながら淡々と仕事をこなしていた。


 そうして多くの人達が大忙しで働いている中、私達は優雅に朝から美味しい食事をゆったりと楽しんでいた。


 今日は大お披露目会が始まったら食事どころではなくなるのと、路上に出てのパレードはちょうどお昼どきに行われるので昼食を食べているヒマがないので、お腹を壊さない程度に少し多めに食べてしっかり英気を養う必要があったのだ。


 さらに神の使いであるニッキもシルビアもリュウトも全員裸のままでお披露目するためお披露目に相応しい衣装合わせの必要もなく、着付けに時間がかかることもないので、ゆっくりと朝食を楽しむことが出来た。


 私達の方は単なる付き人程度の存在なので普通に常識的な服装をしてれば問題ないし、シャルもムルギンも性格的に何を着ようかなどで何時間も迷う乙女ではないので普通にいつもの服のまま参加するつもりだったのだが、なんといつの間に採寸して用意したのか、かなり上質で見栄えの良いジャケットが用意されていつもの服の上にこれを羽織ってくれといって渡された。しかもこれは今回限りの貸衣装ではなくそのままもらえるようだった。


 ちなみに私達は昨日のうちからかつてのお城の上階に移動していてそこで一夜を過ごしており、式典が始まった際はそのまま下の階のホールへ降りるだけという状況だった。


 そしてしっかりと朝食を食べて、トイレも済ませて用意が整ったところで係の人がやって来たので、私達はいよいよホールへと向かう事にした。


 ただ下の階に降りるだけとはいっても、そこはさすがにかつてのお城というだけあってかなり大きな建物なのでホールに移動するだけでも10分近くかかるのだが、ホールに近づくに連れて凄い数の人達がきているようだというのが明らかに分かり、私も含めて全員少し緊張してきた。


 いったん手前の待機室にてとまり、係の人達がハンドサインで到着と頃合いのタイミングを確認し、いよいよ進行役が大きな声で入場を知らせる言葉を発すると会場内は大きな声援と拍手に包まれ、まさにハンドサインでやりとりしないと聞き取れない程の状態になった。


「ひゃあ、凄いぞこりゃ、こんな凄い式典、いや、年に一度のお祭りでさえここまでの熱狂ぶりは見たことがない!」


「アタシも見たことないよ!」


「アハハハハハ!凄いや!オイラこういうお祭り騒ぎ大好き!」


「サンバのカーニバルはもっと凄いですよ!」


「あっなるほど!確かにそうだね!」


「またちきゅうの言葉だね、シルビアのいたところにはさんばのかーにばるっていう凄いお祭りがあったってことかい?」


「そうです!みんな派手な衣装を着て町中を踊って歩くんですよ!大きな人形とかを作ったりとかもして町中を歩くんです!」


「それは面白そうだね!」


「それでは皆さん!壇上にお願いしまぁす!」


「「「はぁーい!」」」


 リュウトの持ち前の明るさとシルビアのサンバのカーニバルの話題のおかげで緊張感はほぐれ、私達は待機室を出てホールに入場した。


 すると突然それまで大きな音に包まれていたホールがピタッと静かになり、ニッキ、シルビア、リュウトが壇上に向かって進んでいくのを皆固唾を飲んで見守り、壇上に到着して皆に向かってお辞儀をしたところで一気に爆発したかのように、まるでホールが揺れているかのような大声援で包まれた。


 ニッキ達は皆に向かって手を振って応え、リュウトはパタパタと飛んで応えると、ますます声援は大きくなった。


 なかなか声援が納まらないので、係の人達もかなり苦労しながらなんとか「皆さん静粛に!」と言いまわって、ようやく静まったところで都市長が発言し始めたが、何せ電気や機械のない世界なため、マイクもスピーカーも拡声器もないので、都市長は自ら大声を張り上げて話すしかなかったが、都市長はかなり良く通る大きな声、それもかなり良い声でお披露目会開催の挨拶とニッキ達の簡単な紹介とこれまでのいきさつを説明した。


 その際私がニッキ達を見つけた事にも触れて、その多大な功績により一級どころか超一級の探検家ライセンス付与を検討するというと会場内では肯定を表す拍手が沸き上がった。


 私はあまり有名人にはなりたくなかったが、ニッキ達の安全で平穏な生活を得るために決断した事なので受け入れる覚悟は出来ていた。


 その後参列者達は1人につきおよそ20秒程度の簡単な挨拶を含めた参拝時間が用意されて、係の人達に誘導されてニッキ達と対面で面会していった。


 そうしてなんとか午前の部はほぼオンスケで進行し、係の人達はホッと一息つく暇もなく続けてパレード進行に取り掛かった。


 私達もすぐに移動しニッキ達は特別に作られた豪華な台車の上に乗り、美しい装飾具に身をまとった白馬に引かれて城を出て、城塞都市の表通りをゆっくりと進んで行った。


 沿道には物凄い人だかりが出来ていて、既にお祭り状態といった感じだったが、先行する騎馬隊に続いてラッパ隊がラッパを鳴らしながらやってくるとより一層大きな歓声で大盛り上がりとなった。


 当然の事ながら各地には腕章をつけた警護役の人達が沢山配置されており、弓矢やスリングなどを使った狙撃がないように警戒監視していた。


 城塞都市部は狭い面積を有効活用するために複数階の建物が多くあるので警護は難しかったが、主要な箇所は富裕層やそれなりの権力者によって占められていて、彼等は特等席で神の使い達を一目見るために来ていてその素性も明らかなので、ある程度警護の面でも一役買っていた。


 そうしておよそ2時間程かけて広い大通りを進んだパレードは大きな問題もなく進行し、もう一度城に戻っていったん小休止した後に午後のお披露目会が開始された。


 午前の時と同様に都市長は大きな声を張り上げ、その後参拝式へと移ったが、その際ハイラル家一行も現れて、イザベルはニッキと再開出来て大喜びだったが、新たにシルビアやリュウトとも会えてとても嬉しそうだった。


 また、モルサール流の本家一行もやってきたが、マリーがイザベルと同じくらい大喜びでニッキ達と挨拶をした。斜め後ろでひっそりと目立たぬよう控えていた私とシャルとムルギンの方も見て、ペコリとお辞儀をした。ヴォルタークもシャルの方を見てごくわずかに目を伏せて頷いた。


 そうしてニッキ達はなんとか午前午後合わせて千人以上の参列者達と挨拶し終え、およそ10時間にも渡る大仕事を終えたのであった。とはいえ全員超人なので気遣いによる疲労感が少々あるといった程度で、体の方は全くもって疲労していなかった。


 ただ空腹によるお腹の合唱の不満だけは全員大いに訴えかけていて、すぐにいつも以上の豪勢なご馳走がタップリ用意されたのであった。

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