第116話
まさか今回魔の森に入る前に一番最初にシャルが言っていた凄い剣が手に入るとは全く予想もしていなかった。それも予想外過ぎる展開で。
ともあれもう一人の地球人のリュウトと実に良い感じで出会い、おまけにシャルの念願の凄い剣まで手に入り、さらに加えてシャルとムルギンの超人化まで達成したという事で、まさに魔の森に来て大正解で良い事尽しの万々歳といった所だった。
「なんか・・・ここまで良い事ばかりだと、その反動で何か悪いことが起きたりして・・・」
「やっ、ムルギン、それは心で思っていても口にしたらダメなやつだぞ、口にした途端現実になるって良く言われているのだ」
「あっ、ゴメン!つい口から出ちゃった!」
「実は僕もムルギンと同じ事考えてた・・・」
「私もです・・・」
「実は私も・・・」
「オイラはそんな事ちっとも考えてなかったよ!それよりもこれから行くところが楽しみでその事ばかり考えてた!」
「その意気やヨシ!リュウトの楽天的な明るい性格はとても大事だ!アタイ達の少し消極的な考えをリュウトの元気で吹き飛ばしてもらおう!」
「そうですね!リュウトのポジティブさで私達のネガティブな考えを飛ばしてもらいましょう!」
「あっまた難しいちきゅうじんの言葉だ、ぽじてぃぶとねがてぃぶ・・・えーと・・・明るい考え方と暗い考え方ってことかい?」
「わっムルギンさすがですね!そういう感じの意味です!」
「なんとなく話の前後と感覚でそんな風な意味かなってのが分かるようになってきた!」
「良いフィーリングですよ!」
「ふぃーりんぐ・・・良い感覚ってことだね!」
「そうです!」
「かなた兄ちゃん、オイラにはさっきからムルギン姉ちゃんとシルビア姉ちゃんが同じ英語を話しているようにしか聞こえないんだけど、何で2人とも同じ単語を繰り返しているんだ?」
「えーと・・・あっそうか分かった!それこそ英語だからだ!僕には日本語で聞こえるんだけど、自分の知ってる英単語のところだけ英語のまま聞こえるんだ、だけどリュウトはアメリカ人だからムルギンとシルビアの会話がそもそも英語に聞こえるから、英単語のところもそのまま英語として同じ単語を繰り返しているように聞こえるんだ、これがシルビアだとポルトガル語の中に時折り英単語が混じって聞こえている事になるんだよ」
「へぇー!少しややこしくて難しいけど、何となく分かった!やっぱりかなた兄ちゃんは頭が良いんだね!」
「そ・・・そうかな?」
「そうだよ!」
「うむ!かなたは頭が良いぞ!」
そんな話しをしながら木こり達のいる伐採所目指して移動していたところ、ある意味でムルギンが先ほど言った良くない事が起きた。
私達は不幸な目にあった者達の姿を目にすることになったのだ。
それは大きな木の下で肩を寄せ合うようにして横たわっていた白骨死体だった。
「かなた兄ちゃん・・・」
「これってもしかして・・・」
「多分・・・魔の森に挑んで行方不明になった探検家の人達だと思う・・・」
「あっ!あれを見て!」
「あれは・・・お墓でしょうか?」
「いちにぃさん・・・6っつあるね」
「きっと先に死んだ仲間のお墓を作って、最後にこの二人が残ったんだ・・・」
「とても・・・とても悲しいです」
「うん・・・オイラも悲しい、泣きそう、グスッ」
「この二人のお墓も作ってあげませんか?私穴を掘ります!」
「そうだね、そうしよう」
「「賛成!」」
そうして仲間達の墓の横に穴を掘って二人の遺体を丁重に埋めた。その際遺品として剣とリュックを探検家組合と戦士組合に持っていく事にした。ちなみに墓の上には他の仲間達の遺品が置かれていたのでそれも持って帰る事にした。
その後木こり達のいる伐採所に到着すると、木こり達から無事生還してきた事を大いに喜ばれ、昼間から大宴会になって大いに楽しく飲んで食べて語り合って過ごした。
宴会の後は彼等の仕事を手伝い、彼等の数日分の仕事を終わらせたので木こり達からは大層喜ばれ、皆から見送られながら木こり村へと向かった。
木こり村に到着するとガリクソン一家からも暖かいおもてなしを受けて、行方不明だった探検家達の遺品を回収してきた事と新たな仲間が加わった事を話し、さらに大蛇の燻製肉をおすそわけして渡すと大喜びで早速調理し、夕食の場で全員その美味なる味を堪能した。
翌朝、皆から見送られながら木こり村を後にし、マチャントやギャラガ達のいる町に到着すると、やはり大歓迎の大宴会が始まりここでも大蛇の燻製肉を渡すと皆大喜びで美味しそうに食べた。
さらにマチャントに黒紫キュウリとピンク色の果物を5個ずつ渡すとマチャントは飛び上る程に大喜びしたが、それらに見合う報酬がないので競りに出した分の一割だけもらうので良いかと聞いてきたが、魔の森にいけばいくらでもあるし、そもそもお土産としても持ってきたのでお代はいらないと言ったのだが、下手したら一つ1億ガーランド以上もするようなものをタダでもらったというのが知られたら、商人仲間や商工組合からも快く思われずに今後の活動に支障をきたすと説得されたので、止む無く一割の報酬とする事にした。最初は五割で良いと言ったのだが、やはりそれも商人達から疎まれるということで一割まで引き下げられた。
それとは別にムルギンはスナギンに黒紫キュウリとピンク色の果物と厳重に包まれた白キノコを一つずつ渡した。そのまま食べると猛毒で恐らく一般人は死ぬだろうから気を付けて試すように、それから食べるとどういう症状になるかという事も付け加えてスナギンに説明すると、ギャラガ達は怖がってスナギンから少し離れた。
「もしも毒に耐えて生き残る事が出来たら凄い超人になるぞ!」
「い、いや、遠慮しておく」
と、そんな一幕もありつつこの日の夕食も大宴会となり、新しい仲間のリュウトも皆に紹介して夜遅くまで楽しく飲食と会話を楽しんだ。そして翌朝、今度は中央都市へと向かった。
さすがに人通りが多いのでシルビアとリュウトは荷車の中に入ってもらい、それ以外の全員で荷車を引いて激走した。
今や全員がモルサール流歩方術の使い手となり、しかも魔の森の食べ物で超人と化しているので、早馬並の速度でほとんど休みなく移動した。荷車の車輪の方が悲鳴を上げるという有様だった。
その結果わずか3日で駆け抜けて中央都市に到着することになり、真っ先に探検家組合に行って魔の森で行方不明になった探検家達の遺品を渡すと組合長はとても喜び、私のライセンスを1級にする昇格認定委員会にかけると言ってくれた。ちなみにシャルはその場で昇格して2級ライセンスを取得し、ムルギンもせっかくだからという事でその場で3級ライセンスの探検家として登録することになり、別室に行って肖像画を描いてもらうことになった。
そこでいよいよ私は組合長に世界がひっくり返る程の大事な話しがあると切り出した。
「この世界には神の使いと言われる存在が各地にいることが分かりました、今私のもとには3人の神の使いがいます、一人は南のクモガミ様の姿、一人は獣の神の姿、そして翼の生えたトカゲの姿、こちらは大きくなるとドラゴンという名の神聖な生き物になりますが今はまだ小さな子供の姿です、また以前シャルリッヒ様が打ち倒した大男は邪神の使いだった事も分かりました」
組合長は絶句して5秒ほど固まり、すぐに中央都市の都市長に連絡して緊急重要会議を開始するという状況になったのであった。




