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タナカカナタのカタナ  作者: キクメン


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第114話

 チビドラゴンのリュウトはこの世界に来てようやく初めて人間の手によって味が付けられた料理を食べた喜びで幸せ一杯といった様子で、私やそれ以外の皆に身体をすり寄せて感謝を現わしていた。


 皆そんなリュウトをとても気に入り、すぐに全員仲良しになった。


 その後リュウトはシルビアのフワフワな胴体の上に乗って心地よさそうに眠り、シルビアも煩わしさや息苦しさを感じることなく満足そうに眠った。シルビアはその姿からして寝返りをうつ事がないし、ほぼ微動だにしないで眠るのでリュウトにとっては実に快適なベッドになる事だろう。


 翌朝、燻製肉が最高の状態で完成したので、結構な距離を遠出する事が可能になり、まだ行った事がない未開の場所の探検に赴く事にしたが、北上すればリュウトがやってきた岩石地帯で、リュウトによると不毛な大地のようで美味しい食材も見込めないことから西に行くか東に行くかの二択になった。


 個人的には東の果てが気になるが、ニッキがハイラル家を出てから結構日が経っているので、そろそろ戻らないとイザベルが悲しがるので西を探検しながらハイラル家に戻ろうと提案すると、ニッキそんな私の配慮にとても喜んでくれた。


 ニッキはいざとなったら単独でハイラル家に戻ろうかと思っていたが、全員一緒だと安心出来るし寂しくないのでとても嬉しいとのことだった。


 私としても皆一緒の旅の方が良いし、ニッキ一人だけをハイラル家に行かせるのは嫌だし、東へ向かう旅は全く緊急性も必要性もないし、この先自分の人生がいつまで続くか分からないが後でいくらでも好きな時に行けるし、そもそも何も今急いで行かなくとも楽しみは後に取っておけば良いので、この選択で全く問題なかった。


 そうした事をちゃんと話したので、ニッキは自分のために私が本来行きたかった方角に行くのを我慢したのではないという事を理解してくれて、負い目に感じることはなかった。


「かなた兄ちゃんは優しいな、あと頭も良い、大人の判断だ!」


「そうですね、タナカさん・・・かなたさんは、最初から優しかったです」


 ニッキは苗字ではなく名前で呼んでくれるようになり少し嬉しかった。そしてこの後皆私の事を名前の方で呼んでくれることになり、より一層皆と親しくなった気がしてますます嬉しくなった。ともあれ私達は西へと出発した。


 今回はそのまま人里のいる場所に行く可能性もあるので一応荷車も持っていく事にした。


「あっ、お兄ちゃん達あの白いキノコ食べたことある?あのキノコはヤベーキノコなんだよ、オイラ一日中おかしくなって笑ってたんだ」


「全員食べたぞ、アタイとムルギンも大笑いしてどうやら死にかけたらしい、普通の人間が食べたら間違いなく死ぬだろう」


「わっ!そうなんだ!良かったぁシャル姉ちゃん達が生きててくれて」


「でもそのおかげで凄く五感が良くなったぞ!」


「オイラもそう!前よりも良く見えるし聞こえるし危険な物も分かるようになった!これは食べたら美味しいとか毒があるとかも分かるようになったよ!」


「アタイもだ!でもニッキとシルビアはすてーたすがめんでもっと詳しく分かるんだ!」


「凄い!ゲームみたいだね!オイラとかなた兄ちゃんは何で見れないんだろうね?」


「確かに何でだろう・・・記憶を失っている事と、いきなり言葉が分かったり話せたりするのと何か関係しているのかな?だとしてもやっぱり自分だけ人間の姿で、最初から武器を持っていたのが凄く気になる・・・」


「もしかしたらかなたには何か使命があるんじゃないか?人間のままの姿にして凄いカタナを持たせたのも神様がかなたに何かをして欲しかったからとかかも知れないぞ」


「うーん・・・そもそも神様は見たことないし、その声も聞いたことがないんだよね、それに何かをしなくちゃという使命みたいなものも全く思い浮かばないんだ、他の皆はどう?」


「かなた兄ちゃんと同じでオイラはまだ神様とか見たことがないし声も聞いたことがない、それに何かしなくちゃっていうのもない、あるとすれば美味しい物を食べたいってことぐらい!アハハハハハ!」


「私もないです、目が覚めたらこの姿でこの世界にいました」


「私もです、異世界ファンタジーものだと最初に神様が色々説明してくれる作品もありますが、そうしたものはありませんでした」


 前に倒した鬼怪人もそういう感じだった、彼も知らないことが多そうで、この世界に来た理由は彼自身が決めていたようだった。


 その後、小屋のある場所を出発して3時間程が経過したところで何かが微妙に気になり始めたが、誰も何も言わなかったので気のせいかと思っていたが、その微妙な何かの感じは少しずつ確実に大きくなってきた。


「むっ、どうしたかなた、何か気になるのか?」


「どうしたのかなたお兄ちゃん、お腹が痛いの?」


「そういえばそろそろトイレタイムかい?」


「穴を掘りましょうか?」


「えっと・・・皆、何か気にならない?違和感というか何というか・・・何か妙に気になってさっきから落ち着かない感じなんだけど・・・」


「分かったちょっと、集中してみる・・・」


「オイラも・・・」


「「私も」」


「「「・・・」」」


「う~ん、アタイは何も感じなかった」


「私もです」


「アタシも」


「私は・・・うーん・・・何かありそうな、なさそうな・・・」


「オイラは何か感じたかも知れないけど、良く分かんない」


「気になるのか?かなた」


「なんか気になるんだよね、まるで小さな魚の骨が喉の奥に引っかかってるような感じで、地味に気になって嫌なんだよ」


「やっ、それは確かに嫌だな」


「サソリやムカデの足が喉に引っかかった時は確かに凄く気になって嫌だった」


「ああ、分かる、あれはトロリ草をハチミツで薄めたドリンクを飲むと良くとれるんだ」


 リュウトはやむを得なかったからなので理解出来るが、ムルギンのは確実に興味本位なはずで、よくもまぁそんなものを口にしたもんだと、感心する以前に呆れてしまった。


「いや意外と焼いて食べると香ばしくてお酒に良く合うんだよ」


 と、私の顔を見て追加説明するムルギンだった。


 ともあれ、どうにも気になるので皆にお願いしていったん前進を止めて、私が違和感を感じる方角に進むことにした。


「こっちかな・・・いや、違う、じゃあこっちかな・・・こっちも違う・・・うーん、それなならこっちか?あっこっちだ、こっちで間違いない」


 ともかく自分の直感を頼りに少しでも何かを感じた方向に進んでいったのだが、まだとても微妙な感覚なので確実にこっちだという方向を定めるのに少々時間がかかった。


 我ながらまどろっこしいと思うのだが、そんな私に対して誰も文句も言わず黙って見守ってくれるのはとても有難かった。


 そんな風にゆっくりと五感のセンサーを働かせて少しずつ違和感を感じる方向に進んで行き、15分程進んだ辺りで方角に悩むことがなくなり、先程感じた微弱な違和感よりもかなりハッキリ方角が分かるようになってきた。


 そこからさらに10分程進んだところでシルビアとリュウトが違和感を感じると言い、さらに5分程進んだところで全員がハッキリと違和感を感じ始めた。


 そうしてさらに進むこと30分、私達の目の前には完全にこの世界では異質な人口建造物が出現した。

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