第112話
その後ニッキとシルビアも水浴びをしてサッパリして夜になったので眠る事にしたのだが、シャルとシルビアは大分眠り続けたので全然眠くないという事で今夜は私が小屋の中でベッドの上で寝て、ニッキは昨夜シャルが寝た場所で眠り、シルビアはそもそも布団など必要ないそうなのでそのまま床の上で手足をたたんで丸くなって寝た。
特にその後シャルとムルギンが何かをやらかすという事もなく、普通に朝になったので目を覚まして小屋の外に出てみたところ、目の前にはかなり仰天する光景が広がっていた。
軽く10メートルはありそうな大蛇の皮が地面に打ち込まれた沢山の杭によって吊るされて干されていて、同じく沢山の肉が大きな手作りの木製箱型容器によって燻製されており、燻り出している煙がモクモクと天に昇っていた。
「この大蛇前に見たことある!夜中に倒したの?」
「ウン、アタシがこの大蛇を見つけてシャルに無理言って倒してもらったんだ」
「ウム!ムルギンと一緒に森の中を探検してアタイが仕留めたぞ!」
「凄いな二人とも・・・」
「ムルギン、どこか捨てるところありますか?頭とか内臓とか骨は食べてもいいですか?」
「あっ、そう思ってちゃんととっておいたよ」
「わぁ有難うございます!早速いただきます!ゴキッ!ボキッ!ガキッ!ボリボリ・・・ゴクン!美味しいです!」
シルビアがいるとほぼ全く生ゴミが出ないので非常に大助かりだった。
「かなた、コレ食べて見ろ!軽く塩コショウで味付けして焼いてみたんだけど凄く美味しいぞ!」
「確かにヘビの肉とは思えない程美味しそうな匂いだし、見た目も全然悪くなくて美味しそうだね!それじゃいただきます・・・ハフハフ・・・モグモグ・・・ゴクン・・・うわ何コレ!美味しい!あの大蛇ってこんなに美味しいものだったんだ!」
「でしょ!だから沢山燻製にして保存食としても食べれるようにしているところなんだ!」
「いいね!実に良い!さすがムルギン!」
「うん、昨日食べた白キノコのおかげだよ!夜中でも大蛇がいるのが分かったし、直感でコレは凄く美味しいに違いないって分かったしさ!」
「ステータス画面は見えませんでしたか?目の前に文字が出てきてこれは食べられますよとか、毒がありますよとか教えてくれるんです」
「う~ん、そういうのは見えなかったなぁ・・・ただ直感でコレは間違いなく美味しいっていうのが分かるようになった。毒がある生き物とか植物とかはこれまでの経験で既にある程度は分かるけど、より一層確実に分かるって感じかな?」
「アタイもすてーたすがめんは見えない、でも夜中でもかなり良く見えるようになった、これは凄く便利で有難い」
「凄いな二人とも、もう完全に超人だね、多分僕よりも凄いと思う」
「それが、どうにもアタイはまだかなたには勝てないような気がする」
「えっ!?いやいやそんな事はないでしょう」
「いや、モルサール八式を極めた天才剣士のアタイが、さらに白キノコを食べて感覚が向上したアタイだから確実に分かる、カタナを持って本気を出したかなたには全くかなわないと」
「僕は全然そんな風には思えないけどなぁ・・・それにシャルに対して本気を出すなんて事は、それこそ確実に一生ないと思う」
「ウ、ウン・・・まぁそれはそうかも知れん」
シャルがかなわないというのは、恐らく私単体の能力じゃなくて、物凄く高性能な刀があっての事だろうと私は理解した。私自身もこの刀は本当に凄いと思うし、まだまだ秘めた力が発揮されていないんじゃないだろうかとも思っている。
そうして朝から大蛇の肉というなかなかにワイルドで滋養強壮タップリの朝食を食べたので、元気が有り余っていたので、皆で魔の森の探検に出かける事にした。
これまでは泉の下流に沿って移動したので、今回はまだ行ったことの無い逆方向に向けて行く事にしたが、燻製肉を美味しく完成させるためにじっくり丸一日燻す必要があるので、今日のところは日帰りを予定して無理せず、何か美味しそうな食材を探す程度の気軽さで進むことにした。
かつて凄腕の探検家達が命がけで挑んで生きて帰ってこなかったというのに、私達は気軽な気持ちで出発したのであった。
ピョン!ピョン!ピョン!ピョン!
今やムルギンまでもがまるで漫画がアニメに出てくるような超人忍者のように深い森を飛び跳ねて素早く移動していた。
この森は確かに普通の森よりも木々が多く茂っているが、ぬかるみやツタやトゲだらけの植物などが行く手を阻む南の大樹海の熱帯ジャングル程は酷くないので、その時に比べればかなりのスピードで移動する事が出来た。ただシルビアだけは例外で恐らく彼女はどんな場所でも断トツで速く移動出来そうだった。
ちなみに今回は荷車なしで移動しているので、全員が超人となった今では殊更身軽になって速く進むことが出来た。
「やっ!見たことない何かの実を発見!多分食べれる気がする!すてーたすがめんで確認してくれ!」
「あっ!アレですね!ってわっ!凄い形してます!まるでドーナツみたいな形です!」
「どーなつって何だ?」
「小麦粉と卵を練って油で揚げて作る甘いお菓子です、あの実と同じ丸いリングの形をしているんですよ、でもこんなに大きくなくて本物のドーナツはこれくらいの小ささです」
「どーなつ食べてみたい!」
「今度作ってみますね!」
「やった!頼む!」
「えーと・・・毒はないですね、食べれるみたいですが・・・あっ!食べると毒に強くなって病気になりにくくなるみたいです!」
「何だって!それは凄い!もう毒研究で苦しむ事がなくなるのか!やった!」
凄い勢いで食いついてきたムルギン。毒名人とはいえやはりこれまで苦しんできたのだろう・・・
「ムルギン、今食べるとまた気絶しちゃうかも知れませんから、帰ってからにしましょうね」
「えぇー、今食べたかったなぁ~」
「まぁまぁ我慢ですよ、夕方には戻りますから」
その後も探検は続き、ひょうたんのような面白い形の実やパイナップルのように全身トゲだらけの実やかなり分厚い食べられる何かの葉っぱなどを採取していった。
「そろそろお昼になるけど全然お腹が空かないな、皆はどう?」
「ウム、アタイもお腹は全然空いてない」
「アタシも」
「私もです」
「私は沢山食べたので長ければ一週間は平気です」
「えっ!?そんなに燃費が良いのシルビアは」
「はい!日本の自動車みたいですよ!」
「ねんぴってなんだ?」
「じどうしゃって何?」
「え、えーと・・・」
こうしてとても多くの人の命を奪った魔の森の中での行動とは思えない程、まるでハイキングにでも出かけているかのような感覚で実にお気楽な探検は続き、夕方までに小屋まで到着するにはそろそろ引き返す必要があるという所に達した。
「タナカさん、夕方までには小屋に戻るので良いんですよね?」
「うん、そろそろ引き返す頃合いだけど、皆それで良いかい?」
「いいぞ!」
「いいよ~」
「了解です~」
「オーケー!」
「えっ!?オーケー?って今言ったの誰?」
「おーけーって何だ?アタイじゃないぞ」
「うん、アタシでもない」
「私でもないですゥ~」
「これって英語なんですかね?」
「ウン!オイラが言ったんだよ!」
「わっ!かなた!背中のリュックに大きなトカゲがへばりついてるぞ!」
「えっ!えっ?えぇーーーっ!?」
パタパタパタ・・・
「ごめんお兄ちゃん、驚かせちゃった?」
私のリュックにへばりついていたトカゲは羽をパタパタさせて私の顔の前に姿を現した。
「なっ!なんですとォーーーッ!?」




