第111話
しばらくの間スヤスヤ気持ちよさそうに眠るシャルとムルギンを見守り、その後私は何もすることがなくて退屈だったので、まずは自分の顔を洗顔してからタオルを軽く洗って、シャルとムルギンの顔を優しく丁寧に拭いてあげた。
さらに誰もいない事を確認して泉から少し離れて裸になって水路の中に横になって身体を洗い、新しい下着を着てから今まで着ていた下着を洗濯した。
その後森の近くで適当な大きさの石を探して持ってきて円を描くように配置して焚火かまどを作り、刀で木を斬って薪を作ったりかまどの上に骨組みを作ったりした。
高性能過ぎる刀と超人的な体力のおかげで、知識も経験も乏しい私ではあったがサバイバル能力はなかなかに高かった。
途中お腹が空いたのでまだ沢山余っていた黒紫キュウリをひとかじりしたところ、小さな動物が戻って来て私の肩の上に飛び乗ったので一緒に黒紫キュウリをかじって食べた。
ニッキとシルビアは昼を過ぎても戻らなかったので、段々不安になってきて心配し始めたところ、丁度タイミング良く二人の声が聞こえて来た。
「遅くなってすいません」
「ごめんなさい、心配しましたか?」
「うん、ちょうど心配し始めたところだった、でも二人とも元気に戻って来て良かった、何か珍しいものでも発見したの?」
「はい!美味しそうな野菜や果物を沢山採って来ました!」
「大きくて美味しそうなナマズやカニやエビを捕まえてきました!」
「本当!?やった!って待てよ・・・その食材って食べても大丈夫?」
「はい大丈夫です!ちゃんとステータス画面で確認しています!」
「栄養満点で疲れを癒して免疫を向上させる効果があるみたいですけど、キノコとか黒紫キュウリとかみたいに体力パラメータを向上させるような効果はないみたいです」
「良かった、それなら普通の人間が食べても大丈夫だね」
「はい、普通にとっても美味しくて栄養タップリの食材だと思います!」
「ところでタナカさん、コレはかまどですか?」
「うん、ヒマだったんで作ってみたんだ」
「わぁ!それなら早速料理しましょう!」
「ムルギンのリュックにお鍋とか入っているので取ってきます!」
「僕もリュックに色々調味料が入ってるから取ってこよう!」
そうして各自食材を加工して調理し始めたが、一番手際が良いのがニッキで、私はあまり上手ではないが下味をつけるのを手伝い、シルビアはナマズの解体をしながら頭や内臓や骨やヒレなど捨てるところを美味しそうに食べていた。
木こり達から火打石と専用の棒をもらっているので私が火をおこして、木で作った骨組みの上から鍋を吊るして加熱した。
また、ある程度鍋が煮立ってきたところで、ムルギンが作り置きしていたイモモチを取り出して焚火の側に置いて直火で温めた。
調理開始から30分程経過したところで、辺りはとても良い香りに包まれ、ニッキとシルビアのお腹は可愛くクウとなった。私の方は午前中に黒紫キュウリを食べたので空腹感はなかったが、それでも鍋の香りで食欲は大いにあった。
ニッキは丁寧に何度もアク取りをして、そろそろ良い頃合いになってきたところで、焚火から鍋を離して余熱で仕上げに入った。
シャルとムルギンの近くに鍋を置くと、二人のお腹もグウグウ鳴り始めたので、私とニッキとシルビアはクスクス笑いあった。
「ウーン・・・ムニャムニャ・・・良い匂いがする・・・」
「クンクン・・・ムニャムニャ・・・お腹空いた」
シャルもムルギンも美味しそうな匂いにつられて目を覚ました。
「ウゥ~~~ン!あー良く寝た!凄くスッキリした気分だ!グゥ~~~ッ!そしてお腹が空いた!アハハハハハ!」
「ハワァ~・・・アタシはまだ少しフワフワした感じだ、夢の中でずっと空を飛んでいたんだよ、って何だか凄く美味しそうな匂いがするね!」
「ちゃんと普通の人が食べても大丈夫な美味しい食材で煮込んだお鍋ですよ!」
「凄く美味しそうなナマズも沢山入ってるよ!ムルギン!」
「本当!?やった!ナマズの鍋凄く楽しみ!」
早速鍋をお椀に分けて焼きイモモチと一緒に食べたところ、塩とコショウのみのシンプルな味付けにも関わらず、各種食材から滲み出た抜群の旨味によるダシによって濃厚なコクの味わいとなり、むしろこのシンプルな味付けにして正解だったという美味しさだった。
「何コレ!?凄く美味しいんだけど!!」
「ホントだ!かなたおかわりくれ!」
「そりゃ良かった!・・・はい、どうぞ!」
「ありがと!これはウマウマだぞ!イモモチにも良く会う!」
「そう!そうなんだよ!これイモモチと一緒に食べると抜群に美味しいね!」
「ウマウマですゥ~!」
「ウマウマァ~!」
そうしてあっという間にきれいさっぱり食べ尽してしまったが、その前に魔の森の食べ物を食べていたおかげで物足りないという事もなく、全員しっかり腹を満たして満足した。
「ところでどう?二人とも何か身体に変わった事とかない?」
「ウーム・・・言われてみれば前よりも結構目も耳も鼻も良くなったような気がする・・・」
「そうだね、何か以前よりも感覚が鋭くなったような気がするかな」
「変な気分がするとかはない?」
「ない!大丈夫だ!」
「アタシもない、むしろ前より気分が良い感じがする!」
「それは良かった!」
「良かったです!」
「安心しました!」
「いや~それにしても白いキノコには参ったね!手にした瞬間にこれは危険だって分かったのに全く抗えなかった」
「アタイも香りを嗅いだ瞬間にダメだと分かっていたのに抗うことが出来なかった、アタイは結構我慢強い方だと思っていたのに簡単に打ち砕かれた、やはり魔の森の食べ物は危険だ」
「ホント、二人ともハイになって全部食べた時は焦ったよ、白目をむいて呼吸も心臓も止まった時はこっちまで心臓が止まるかと思ったよ」
「スマン、心配かけた」
「心配かけてごめんね」
「うん、でも良かったよ、こうして二人とも無事だし、それに恐らく二人とも・・・そうだ、ちょっと二人ともジャンプしてみてよ」
「うん?ジャンプ?食べたばかりだからあまり飛べないと思うが・・・せぇの・・・やっ!」
ビュンッ!
「うわっ!凄い!凄い勢いでシャルは飛んだよ!どうなってんの!?」
「ムルギンも飛んでごらん、ビックリするよ」
「えっ!?アタシも?・・・分かった、やってみる・・・エイッ!」
ビュンッ!
「わぁーっ!凄い!どうなってるのコレ!?」
スタッ!
ドスンッ!
シャルは瞬時に下半身を柔軟にして静かに着地したが、ムルギンはシャルよりも大きな音を出して着地した。また、跳躍力もシャルの方が上のようだった。
「二人とも僕と同じで黒紫キュウリと白キノコを食べて超人になったんだよ」
「そうなの!?」
「かなたと一緒になったのか!やった!」
その後、物干し竿に私の下着を干しているのを見て、シャルとムルギンも水浴びして下着を洗うとのことで私は小屋の中に入って待機したが、小屋の外で結構騒いでいる声が聞こえ、水浴びを終えた二人にどうしたのか尋ねたところ、ムルギンの皮膚が綺麗になったので驚いたとの事だった。
ムルギンはスナギンと同じく、長年に渡って様々な毒の研究をしていたので、腕や足などあちこちが変色していたり肌も荒れていたそうなのだが、それらが綺麗さっぱりなくなってスベスベの肌に戻ったので大いに喜んだそうだ。




