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タナカカナタのカタナ  作者: キクメン


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第108話

 ニッキとシルビアを見て最初は飛び上る程怖がっていた木こり達だったが、二人とも人間の言葉を話したので木こり達は二人を神の使いだと信じ込み、怖がる代りに今度は崇めたて始めた。


 生まれ変わる前は普通の人間だったので、そこまで崇めなくても良いですよ、と言ったのだがなかなか理解してもらえず皆ニッキとシルビアに対してとても平身低頭で丁寧に接した。


 ともあれキリの良いところまで仕事を終わらせたのでひと段落ついたという事で、皆手を休めて簡易宿泊所の方へと移動した。別行動をとっていたムルギンもとても美味しそうなキノコや山菜がタップリ取れたといってホクホク顔で戻って来た。


 そこで私は以前グマンの王に食べられてしまった大きな魚の事を思い出し、シルビアにお願いして近くを流れる川に行き、水深が深くて大きな岩がある場所に大物がいることを伝えるとシルビアはクモの糸を使って投網を作って投擲してくれて、引っ張り上げてみたところ1メートル級のマスに似た魚が数匹獲れて二人で大喜びした。


 木こり達は早速かなり大きな寸胴鍋でキノコや山菜と一緒に獲れたての魚を入れて煮込み、さらに木こり達のとっておきのチーズなども入れ始めた。


 ちなみに木こり達は牛も連れて来ていて、運搬作業だけじゃなく牛乳を得るためにも役立っており、さらに雑草も沢山食べてくれるのでかなり重宝しているようで、その牛から搾ったばかりのミルクも入れてクリームシチュー味の鍋にするようだった。


 私としては味噌味や醤油味の鍋が恋しいところだが、このクリームシチュー味の鍋もそれはもうたまらなく食欲をそそる香りがしていた。


「コレ絶対美味いヤツだぞ!」(シャル)


「そうですね!凄く楽しみです!」(ニッキ)


「こっちのお魚さんも凄く美味しそうです!」(シルビア)


 南のエリアの魚ではナマズに似た魚がとても美味しかったが、この辺りにいるマスに似た魚も実に美味しく、前回は焼き魚で食べたので、今回のクリームシチュー味の鍋料理もとても楽しみだった。


 さらにお弁当として沢山もらってきた握りっこを木こり達に渡すと、外の焚火かまどで焼きおにぎりを作り始めて、すこしだけおこげがついた香りがこれまた実にたまらなく美味しそうだった。


 こんな山の中で日頃肉体労働に精を出している彼等にとっては、唯一の楽しみと言えば食しかないといっても過言ではなく、それだけに山の男達は山の料理に精通しており、彼等がてきぱきと手際よく作っていく料理はどれも胃袋を直撃する程の破壊力に満ちた美味しい料理だった。


 そうして野外の大きなテーブルに集まって、昼間から宴が始まった。


 まず最初にニッキとシルビアの前には獲れたての魚をマツタケに似たとても香りの良いキノコや山菜と一緒に焼いたソテーと、とっておきのお酒が備えられ、神様どうぞお召し上がりくださいと丁重におもてなしされた。


「わぁ!コレとても美味しいです!」


「キノコと一緒に魚を食べると最高です!」


 ニッキとシルビアはとても満足したので木こりの男達も皆とても喜び、私達も食事を開始した。


「クリームシチューだからパンの方が合うかと思ったけど、この焼いた握りっこも良く合うな!凄く美味いぞ!」


「ホント!少しおこげがついた握りっこを頬張りながらこのアツアツの濃厚なクリームシチューを一緒に食べるとたまらないね!」


 木こり達の男飯は豪快なところはあるが味は抜群で、さすが長い間受け継がれてきただけの事はあるなと全員大いに感心した。


 その後自分達の本当の正体を話したのだが、やはり違う世界からやってきたという事が良く分からないらしく、どうにも神様の世界からやってきた神の使いという認識になってしまうのだった。


 しかも私も地球から来たのだと説明した時に「なぜ神様はタナカをグマンの姿にしなかったのだ?」と不思議に思われてしまう程だった。


 しかし考えてみれば彼等の言う事も確かに一理あって、何故今のところ私だけが人間のままの姿で、さらに加えて実に不思議な力を持つ刀まで一緒にあったのだろうかと考え込んでしまった。


 ともあれ、とても美味しい昼食をタップリ食べて木こり達にこれまでの事を話したので、食後私達は魔の森へと向かう事にした。今のメンバーで行けば余裕で夕方までに最初の小屋にたどり着ける目算だった。


 木こり達に盛大に見送られながらシルビアを先頭にして荷車の両サイドの車輪を私とニッキが持ち上げて最初から爆走した。シャルも体力維持のため荷車から降りて走ったので荷車はさらに軽くなり、相当な速度で川べりの岩場を激走した。


「凄いな!もう最初の分岐点に辿り着くとかビックリだよ!」


 2時間かからず魔の森との境目にやってきたので、改めてこのメンバーの驚異的な身体能力に驚かされた。といってもそのメンバーには自分も入っているのだが・・・


「この先から魔の森なのか!?」


「そう、この凄く細い水路のような小川の上流を辿って行けば僕が最初に目覚めた小屋があるんだ」


「なんか・・・これまでずっと大樹海で過ごしてきたから分かるんだけど、この先の森は結構ヤバイ感じがするね、肌感覚だけどさ・・・」


「そうですね私の4っつめの目で見た映像が危険を表しています」


「私も目には見えない圧というか膜のようなものを感じます!」


「凄いな皆!アタイには良く分からないぞ!かなたは分かるのか?」


「うーん・・・確かに最初はこの森は危険だぞって肌感覚で感じたんだけど、今は全然そんな風には感じないなぁ・・・正直に言うとむしろ僕は安心感を感じている程なんだよね・・・」


「自分のホームに戻って来たっていう安心感なんじゃない?」


「そうかも知れないね」


「ともかく行ってみよう!」


 そうして魔の森に入り進んで行ったが、私もニッキもシルビアも全く何の変化もなく、シャルもムルギンも特に何ともないとのことなので、比較的まともな足場の水路の近くを駆け上がり、さらに2時間程進み続けた。


「あっ!黒紫キュウリだ!アレ凄く甘くて美味しいよ!」


「わぁ本当にとても甘い匂いがします!」


「バニラアイスみたいです!アイスクリーム食べたいですね!」


「ハァ・・・ハァ・・・」


「あっと!ごめんシャル、ペースが早かったね」


「ハァ・・・ハァ・・・ウム、さすがにずっと走りっぱなしだから少し疲れた、荷車に乗せてもらう」


「うん、ゆっくり休んでね」


「ハァ、ハァ・・・ウン?ムルギン大丈夫か?」


「フゥ・・・フゥ・・・うん、大丈夫、でもなんだか体が重たい感じがする」


「えっ!?それは大変だ!」


「やっぱり魔の森の影響でしょうか?」


「ど、どうしましょう!私達は全然平気なのに!」


「・・・あともう少しで小屋のある場所に着くけどそれまで我慢出来そう?」


「大丈夫、今はまだ体が少し重くてダルイだけだから問題ないと思うよ」


「シャルは?」


「ムルギンと同じだ、いつもより多く練習した後という感じだから問題ない」


「分かった、今から引き返すよりも小屋に向かった方が早く着くから我慢してね」


 シルビアは手早く黒紫キュウリを10本程収穫し、私とシルビアとニッキはさらに速度を速めて飛び跳ねるように小屋へ向けて水路の脇を疾走し、30分程で小屋があった穏やかな芝生が見えてきた。

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