第107話
外から買ってきた料理も美味しいが、何か自分達で手作りした料理も食べたいという事で、ムルギンとスナギンが幾つか炒め物料理を作り始め、その間ロレオンにニッキやシルビアの紹介も兼ねて自分達の説明を行った。
「いやはやまだまだこの世の中には知らない事が沢山あるものなんじゃのう・・・」
「他にもちきゅうからやって来た人はあちこちにいるんじゃないか?」
「そうだね、多分他にもいると思う」
「もしかしたらかなたよりも強いヤツがおるかもしれないぞ、良いヤツならいいが・・・」
「うーん・・・鬼怪人みたいに強さに溺れる人だと嫌だなぁ・・・」
「おにかいじんって何だ?」
「あっと・・・そうか、ドグリアスの穴近くの森にいた大男の事なんだけど、オニというのは僕の故郷に古くから伝わる昔話に出てくる乱暴な大男の事なんだ」
「オニ知ってます!格好良いです!」
「私も知ってる!オニの武者は格好良い!」
「いや、それは別の二次元作品で、昔話に出てくる鬼とはちょっと違うんだけど・・・まぁ、でも格好良いよね」
「恰好良いのか?アレが!?」
「いや、えーと・・・」
話が妙な方向に逸れかけて、その後の軌道修正が結構大変だった。
「アタイはニッキやシルビアみたいに可愛くて良い奴の方が良い!」
「わっ?何の話し?アタシも可愛い方がいいな、大きなゾルゾルとかだったら可愛いかも」
ムルギンがナッツと野菜と肉の炒め物を持ってやってきた。
「ソルゾルって何ですか?」(ニッキ)
「ムカデに似た大きな虫の事だよ」
「きゃあーっ!ムカデは嫌ですー!」
「私もですー!」(シルビア)
「えぇー、見慣れれば可愛いよ、足がいっぱいあるところとか」
「そんなのムルギンだけだって」
と、スナギンが焼きそばを持ってやって来た。
その後美味しそうな食べ物を買ってきたギャラガ達が戻って来て、昼からお酒も入った宴会となり、昨夜に続いて色々な話しで盛り上がった。
夕方になってロレオンの道場から迎えが来たが、ロレオンは上機嫌ですっかり熟睡していたので、明日また迎えに来ると言って戻っていった。
そうして翌朝になり、私達は皆からの見送りを受けながら木こり村へと出発した。マチャントからは保冷剤を用意しておくので是非魔の森の果物を持って来てくれと言われた。
木こり村から町まで初めて来た時は馬車で3日かけて来たが、今回はたった1日、それも夕方前には到着するという早さで到着した。
今回私は帽子を被らず素性を明らかにした状態で荷車を引き、交代もしないで走り続けたので、グマンの爪が取り仕切るこの一帯で盗賊に足止めされる事はなかった。途中数回視線を感じたが、恐らく私を認識して出てこなかったのかもしれない。
また、木こり村に到着した際も私を覚えている村人達が何人かいたので、警戒されることなくすんなりと村役場兼村長ガリクソンの家まで向かうことが出来た。
「おう!タナカよ!良く来た!!」
「たなか!よくきた!」
「タナカさんお久しぶりです!」
「また会えて嬉しいわタナカさん!」
ガリクソン一家は総出でお出迎えしてくれて、その中には息子のドリクソンもいた。恐らく一時的に帰郷していたのだろう。
すぐに客間に案内されて、誰もいないことを確認してからニッキとシルビアがその姿を披露すると、末娘のアーリヤはすぐにニッキとシルビアに抱き着いてきてとても喜んだ。
「にっきだいすき!しるびゃーもだいすき!」
「わぁ!アーリヤちゃん可愛いです!」
「私もアーリヤ大好き!」
「凄い!本当に神様の使いのようですね!」
「お、おう、こりゃ凄い・・・まるで大昔の神様のお話しのようだ・・・ってことはグマンの姿をしたちきゅうじんとやらもいるのだろうか?」
「まだ会ってないですが、この後魔の森の奥に行けばいるかも知れませんね」
「その時は是非連れて来てくれ、村を上げて大事に丁重におもてなしさせていただく」
「分かりました」
その後またしてもいつも通り割と夜遅くまで様々な話しで盛り上がったのだが、さすがにこちらも説明慣れしてきたのと、今回は早めに到着して夕食の開始時間も早かったので、深夜までかかることなく楽しい宴は終了した。
そして翌日、大量の握りっこをお弁当にもらい、さらに魔の森探検で食べる分のお米と岩塩やスパイスをもらって木こり達のいる伐採所に向かったが、最初に来たときは大きなそりに大きなグマンを乗せて引っ張ってきたので3時間かかったが、今回は15分もかからず木こり達のいる伐採所に到着した。
その理由は、今回最初からニッキもシルビアもそのままの姿で移動したのだが、その際シルビアがこれまでずっと荷車に乗せてもらっていたので荷車を引いてみたいと言ってシルビアが引っ張って移動したところ、これがまたダントツに速くて全員しっかり荷車に捕まる必要があり、山道なので結構大きく激しく揺れるので、しまいには私とニッキが外に出て荷車の車輪を持ち上げて移動した。するとまったく荷車は揺れることなく非常に快適になったシャルとムルギンは喜んでいた。
伐採所の簡易宿泊所周辺には木こり達の姿はなかったが、林の奥の方からはコーン!コーン!という斧で木を切っている音がしていたので、まずは彼等を驚かせないように私だけがそちらの方に行った。
「おぉーい!みなさぁーん!タナカですぅー!」
「たぁーおれぇーるぞぉー!!」
「えっ!?・・・ってうわわっ!!」
スパスパスパァッ!!
いきなり目の前に巨木が倒れてきたので私は完全無意識の脊髄反射のように刀で巨木を切り刻んだ。
「ヒャァーーーッ!!」
「なっ!何が起きた!?」
「・・・ってウン?おぉー!オヌシはタナカではないか!」
「ホントだ!タナカだ!タナカがいるぞ!」
相変らず全員190センチ以上はある屈強で髭もじゃの男達が私の周りに集まってきたが、今ではなんだかホッとする素朴な温かみを感じていた。
とりあえず簡単に皆に説明すると、いったんキリの良いところまで待ってくれと言われたので、私も仕事を手伝うと言うと皆喜び、私が刀で巨木を斬っていると、他のメンバーもこちらにやってきて、ムルギンは近くを散策してキノコ狩りをし、シャルも伐採された木の枝をスパスパ切断し、さらに極めつけとしてニッキとシルビアがそのままの姿で大きな木を運搬し始めた。
最初木こり達はシルビアやニッキの姿をほとんど見ることなく自分達の仕事に集中していたが、伐採した木がどんどん運ばれていくので、不思議に思って振り返って見たところ・・・
「ギャアーーーッ!!」
「ウワァーーーッ!!」
大きな斧を放り投げて逃げ惑い始めてしまった。
190センチを超える巨漢で屈強な髭もじゃの男達が互いに抱き合って震えあがっている様子はなかなかに滑稽だったが、そのままにしておくわけにもいかないので私は急いで皆に落ち着くように言った。
恐怖に震える男達をなだめるのにはそれほど時間はかからず、シャルがシルビアの上に乗って手を振り私がニッキを抱いて手を振ると、男達はひとまず安堵して近づいてきた。
「アハハハハハ!オヌシら体はデカイのに心は弱いのう!」
「皆さん驚かせてしまってごめんなさい!」
「ごめんなさい!」
「うわっ!言葉をしゃべった!」
「分かった!こりゃ神の使いだ!」
「そうだ!神の使いに違いない!」
「「「ハハァーーーッ!!」」」
先ほどまで逃げ回っていた男達は、今度は一斉に跪いてニッキとシルビアにひれ伏したのだった。




